コロナストレスやうつ・プロに聞く「5つの」症状と対処法

コロナが発生して早1年。自粛や生活様式の変化でストレスやうつ症状を訴える人が多発しています。今回は、症状をセルフチェックするとともに5つの症状と対処法をプロに聞きました。その他、自律神経の整え方もご紹介します。コロナに負けない精神作りの参考にしてください。
セルフチェック
この2週間、次のような問題にどのくらい頻繁に悩まされていますか? 各項目に点数をつけ、集計してください。
□全くない 0点
□数日 1点
□半分以上 2点
□ほとんど毎日 3点
- 1.物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない。
- 2.気分が落ち込む、憂ウツになる、または絶望的な気持ちになる。
- 3.寝つきが悪い、途中で目が覚める、または逆に眠りすぎる。
- 4.疲れた感じがする、または気力がない。
- 5.あまり食欲がない、または食べすぎる。
- 6.自分はダメな人間だ、人生の敗北者だと気に病む、または自分自身あるいは家族に申し訳ないと感じる。
- 7.新聞を読む、またはテレビを見ることなどに集中することが難しい。
- 8.他人が気づくぐらいに動きや話し方が遅くなる、あるいはこれと反対に、そわそわしたり、落ち着かず、普段よりも動き回ることがある。
- 9.死んだ方がましだ、あるいは自分をなんらかの方法で傷つけようと思ったことがある。
→上記の集計結果が10点以上の場合は、心と体が不調になっている可能性がありますので、まずは心療内科やメンタルクリニックにご相談いただくことをおすすめします。
※この表は上島国利先生(昭和大学名誉教授)、村松公美子先生(新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授)の監修したチェックリストを基に改変しています。Copyright (c) 2017 Pfizer Japan Inc.
「5つの」症状と対処法
【1】自炊しながらのお酒が唯一の楽しみ…
Tさん(塾講師/38歳) 夫と二人暮らし
【現在の環境について】
何をやってもやる気が出ません。以前は展覧会や映画に行くことが楽しみだったのですが、劇場や映画館に行けなかった日々が続いたせいか、今はオンライン中心で生活にメリハリがないというのが原因かもしれないです。大好きな外食にもなかなか行けないので、自炊をしながらお酒を飲むことが唯一の楽しみになりつつあります。
【心の不調について】
やる気がなく、集中力がもたなくなった気がします。楽しみがないせいか、食欲もあまりなく、何を食べてもおいしく感じません。気分転換にランチぐらいは外食しようかと思いますが、身支度をするのが面倒になって、一歩も外へ出ない日もあります。夫はお酒が飲めないので、ひとりで飲むのもなんだか寂しいと感じることもあって情緒不安定です。
「適切な睡眠時間を確保できているかが重要です」(尾林先生・以下「」内同)
「これらの不調に加えて、いい睡眠がとれていなければ要注意。適切な睡眠時間には個人差がありますが、長く寝すぎないよう心掛けてください。お酒を飲むことが気分転換というのは悪くないのですが、あくまでも適量が大前提。ストレス解消の一環としてその量が増えると、アルコール中毒の危険性も。外出が面倒でしたら、まずは自宅で簡単なヨガやストレッチを始めてみてはいかがでしょう。適度な運動習慣は自律神経を安定させてくれます」
【2】新しい生活様式とやらでストレスが“ちりつも”…
Hさん(パティシエ/30歳) 両親と3人暮らし
【現在の環境について】
新型コロナ感染症の影響で、自分の意思だけではどうにもならない決断を強いられ、やるせない気持ちと悔しさを感じています。また、友人と新型コロナ感染症に対する危機感の温度差を感じることがあり、以前より付き合いが激減。ひとつひとつは小さいけれど、最近は積もりに積もっています。
【心の不調について】
マスクをしていない人を見るだけで怒りが込み上げるなど、小さなことでも許せなくなったり、イライラすることが多くなりました。家の中でさえも動くことが億劫に…。無性に何かを食べたくなったり、味覚が鋭くなったり、食を普通に楽しめません。空虚感や無力感に襲われ、何も考えられなくなる日も。
