なぜ、寝不足は太る?「原因」と「理想の睡眠時間」など
寝不足が続くと、いつも眠い…だけでなく食欲が増して太りやすい体質になることをご存じですか?なぜ寝不足だと太るのか、その原因を専門家に訊きました。しっかり眠る習慣が身につけば、食欲の中枢が整って、健康的で太りにくい体に!睡眠不足の解消方法と睡眠の質を高める方法をご紹介します。寝不足を解消してやせ体質を手に入れよう!
なぜ、寝不足は太るのか?
眠らないと食欲が増してしまうから
眠らないと糖の代謝が低下して血糖値が上昇。食欲抑制ホルモン「レプチン」が減る一方で、食欲増進の「グレリン」が増える傾向に。
2002年、米サンディエゴ大学の研究チームが女性63万6,095人を対象に調査した所、「短時間睡眠の女性はBMI値(体格指数〈体重÷〔身長×身長〕〉)が高い」という結果が出た。
食欲が「25%増」という研究結果も
食欲が25%増す(1日350~500kcalを余分に摂取)という研究結果もあり、寝不足はドカ食いに直結。
さらに、糖質や脂質など、必要以上にとると太りやすい物を欲する傾向に。
睡眠が十分だと「食欲」の中枢が整う
「『睡眠が不足していると太りやすい』という説は、実際、米コロンビア大学やスタンフォード大学など、多くの研究グループの調査で立証されてきました。その理由のひとつとして、睡眠不足は血中グレリン(食欲増進ホルモン)を増やし、血中レプチン(食欲抑制ホルモン)を減らすことが指摘されています。
反対に、しっかり眠る習慣が身につけば、食欲の中枢が整って正しい食生活へ。引いては健康的で太りにくい体になれるわけです」(友野さん)
「睡眠の質」が低下する=寝不足
睡眠の質が低下しても寝不足になる
快眠セラピスト
睡眠環境プランナー
三橋 美穂
寝具メーカーの研究開発部長を経て、2003年に独立。これまでの20年間に、1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、特に枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うか分かるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディ―ネートなども手がける。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる睡眠メソッド100』(かんき出版)ほか、日本語版を監修した『おやすみ、ロジャー魔法のぐっすり絵本』(飛鳥新社)はシリーズ累計100万部を突破した。
睡眠が浅いダラダラ寝が睡眠の質を低下させる
「長時間の睡眠を必要とするロングスリーパーの人もいます。
しかし、2度寝、3度寝となりながら10時間以上寝るというのは、睡眠が浅いダラダラ寝の可能性が高いですね。
ダラダラ寝は、睡眠の質を低下させ、結果、睡眠不足を引き起こす原因に。睡眠不足になると、食欲を増進させる成分・グレリンの分泌が増加する一方で食欲を抑制するレプチンが減ります。そのため、太りやすくなってしまうのです」(三橋さん)
常夜灯が目に当たっていると睡眠の質が低下する
「眠るとき寝室の照明は真っ暗?それとも、常夜灯を付けていらっしゃいますか?
常夜灯に豆電球が使われている場合、ちょっと心配です。豆電球の光は思っている以上に強く、あお向けで眠っていると、光源が目にダイレクトに当たります。刺激が強いため、たとえまぶたを閉じていても脳に届き、睡眠の質を高めるメラトニンの分泌が減少してしまうのです。その結果、食欲を増進させるグレリンが増えて、太りやすくなってしまいます。
どうしても真っ暗だと不安で寝付けないという方は、フットライトを取り入れるなどして、目に直接光が当たらないように注意してみてください」」(三橋さん)
「睡眠の質をあげる」8つの方法
理想の睡眠時間は「7~9時間」
\『美的』読者191人に聞きました!/
Q.平均睡眠時間はどのくらいですか?
美的読者の平日の平均睡眠時間は5~6時間と、理想とされる7~9時間には及ばない結果に。
それを含めると、読者の約8割が慢性的な寝不足といえそう!
1日7時間ぐっすり眠ってやせ体質に
ボディメイカー
JUNさん
「3Days糖質オフダイエット」を考案。3か月で体重?17kg、体脂肪?16%を達成し、ベストボディジャパン横浜大会及びUSA大会でグランプリに輝く。現在は自身のボディメイク経験を生かし、トレーナーとしてダイエットに悩む多くの人を指導。著書『ダイエットに失敗してきた私がやせた3Days糖質オフダイエット』(学研プラス)も好評。
「1日に最低でも7時間は睡眠時間を確保するようにしましょう」(JUNさん)
【1】就寝1時間前から眠れる空間作りを
「就寝1時間前には、部屋の照明を夕食時の半分程度に落としましょう。150ルクス程度の暗さがおすすめ。目から入る光の量が少ないほど、眠りのもとである“メラトニン”の分泌量が増えていきますよ」(三橋さん)
【2】湯船につかって睡眠の質を高める
体が芯から温まると、睡眠の質もアップ
「シャワーだけで済まさず、しっかり湯船につかって深部体温を高めることで代謝がアップ。じんわり汗をかく温度の40~42℃に20分程度入るのが理想です。体が温まることで睡眠の質が高まり、よりやせやすい状態に。入浴後は股関節周りなど、ストレッチやマッサージを取り入れると、より効果的です!」(JUNさん)
【3】就寝1時間前に入浴を済ませる
アヴェニューウィメンズクリニック 院長
福山千代子先生
金沢医科大学卒。日本産科婦人科学会専門医。東京大学医学部附属病院勤務などを経て、’09年から現職。女性ホルモンの影響を受けて、さまざまな悩みを抱える女性たちに親身に寄り添う診療が評判。
「良質な睡眠をとるためには、就寝1時間前の入浴がおすすめです。湯船 にしっかりつかることで上がった深部体温が、ちょうどベッドに入る頃に 下がって、入眠しやすくなります。また、湯船にお気に入りの入浴剤を入れれば、リラックス効果が高まって、より快適な眠りにつながります」(福山先生)
【4】運動タイムは19時がベスト。21時以降はNG!
