眠気が取れない原因と睡眠不足が引き起こす影響を専門家が解説!改善法もご紹介
朝はもちろん昼間まで眠気に襲われる方もいるのではないでしょうか。ランチを食べ過ぎて満腹になってしまったり、あたたかいオフィスでぼーっとしてしまったり、でも、やはり一番は質の良い睡眠が足りてないのではないでしょうか。睡眠が足りてない人の特徴をご紹介。心当たりのある方は、まず睡眠を見直して規則正しい生活を心掛けてみましょう。
【目次】
・こんな人は眠りが足りていません!
・睡眠不足で起こる体への悪影響とは?
・睡眠を見直し朝の光を浴びれる環境に
こんな人は眠りが足りていません!
1分で寝落ちできる人は睡眠不足
教えてくれたのは…快眠セラピスト 睡眠環境プランナー 三橋 美穂さん
寝具メーカーの研究開発部長を経て、2003年に独立。これまでの20年間に、1万人以上の眠りの悩みを解決してきており、特に枕は頭を触っただけで、どんな枕が合うか分かるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディ―ネートなども手がける。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる睡眠メソッド100』(かんき出版)ほか、日本語版を監修した『おやすみ、ロジャー魔法のぐっすり絵本』(飛鳥新社)はシリーズ累計100万部を突破した。
Q:1分で眠れる人は睡眠不足ってホント?
睡眠不足の人たちからすると、「布団に入ったら1分で眠れる自信ある!」、「いつでもどこでも寝られるから」なんて豪語している人が羨ましく感じてしまいますよね。一見特技(?)のように思えるこの体質。実は睡眠不足のせいだって本当でしょうか。
A:本当
「健康的な人の場合、入眠には10分~20分程度かかるのが一般的。1分で眠れるというのは、睡眠が足りていない証拠です」(三橋先生・以下「」内同)
「睡眠不足から日中の眠気や疲労感を引き起こす“睡眠不足症候群”も存在します。これは人口の約1割が該当しているといわれています。しかし、肝心の本人自身が、疲労の原因が睡眠不足だと認識していないというのが現状です。仕事で疲れている、仕事を終わらせないと、という気持ちが先走り、結果仕事を優先して睡眠時間を削ってしまうのです。医学的には、布団に入って8分以内に眠れる人は、慢性的な睡眠不足の可能性が高いといわれているんですよ」
1分で寝落ちできる人は睡眠不足って本当?真相を快眠セラピストに直撃!
眠りの借金「睡眠負債」は気づかないうちにたまっている
教えてくれたのは…スタンフォード大学医学部教授 西野精治先生
にしのせいじ/医師、医学博士。「スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)」所長。著書『スタンフォード式最高の睡眠』(サンマーク出版)が話題に。
「キレイを保つためには睡眠を大切にすべき!」は、美容や健康を気遣う大人女子の一般常識。でも現状は、忙しくて充分な睡眠時間をとれなかったり、あるいはしっかり寝たつもりでも寝不足感が抜けなかったり…。
「そんな状態が続いていると、『睡眠負債』=(眠りの借金)がどんどんたまってしまいます。放っておくと、肌や体にさまざまな不調が現れますよ」(西野先生・以下「」内同)
\以下に当てはまる症状が多い程、「睡眠負債度」はUP!/
□ 午前中の会議や移動中、眠気に襲われる。
□ 仕事中、集中力を維持できない。
□ 日中のパフォーマンスややる気レベルが低下している。
□ すっきりした気分で起床できない。
□ よく眠れた実感をもてない。
□ ベッドに入って30分以上眠れない。
「個人差はあるものの、一般的に平均睡眠時間が6時間を切る人は『睡眠負債』を抱えている可能性が大。そもそも睡眠は貯蓄できないため、週末に少し長く寝たくらいで借金は返済できません。22時〜翌2時が肌のゴールデンタイムという説も根拠なし。大切なのは時刻よりも、寝入って最初の90分にどれだけ深く眠るかです」
睡眠不足で起こる体への悪影響とは?
睡眠不足の影響は自己肯定感の低下にも
教えてくれたのは…快眠セラピスト 睡眠環境プランナー 三橋 美穂さん
「睡眠不足は作業効率を下げるなど日常生活のさまざまな部分だけでなく、精神面にまで深く影響します。もっとも怖いのが、やる気や自己肯定感の低下を招いてしまうこと。睡眠がしっかりとれていれば、気持ちが明るく前向きになり、意思も揺らがずに強くなります。睡眠を大切にできている自分に対して、自信も生まれてきます。睡眠は人生そのもの。睡眠から幸せな明日を切り開いてみましょう」(三橋さん)
1分で寝落ちできる人は睡眠不足って本当?真相を快眠セラピストに直撃!