「あなたの心の内を信頼できる人に話してみて」
「新しい生活習慣、強制的な環境の変化によって、心の余裕が足りていない状況ですね。イライラしてしまったり、味覚が変わるなどの感覚過敏といった症状は、そんな自分に気づいていても“認めたくないサイン”かも。空虚感や無力感も出現し始めていて、自分だけで解決するのは限界が近そう…。悩みの森にひとりで入り込むと、本格的に心の水位が下がっていく可能性もあります。そうなる前に、ぜひあなたの心の内を信頼できる方に打ち明けてみてください。内面を言語化し、それを解き放つことはとても効果的。『話す』は『放つ』なのです」
【3】メンテナンスを怠る自分に、自己嫌悪の日々…
Mさん(不動産会社勤務/35歳) 夫と二人暮らし
【現在の環境について】
リモートワーク中心で人目に触れる機会が減ったこともあり、セルフメンテナンスをサボってしまい、なんだか最近ブサイクになった気がします。昼夜逆転&運動不足でひどい便秘にもなり、20日間便通がないのもしんどいです。心身ともに絶不調になり、あれた肌やぽっこりおなかを見る度ストレスを感じています。
【心の不調について】
洋服や化粧品を見ても、以前のようにワクワクしなくなりました。どうせマスクするし…、イベントもないし…、と前向きになれず、引きこもりがちな日々です。インスタやYouTubeばかり見ているのですが、素敵なライフスタイルを送る人を見る度に、自分を卑下して暗い気持ちになります。
「日常生活に無理のない運動を取り入れて、心と体に栄養を!」
「以前とは違って何事にも億劫感を感じてしまうのは、やはり心の水位が低下しているサインです。YouTubeを楽しんで見ているようならいいのですが、気持ちが落ち込んでいるようなので、注意深く今後の経過を見る必要があります。それに20日間に及びお通じがないのは、症状としては放置できないレベル。腸内環境が大きく乱れていると、心にも悪い影響が出ることが懸念されます。まずはウォーキングなど、無理のない運動を日常生活に取り入れて体のメンテナンスを。減量のみならず、便秘解消にも効果的です。人目に触れることは心のメンテナンス効果にもつながります」
【4】 後輩に対し、どう接していいのか悩んでしまう

「高輪台レディースクリニック」 院長
尾西芳子先生
おにし よしこ/神戸大学国際文化学部卒業後、山口大学医学部学士編入。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科などで勤務。 妊娠・出産、婦人科がんの手術、不妊治療など幅広く学んだ後、2017年に夫婦で婦人科クリニックを開業。
Iさん(メーカー勤務/31歳) 夫と子供の3人暮らし
【現在の環境について】
物覚えが悪い後輩に対してどうしてもイライラしてしまい、かといってキツく言ってはパワハラと思われそうで、抱え込むことが多いです。故に職場では不機嫌な先輩と思われていそう。どう指導したり、接していけばいいのかを考えると、モヤモヤしてしまいます。
【心の不調について】
元々、生理前に心や体調の不調を感じることが多かったのですが、ここ数か月でその度合いが悪化しています。ひどいときには起き上がれない、何も食べたくない、コンビニへ行くのも面倒…という気持ちが強くなりました。ひとりでいると、もんもんと考えてしまって…。
「抜本的解決の前に、月経前の不快症状を軽減!」(尾西先生・以下「」内同)
「月経前の症状がつらいようなので、まずはホルモン剤で症状を和らげたり、漢方薬でイライラを落ち着かせる処方をおすすめします。ただ、環境面に対しての抜本的解決にはならないので、後輩との接し方を変える必要がありそう。すべてを背負おうとすると自分を追い詰めてしまうことに。後輩に対しては『できなくて当たり前』という気持ちで接してみると、少しラクになるかもしれません。相手に期待しすぎず、子供を育てる気持ちで!」
【5】在宅勤務で夫婦間のもめ事が増えてしまった
Rさん(役員秘書/32歳) 夫と二人暮らし
【現在の環境について】
夫婦でテレワークがかぶると、夫が一日中オンライン会議をしているのがうるさくてつらいです。そういったイライラのせいか、夫への小言が増えてしまいました。生理前はそのピークで、夫はおろか職場の人や友人への暴言も止められず、相手を傷つけてしまいます。
