健康・ヘルスケア
2022.3.30

子宮体がんってどんな病気?若い人にはできないって本当? 【女医に訊く#191】

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子宮がんには子宮頸がんと子宮体がんがあります。国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」によると、2018年に子宮体がんと診断された女性は17,089人(全国がん登録)。亡くなった女性は2,601人(厚生労働省人口動態統計)に登ります。子宮体がんについて、産婦人科専門医の吉形玲美先生に教えていただきました。

子宮頸がんと子宮体がんはどう違う?

子宮がんには、子宮下部にある筒状の「子宮頸部」と呼ばれる部分から発生する「子宮頸がん」と、子宮上部にある袋状の「子宮体部」と呼ばれる部分から発生する「子宮体がん」があります。

このうち、美的世代が発症しやすいのは子宮頸がん。子宮頸がんと診断される女性は、20歳代後半から増加し、40 歳代でピークを迎えます。一方、子宮体がんが発症しやすいのは40代後半から。50〜60代がピークとなります。

「子宮頸がんと子宮体がんは発生するメカニズムが全然違います」と話すのは、産婦人科専門医の吉形玲美先生。

「子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であることがわかっています。これに対し、子宮体がんは女性ホルモンの過剰な刺激が影響して発生するのです」(吉形先生)

子宮体がんは若い人にはできない?

子宮体がんは子宮内膜に多く発生するため「子宮内膜がん」とも呼ばれています。この子宮内膜は月経時にはがれ落ちてしまうため、子宮体がんは閉経前の女性で発症することは少ないといわれています。

「ただし、若い人でも月経不順を長期に渡って放置している方や、極端に肥満のある方は注意が必要です」と吉形先生。

子宮体がんの発生の多くは、女性ホルモンのうちエストロゲンが影響していることが知られています。エストロゲンには子宮内膜の発育を促す作用があるため、エストロゲンの過剰な刺激により子宮内膜が増殖し、子宮体がんが発生しやすくなります。エストロゲンの子宮内膜への刺激を抑えるのが女性ホルモンのもうひとつ、プロゲステロンです。

「月経が何か月も来ない・・・といった稀発性の月経不順を放っておくと、エストロゲンばかりが子宮の内膜を刺激する一方で、プロゲステロンの分泌は不充分な状態に傾きやすく、子宮体がんを進める方向のホルモンバランスになってしまうのです」(吉形先生)

また、エストロゲンは卵巣以外にも脂肪細胞からも分泌されることが知られています。そのため、肥満は子宮内膜へエストロゲンの過剰刺激が起きやすい状態となるのです。月経不順や肥満を防ぐことは、子宮体がんができる子宮内膜を健康に保つためにとても重要であるといえるでしょう。

子宮体がんの検査方法は?

「子宮頸がんの場合は相当進行しないと出血することは少ないのですが、子宮体がんの場合は初期から出血することがしばしばみられます。閉経後の不正出血は特に注意が必要です」と吉形先生。

ほかにも、子宮体がんでは下腹部の痛み、鈍痛といった症状があらわれることもあります。気になる場合は、婦人科医に相談してみましょう。

「子宮体がんの検査はまず、内診により出血の状態、子宮の大きさ、動き、圧痛の有無などを確認し、次に経腟超音波(エコー)により子宮の全体像、子宮内膜の厚みや形状を確認します。次に、子宮の入り口から子宮の内腟に子宮内膜の細胞を採取する細い管を挿入し、細胞診を行います。細胞診は病理の専門医による診断が必要のため、結果がわかるまで1週間ほどかかります。細胞診結果に異常を認めた場合は、さらに組織を採取する生検検査、骨盤MRIやCTなどによる画像検査で精査を進めます」(吉形先生)

子宮体がんの治療法は?

子宮体がんの治療法は、手術により子宮と卵巣・卵管を取り除くことが基本です。卵巣を取らないと、そこから子宮体がんの原因となるエストロゲンがどんどん出てきてしまうため、たとえ初期でも、病原だけでなく卵巣も一緒に摘出しなければならないのです。

「ただし、ごく初期の方やこれからお子さんが欲しい人は、プロゲステロンのお薬で治療することもあります。また、進行がんの場合は、腹部や骨盤内のリンパ節も郭清する大きな手術を行ったり、術後に抗がん剤による薬物療法を行うこともあります」(吉形先生)

子宮体がんは決して治りにくいがんではありませんが、克服するには早期発見・早期治療が重要です。心配な症状がある場合は、早めに婦人科を受診しましょう。

産婦人科専門医

吉形玲美先生

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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