「運動は快眠を促しやすいということは明らかですが、時間帯によっては妨げにもなります。それが21時以降。体が休息モードに切り替わり始めている時間帯なので、そこで運動をしてしまうと交感神経が優位になって、眠気が遠のいてしまいます。
反対に、運動のゴールデンタイムは、1日のうちで体温が最も高くなる19時前後。緩やかな内容で20~30分を目安に、習慣化することが大切です」(友野さん・以下「」内同)
【5】睡眠の質を高めるためには食事も重要視
質の高い睡眠は朝食からはじまる
「眠るのは夜のことですが、質の高い睡眠への準備は朝食から始まっています。体内時計をリセットする役割の朝食は、毎日定時にとるのが◎。しかも、昼間の元気と夜の快眠源となるたんぱく質をしっかりとりましょう。
たんぱく質に含まれるトリプトファンという物質は、日中の活動をサポートする神経伝達物質セロトニンの原料となるもの。そのセロトニンは、夜になると睡眠ホルモンのメラトニンに変換されます。トリプトファンを含むたんぱく質が豊富なのは、乳製品、卵、大豆製品、赤身魚などの魚介類、肉類、アボカド、バナナ、ナッツ類などです。さらに、セロトニン生成に必須の栄養素であるビタミンB6、炭水化物も欠かせません。
朝は忙しくて、朝食に時間をかけられないという人は、これら3種類の成分をバランスよく含むバナナをとるだけでも違います」
「睡眠の質を高めるための昼食や夕食は、内容以前にとる時間帯が大事。
昼食はなるべく13時まで、夕食は就寝時刻の3~4時間前までに食べ終えるようにしましょう。
というのも、睡眠中に胃など、本来はお休みモードの消化器官が活発に動いていると、スムーズな入眠を妨げてしまうからです」
【6】「ブルーライト」の刺激を避ける
寝る前のスマホチェックが眠りを浅くする
スマホやPCが発するブルーライトの刺激は、脳を覚醒させて、交感神経が優位な状態を長引かせます。ホルモンバランスを乱す要因にも。スマホのスイッチは就寝30分前までにオフして、ベッドにもち込まないように!
【7】就寝前は「カフェイン」を避ける
カフェインは血圧上昇、アドレナリン分泌など、交感神経を優位にして脳を覚醒させる働きが。
質のいい睡眠には心身を落ち着かせることが大切なので、就寝前はカフェインレスの飲み物をチョイスして。
【8】「アルコール」を避ける
「実は、日本人女性の約18%に寝酒の習慣があるという報告もあります。
寝る前に飲酒すると確かに最初の寝つきはよくなりますが、アルコールが分解され始める後半には、交感神経の動きが活発化され、かえって睡眠が浅くなってしまうのです。これが習慣化されると耐性ができてしまうので、飲酒しないと眠れない、飲んでしまうと眠りが浅くなる、お酒の量が徐々に増えていく……といった悪循環を招いてしまうのです。寝酒は避けて、夕食時に軽く楽しむ程度がベストですよ」(三橋さん)
「理想の睡眠時間をキープする」ための5つのお片づけ
【1】人間関係のお片づけ
「行きたくない女子会、無駄な交流会、発展性のないSNSでのやりとりなどに時間を費やして、その分、睡眠時間が減ってしまうなんて、もったいないと思いませんか?
今の自分にとって本当に必要な人とのお付き合いのみに絞る勇気を出してみてください」(友野さん・以下「」内同)
【2】情報のお片づけ
「いまや、世の中は情報過多の時代。手当たり次第にチェックしていると時間がいくらあっても足りません。あふれんばかりの情報の中から、質の高いもの、自分にプラスになるものだけを見極める選定眼をもちましょう」
【3】心のお片づけ
「精神的なストレスを抱えていると、ベッドに入ってもなかなか寝つけなかったり、眠りが浅かったり…。
ストレスやマイナスな思考は、紙に書きだして整理整頓することをおすすめします。そうすると、それまでとらわれていたことが案外大したことではないと気づいて、心の重荷を捨て去ることができるかもしれません。ストレスがなくなると、ぐっすり眠れるようになりますよ」
【4】空間のお片づけ
「空間(部屋)に、モノがごちゃごちゃとあふれていると、探し物に時間がかかったり、精神的にもイライラしたり。反対に、空間をキレイにすると、気分がスッキリする、時間の使い方もうまくなる…といった好循環が生まれます」
【5】時間のお片づけ
「1日24時間のうち7時間は睡眠に充てたいとなると、時間にもいわゆる〝断捨離〟が必要です。そこで、『To do List』ならぬ、『Not to do list』が役立ちます。テレビ、ゲーム、SNSなど、ついダラダラと時間を使ってしまっていることは結構あるもの。
それらをやらないと決めると、自分にとってもっと大切なことに使える時間が多くなります」
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
医師、医学博士。「スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)」所長。著書『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)が話題に。