【心の不調について】
新型コロナウイルス感染症が終息しないことへの不安、環境作りが難しいリモートワークに対する不満、夫の会食がなくなり毎日料理をすることの負担…。日常のささいなことですが、そんなことに悩まされて、以前より気持ちが落ち込むことが多くなった気がしています。
「物理的に距離を置いて対処しつつもクリニック受診の検討を」
「これは放っておくと本格的なうつ病になる可能性があります。月経前に症状が悪化するということで婦人科を受診した場合でも、必要があれば心療内科も紹介させていただきます。しんどいなと感じたら、気軽な気持ちでクリニックへ行くことを検討してみてください。リモートワークに関しては、可能なら片方がカフェやホテルのデイユースを活用するなど、物理的に距離を置いてみることをおすすめします。24時間一緒だとイヤなところばかりが見えますが、環境が変われば新たな視点が見えてくるかもしれません」
自律神経を整える「3つの」方法
【1】骨格のゆがみを改善し、自律神経を整える簡単ストレッチ

せたがや内科・神経内科クリニック 院長
久手堅 司先生
東邦大学医学部医学科卒業。東邦大学附属医療センター大森病院などを経て、2013年にクリニックを開設。日本神経学会神経内科専門医、日本頭痛学会頭痛専門医。
Point
3ステップで理想の姿勢を作る!【STEP 1】首
(1)頭をまっすぐ前に出して10秒キープ!
背筋を伸ばして立つ。体は動かさずに、頭をまっすぐ前に出し10秒キープ。背中が丸まらないように注意。
(2)あごを押して後ろにスライド
あごに手を当て、後ろに強く押し、あごを水平にスライドさせて10秒キープ。
「1日に何度も行いましょう。首と頭のつなぎ目の関節がストレッチされます」(久手堅先生・以下「」内同)
【STEP 2】肩
肩を回してストンと落とし理想の位置に
立った状態で、肩をすくめて肩胛骨を上にもち上げる。そのまま肩を後ろに動かし、すっと力を抜いて、肩を下ろす。
「それが理想的な肩の位置です」
【STEP 3】肩胛骨
後ろ
横
両手を後ろで組んで胸と肩胛骨を意識
両手を後ろで組んで、少し上に上げる。胸を開き、肩胛骨を寄せた姿勢で10秒間キープする。
「胸の緊張がほぐれ、猫背の予防にも。姿勢が良くなると呼吸もしやすくなります」
【2】自律神経を整えるライフスタイル

せたがや内科・神経内科クリニック 院長
久手堅 司先生
東邦大学医学部医学科卒業。東邦大学附属医療センター大森病院などを経て、2013年にクリニックを開設。日本神経学会神経内科専門医、日本頭痛学会頭痛専門医。

慶應義塾大学医学部 神経内科非常勤講師
舟久保恵美先生
天気痛のメカニズムを研究し、医学博士号を取得(名古屋大学)。日本で唯一の低気圧頭痛を専門にする産業保健師。企業の健康プロデューサーとしても活躍。
Point
不調のときこそ規則正しい生活を!「自律神経を整えるには、規則正しい生活が基本。生活のリズムが乱れると、自律神経のバランスがくずれます。週末の寝過ぎが原因で、頭痛が起きるという人もいます。できるだけ普段と同じ時間に起きることが大切です」(舟久保先生)
早寝早起きや適度な運動など規則正しい生活が”キホンのキ”だとわかっていても、何かと忙しい美的世代は思うように実践できない人も多いはず。だからといって、「続けられなかった」と落ち込んだりすると、それがストレスになることも。自律神経を整えるには、ストレスも大敵。できる範囲で実行しましょう!
Point
冷えやすい人は体を温めることも体調不良を和らげるコツ
冷房で冷えやすい夏は、上着やスカーフを使用して対策を。
「特に手首、足首、首、両肩甲骨の間辺りを温めるのがポイントです。また冷たい飲み物を避けたり、体を冷やす夏野菜を食べすぎないことも大切。一口20回程度しっかりとかんで食べると、体の中から温めるのに効果的です」(久手堅先生)
Point
【朝】朝起きたら太陽の光をしっかり浴びる
夜型の生活や不規則な食生活などを続けていると、体内リズムが狂って自律神経のバランスを乱す原因になるので、毎日決まった時間の早寝早起きを心掛けて。朝起きたら太陽の光を浴びて、交感神経をオンにすると体が活動モードに。
Point
【昼】1日20分程度のゆっくりできる運動を!
