ボディケア
2022.12.26

医師に訊く「骨盤辺りの痛み」はどんな病気の可能性が?症状を知りすぐに受診を

骨盤辺りの痛みはどんな病気のサイン?女性にしかない臓器「子宮」がこの辺りにはあるため、骨盤周辺に痛みを感じると、もしかして...!と不安になることも多いかと思います。今回は、お医者様に骨盤の辺りに痛みを感じるときに考えられる病状やどの診療科に行けばいいかのを教えて頂きました。

骨盤辺りの痛みはこんな病気の「サイン」かも

【1】卵巣腫瘍

産婦人科専門医

吉形玲美先生

卵巣とは、子宮の両側にひとつずつある親指ほどの大きさの臓器。卵子の生成、成熟、排卵を行うほか、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を分泌する役割をもっています。

卵巣腫瘍とは、この卵巣に発生する「できもの」。卵巣腫瘍には良性と悪性(卵巣がん)、その両方の中間的な性質を持つ境界悪性腫瘍があります。

卵巣腫瘍の症状は、腫瘍が大きくなるとお腹が張ったり下腹部に何かあるように感じたりすることくらい。稀に腫瘍がねじれたり動いたりすると、激痛を起こすこともありますが、不正出血のような目にみえるサインはないため、気づかないことが多いと思います」と話すのは、産婦人科専門医の吉形玲美先生。

卵巣腫瘍の診断では、内診と経腟超音波(エコー)検査を行い、良性であるかどうかの確認やがんの疑いがある場合には必要に応じてMRI、CT、腫瘍マーカーなどの検査を追加します。

 

【2】子宮体がん

子宮体がんは子宮内膜に多く発生するため「子宮内膜がん」とも呼ばれています。この子宮内膜は月経時にはがれ落ちてしまうため、子宮体がんは閉経前の女性で発症することは少ないといわれています。

「ただし、若い人でも月経不順を長期に渡って放置している方や、極端に肥満のある方は注意が必要です」(吉形先生・以下「」内同)

子宮体がんの発生の多くは、女性ホルモンのうちエストロゲンが影響していることが知られています。エストロゲンには子宮内膜の発育を促す作用があるため、エストロゲンの過剰な刺激により子宮内膜が増殖し、子宮体がんが発生しやすくなります。エストロゲンの子宮内膜への刺激を抑えるのが女性ホルモンのもうひとつ、プロゲステロンです。

「月経が何か月も来ない・・・といった稀発性の月経不順を放っておくと、エストロゲンばかりが子宮の内膜を刺激する一方で、プロゲステロンの分泌は不充分な状態に傾きやすく、子宮体がんを進める方向のホルモンバランスになってしまうのです」

また、エストロゲンは卵巣以外にも脂肪細胞からも分泌されることが知られています。そのため、肥満は子宮内膜へエストロゲンの過剰刺激が起きやすい状態となるのです。月経不順や肥満を防ぐことは、子宮体がんができる子宮内膜を健康に保つためにとても重要であるといえるでしょう。

 

【3】子宮内膜症

「子宮の内側を覆っている子宮内膜は、本来、妊娠しないと剥がれ落ち、月経血として体外に排出されます。ところが、その子宮内膜に似た組織が、なんらかの原因で 子宮の内膜以外の場所に付着 することがあります。付着した子宮内膜組織は、正常な子宮内膜と同様、女性ホルモンの影響を受けて周期的に増殖、出血します。ただし体外に排出できないため、 その場で炎症を起こして、痛みを発生 。それが子宮内膜症です」(吉形先生・以下「」内同)

生理を繰り返す限り自然治癒は難しい
子宮内膜症の主な症状は、 生理痛の悪化 。月を追って痛みが増していくのが特徴です。その他、生理以外での下腹痛、腰痛や排便・排尿痛、性交痛などが起きることも。子宮の収縮が阻害されて 過多月経や不正出血 の要因になることもあります。また、内膜症組織が卵管や卵巣で癒着を起こすと中が詰まって 不妊 の原因に。リスクに個人差はあるものの、放っておけば進行し、 自然治癒は難しい病気 です。

婦人科ではホルモン療法や手術療法など、その方のライフプランに合わせた治療を行います」

【子宮内膜症ができる場所】

  • 子宮内膜症ができやすいのは、腹膜、卵巣、子宮と直腸の間(ダグラス窩)など、ほとんどが骨盤内。
  • 中でも卵巣に入り込んで塊になったものは「卵巣チョコレート嚢胞」と呼ぶ。
  • ごく稀に、組織が血流に乗って移動し、肺や脳などの離れた部位にできることも。