食いしばりを引き起こし、メンタルの病気が潜んでいるケースも
教えてくれたのは…南青山メンタルクリニック院長 武田浩一先生
たけだこういち/新潟大学医学部卒業。浜松医大精神科、順天堂大学精神科の医局、ホリーマームクリニック旗の台院長などを経て現職に。最小限量の薬物治療のみならず、じっくりと話を聞く治療を目指す。
歯ぎしり食いしばりの主な原因はストレスですが、中には昼間の悪習慣が原因で睡眠中に食いしばってしまう人もいるそう。
「仕事で集中しているときに食いしばるクセがある人は、睡眠中も食いしばってしまうことが多い。ただしこのタイプは、習慣を改善すれば治りやすいですね」(武田先生・以下「」内同)
ストレス発散のために行っている食いしばりですが、うつ病や睡眠障害などメンタルの病気が潜んでいるケースが増えている、と武田先生は言います。
「睡眠障害では特に睡眠時無呼吸症候群が多いですね。食いしばりがずっと続くようなら、メンタルの病気が潜んでいる可能性もあるので1度受診するといいでしょう。またストレスが多いと眠りが浅くなって夢をたくさん見ますが、昼間にも眠気が残るような場合は、かなりのストレスを抱えているひとつの目安といえるでしょう」
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難聴の遠因に
教えてくれたのは…石戸谷耳鼻咽喉科 院長 石戸谷 淳一先生
いしとやじゅんいち/医学博士。横浜市立大学医学部客員教授。国立国際医療センター耳鼻咽喉科医長、横浜市立大学附属市民総合医療センター耳鼻咽喉科教授などを経て現職。内視鏡下鼻副鼻腔手術のエキスパート。
「睡眠は、疲れた脳や体を休息させる大切な時間。不足すると自律神経のバランスが乱れて難聴の遠因に」(石戸谷先生)
就寝・起床時間をなるべく一定にして、質の良い睡眠をとりましょう。
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太りやすくなる、常夜灯も関係しているので注意
教えてくれたのは…快眠セラピスト 睡眠環境プランナー 三橋 美穂さん
「睡眠がしっかりとれていると、脂肪を分解する働きのある成長ホルモンや、コルチゾール、食欲を抑えるレプチンの分泌が増し、反対に食欲を増進させるグレリンの分泌が減少します。睡眠不足の場合は、これと真逆の状態となり、食欲を増進させるグレリンが増え、食欲をコントロールしにくくなる=太りやすくなってしまうのです」(三橋先生・以下「」内同)
「寝るときの環境も肥満に大きく関係しています。みなさん、眠るとき寝室の照明は真っ暗?それとも、常夜灯を付けていらっしゃいますか?常夜灯に豆電球が使われている場合、ちょっと心配です。
豆電球の光は思っている以上に強く、あお向けで眠っていると、光源が目にダイレクトに当たります。刺激が強いため、たとえまぶたを閉じていても脳に届き、睡眠の質を高めるメラトニンの分泌が減少してしまうのです。その結果、食欲を増進させるグレリンが増えて、太りやすくなってしまいます。どうしても真っ暗だと不安で寝付けないという方は、フットライトを取り入れるなどして、目に直接光が当たらないように注意してみてください」
睡眠を見直し朝の光を浴びれる環境に
深夜の光は体内時計を遅寝遅起きへシフトさせる
教えてくれたのは…睡眠専門医 柳原万里子先生
睡眠総合ケアクリニック代々木医師。東京医科大学睡眠学講座兼任講師。医学博士。日本睡眠学会睡眠専門医。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医。女性ならではの視点で、細やかな診療を行う。
わたしたちは昼行性の動物のため、原始的な生活をしていたころには日が昇ると起きて活動をし、日が暮れると眠るという生活をしていました。夜になり目から入る光の刺激が途絶えると、脳の松果体から“メラトニン”という物質が分泌されます。メラトニンは体内時計の調節に関係し、脳や身体を夜の状態にするホルモンのようなもの。夜に暗くなってメラトニンの分泌が増えるとわたしたちは眠くなり、眠ります。
現代の日本では夜でも点灯すればいつまでも明るく、光を発する電子機器を夜間に使用することも増えました。深夜でも目から強い光の刺激を受けると、メラトニンの分泌は抑制されてしまいます。その結果、本来ならば眠くなるはずの時刻にメラトニンが分泌されず、光の刺激が途絶えた後にようやく寝る準備を始めることになるため、体内時計は“遅寝遅起き”のリズムへとずれていってしまいます。
「明日のために寝なくちゃ! と思ってベッドに入っても、なかなか眠れずに時間をもて余してスマホを触り、ますます目が冴えてしまう…という方はおられませんか? 液晶画面のLEDから発せられるブルーライトは光の中でもとくにメラトニンの分泌を抑える作用が強いことが知られています。眠れないときにベッドのなかでスマホを触るのは残念ながら逆効果です」(柳原先生・以下「」内同)
朝の光は早寝早起きの効果が
「まず夜は眠りたい時刻の1時間くらい前からは電子機器などの眩しい作業をさけ、自分で夕焼けを作るつもりでお部屋の照明を間接照明などへ落としましょう。就寝中はなるべく消灯する、真っ暗だと眠れない方の場合には寝室の照明は直接目に当たらないようにフットライトを利用するなど工夫をしてみましょう」
目を閉じていても明るくなると光の情報は瞼(まぶた)をとおして目へ届き、脳へと伝わります。このため朝は逆に寝室が明るいほうが(=メラトニンの分泌が抑制されたほうが)起きやすくなります。寝室は朝起きたい時刻よりも先に明るくなってくれていると理想的です。
「遮光カーテンや雨戸の使用は、朝日が入らないため朝が苦手な方にはおすすめしません。防犯上必要な場合には、できるだけ光を通しやすいものを選ぶようにしましょう。朝食を摂ることや午前中の日光浴(30分以上)も体内時計を早寝早起きへと整える効果があります。朝食を窓辺でとる、朝の出勤はなるべく日なたを選んで歩く、などできることから始めてみましょう」
朝起きられず、夜は目が冴えて寝られません! どうしたらいいですか?【女医に訊く#87】
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。