自律神経を整えるには、激しい運動よりも、昼休みに20分程度のウォーキングをするなどゆったりとした運動がおすすめ。
「ゆっくりと長くできる運動は自律神経を安定させるので、ヨガやストレッチを習慣にするのも効果的です」(久手堅先生)
Point
【入浴】ぬるめの湯にゆっくりつかりリラックス
38~40℃くらいのぬるめのお湯に、20分程つかって体を温めると、副交感神経が優位になりリラックスできる。逆に熱いお湯は交感神経を優位にして、寝つきが悪くなるので注意。また、片頭痛があるときは温めると悪化するので、入浴は控えて。
Point
【睡眠】6~7時間程度の充分な睡眠をとる
活動している日中は交感神経が優位になっているため、副交感神経が優位になる睡眠をしっかりとって自律神経を整えることが大切。睡眠時間は人によって違うが、6~7時間程度を目安に、自分がすっきり起きられる時間を見つけよう。
【3】食生活を見直し腸内環境を整える

成城松村クリニック 院長
松村圭子先生
日本産科婦人科学会専門医。広島大学医学部卒。広島大学病院等での勤務を経て、2010年に開院。女性の美と健康に関する知見を生かし、女性誌やテレビなどメディアでも活躍。女性ホルモンに関する著書も多数。
「食生活が乱れていると、健康な体を支える3つの支柱『免疫』『自律神経』『ホルモン』の機能が低下します。この3つは実は三位一体で、ひとつでも弱い状態だと、ほかのふたつもうまく機能しなくなるのです。それは逆も然り。食生活の改善によって、免疫細胞が集中する腸のコンディションがUPすれば、ひいては自律神経やホルモンバランスも整ってきます。
さらには、ホルモンそのものの原料となる良質なたんぱく質や、ホルモンが体内でうまく動くようにサポートするビタミン・ミネラルを積極的にとることも、ホルモンバランスを整えるために大切です」(松村先生・以下「」内同)
Point
毎朝1杯の味噌汁を習慣に!「朝食をとらない、とれない、とりたくない人は、大半が自律神経のバランスが悪く、ホルモンバランスもくずしかねない状態。優秀なたんぱく源であるみそ汁を朝に1杯飲むことで、交感神経のスイッチをONに。作るのが面倒なら、無添加の即席みそ汁でもOKです」
Point
たんぱく質片手1杯分に、野菜や海藻をプラス
「体内でホルモンを作るためには、たんぱく質が必須。毎食、片手1杯分を目安にとるようにしましょう。ただしいつも肉だけといった偏りはNG。魚や豆類、卵などまんべんなくとって。また、ビタミン・ミネラルが豊富な野菜や海藻も、ホルモンの機能UPに不可欠です」
Point
加工食品をできるだけ控えて、新鮮&作りたてのものを食べる
「保存料や合成着色料などの添加物を含む加工食品を過剰にとっていると、正常なホルモン分泌が妨げられるだけでなく、ホルモンバランスを乱す要因にも。でき合いものの連投は避け、なるべくなら新鮮な食材で、自炊をする習慣をつけましょう」
Point
ジャンクフードは程々に!
「揚げ菓子や洋菓子、ファストフードなどは、食べすぎると酸化した油を大量に摂ることになります。頻繁にとっていると体内に活性酸素を増やし、ホルモン産生にも悪影響です。また、血糖値を急激に上げる加糖食品のとりすぎにも注意。ホルモンバランスを不安定にします」
Point
乳製品のとりすぎにも注意!
「乳製品をとりすぎて、動物性脂肪や動物性たんぱく質が腸内に長くとどまると、悪玉菌のエサになるリスクが。また、たまった動物性脂肪がホルモンバランスに影響を及ぼす可能性もあります。1日に牛乳200cc程度なら問題ないので、とにかくとりすぎに注意して」
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
おばやし たかふみ/東京大学理学部卒業後、「リクルート」に入社。その後、弘前大学医学部学士編入、東京都立松沢病院を経て、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。今年5月にカウンセリングをもっと気軽に受けてほしいとクリニックを開業。