\痛みの悪化、経血量の増加…異常を感じたらまず検診/


咲江レディスクリニック 院長

丹羽咲江先生

Q. セックスの後、1時間くらい奥の方がズキズキ。子宮内膜症のせいでしょうか?(会社員・37歳)
A. 可能性大です。ほかに、クラミジア感染症などが原因の場合も。
「子宮内膜症の場合、子宮と直腸の間の臓器同士が癒着しやすくなります。ぺニスが入って子宮が押し上げられると、癒着部分が引っ張られて痛むのです。また、クラミジア感染症のような、骨盤内に感染が広がって炎症を起こしている疾患も、セックスが刺激になります。いずれも我慢せず、すぐに婦人科を受診してください」(丹羽先生)

【腟の奥の方(骨盤内)の痛み】

  • ぺニスがピストン運動をしている際に腟の奥を刺激して、下腹部が引っ張られるように痛む。
  • 子宮の病気や感染症が隠れていることも。


【4】骨盤内炎症性疾患

産婦人科・心療内科医

小野陽子先生

「おなかが痛くなる症状は、消化器、泌尿器、血管、筋肉、腹膜など、腹腔内のあらゆる器官の不調や炎症で起こります。さまざまな病気の症状としてトップを占めるのが腹痛でしょう。

中でも、美的世代に起こりやすいのは、婦人科系の腹痛です。特に月経時の下腹部痛は、程度に差はあるものの、生理的な現象としてほとんどの女性が経験します。ただし、日常生活に支障を来す程の強い痛みは、子宮や卵巣の病気が隠れている場合があるので、注意が必要です。放置せず、婦人科で検診を受けましょう。

婦人科系以外の腹痛は、痛む部位によって、どんな病気が原因になっているかを推測することができます。とりあえずは安静にして、痛む部位を温めてみるなどのケア法がありますが、痛みが激しかったり、継続するようなら放置せず、早めに内科や消化器内科の診察を受けてください」(小野先生)

【骨盤内炎症性疾患】
骨盤の内側にある子宮、卵巣、卵管周辺に起こる炎症。原因の大半は、クラミジアや淋菌などによる性感染症。

  • 性交渉後、急に下腹部が痛む


【5】生理痛

東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科助教

泉 玄太郎先生

  • 炎症・痛み物質 「プロスタグランジン」の過剰分泌 で子宮周辺が痛む

生理痛は、子宮内膜から分泌される 炎症・痛み物質『プロスタグランジン』の仕業。プロスタグランジンには、子宮をギューッと収縮させて経血を体外に押し出す働きがあり、その分泌量が多いと、 子宮の収縮も過剰になって強い痛みを引き起こします。痛みや炎症は、下腹部だけに留まらず、子宮に近い腰や腟にも波及。プロスタグランジンには、胃を収縮させる作用もあるため、過剰に分泌されると 胃の痛み や不快感にもつながります。また、骨盤内に滞るプロスタグランジンが血管を収縮させると、血流低下や冷えを招き、それがまた痛みを増発。痛みのスパイラルに陥ってしまいます」(泉先生・以下「」内同)

【生理時「痛みや不快感」をCHECK!】

  • 下痢:おなかが緩んで、便もゆるゆる。ひどいときは下痢になる。
  • 腟痛:腟周辺にじんじんとした、筋肉痛のような痛みがある。
  • 腰痛:腰全体がズシンと重く、常に痛みがある。冷えも感じる。
  • 腹痛:下腹部を中心に、キリキリと激しく痛む。ズシンと来る鈍い痛みも。
  • 頻尿:尿意が起こりやすく、トイレに頻繁に行く。残尿感も。
  • 頭痛:頭がズキンズキンと痛む。通常の片頭痛より痛みが強く、長く続く。
  • 胃痛:胃に不快感があり、シクシク痛む。吐き気を伴うことも。

プロスタグランジンの働きで子宮が収縮、経血が体外へ!
子宮内膜が剥がれると、プロスタグランジンが分泌され、子宮が収縮し、経血が体外に押し出される。そのぜん動運動の刺激で生理痛が発生。

プロスタグランジンが増えすぎるとさまざまな臓器に強い痛みが!
子宮内膜の厚みが増すと、プロスタグランジンの分泌も増加。過剰に分泌されることで、収縮作用が激しくなり、生理の関連痛が強くなる。


どこの科を「受診」すべき?

産婦人科・心療内科医

小野陽子先生

  • 月経時、排卵時、性交渉後などに起こる子宮や卵巣周辺の下腹部痛は、迷わず婦人科を受診しましょう。
  • 月経異常との関係もあるので、普段から定期的に婦人科検診を受けたり、かかりつけの婦人科を作っておきましょう。

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事