大高博幸さんの 肌・心 塾
2016.6.7

【大高博幸さん連載 Vol.344】 試写室便り 第117回 『ロイヤル・ナイト』『教授のおかしな妄想殺人』『植物図鑑』『夏美のホタル』『ラザロ・エフェクト』

toppu
©GNO Productions Limited

『 英国王のスピーチ 』で描かれた王室の6年後、19歳の英国王女 エリザベスが 宮殿を抜け出した!

1945年5月8日、ヨーロッパ戦勝記念日。
忠実に基づく感動の一夜の物語。

ロイヤル・ナイト / 英国王女の秘密の外出
イギリス/97分/PG12
6.4より公開中/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/royalnight

【STORY】 ロンドンは 歓喜に沸いていた。6年間も続いた戦争が、まもなく 正式に終わるのだ。国を挙げての お祝いの夜に、エリザベス王女と妹のマーガレットは 何とか国王から外出の許可を得て、生まれて初めての お忍びで バッキンガム宮殿を あとにする。約束の門限は 1時、付き添いは 二人の近衛兵、行き先は リッツ・ホテル。ところが 監視の目が離れた隙に シャンパンで勢いづいたマーガレットが、ホテルからキラキラと輝く街へと飛び出す。あわてて追いかけるエリザベスを待っていたのは、人生を変える一夜だった――。 ( プレスブックより )

今月のイチオシ映画です。
永遠の名作『 ローマの休日 』( ’53、監督:ウィリアム・ワイラー、主演:オードリィ・ヘプバーン、グレゴリー・ペック )の誕生秘話とも言われている、忠実に基づく物語。本作の監督:ジュリアン・ジャロルドいわく「 実話に着想を得た ちょっとしたファンタジー 」で、モチロン 脚色は施されています。
付き添い・監視役の近衛兵ふたりの失態や、大群衆の歓喜の嵐の中で はぐれてしまったエリザベスと青年 ジャック( 乗り込んだ市バスの中で知り合った空軍兵士 )が 二度も会える偶然等は、少々出来すぎの感も なくは ありません。しかし、そんなコトは少しも気にならなくなるだけの楽しさがあって、全篇が キラキラと輝くばかりにチャーミング。コメディの要素も十分かつ多彩です。

一番の見どころは、やはり、エリザベスとジャックが 互いに惹かれ合うプロセス、そして お別れするラストのシークエンスでしょう。グレン・ミラーの名曲の数々も 効果的に用いられています。

エリザベス王女を演ずる サラ・ガドンは、まさに最高の適役を好演。本物のエリザベス女王の若き日の面影と重なる上、全身の上品な動き、毅然とした言動、さらに 育ちの良さから来る 素直さ・柔軟さ・優しさ等々を、ごく自然に表現して秀逸です。この一夜で、既に内在していた 次期 王女としての 自覚・覚悟が 一気に芽生える過程にも、説得力があります。
ジャックを演ずる ジャック・レイナーは、引き締まった顔・表情の豊かさが魅力の 将来有望な新人( ただし 僕が思うに 太りやすい体質のようなので、今後、自己管理が重要 )。マーガレット役の ベル・パウリーは、コメディタッチのイノセントかつ天真爛漫な演技で 大いに笑わせてくれました。国王 ジョージ 6世役は、かつて『 アナザー・カントリー 』(’84 )で〝英国美青年ブーム〟を巻き起こした ルパート・エヴェレットで、風格の中にも 娘たちへの愛情を溢れさせています。少々疑問に感じたのは、王妃 エリザベス( 演ずるのは エミリー・ワトソン )。雰囲気が硬く、表向きと実際の感情に大きな差があるような人物に描かれていた点です( ヘレナ・ボナム = カーターが演じた『 英国王のスピーチ 』( 通信47 )での王妃のイメージと 結びつかないコトが、僕としては不満 )。
ほんの脇役ながら 絶賛に価するのは、ジャックが所属する空軍兵舎の門番兵( 俳優名は不明 )。大真面目にリアルに演じていながら、非常に快いユーモアを醸し出していて、エリザベスとの ちょっとした絡みも 最高でした。

以下、記憶に残った台詞です( 鑑賞前に詳しく知りたくないという方は、読まないでください )。
1)「 こんな宮殿で若さが朽ちるなんて、ウンザリだわ! 」( 外出できそうもない状況下で、マーガレットが エリザベスに言う台詞 )。
2)「 行かせてやろう、私たちも楽しんだんだ。覚えているだろう? 」「 それは 王位継承者になる前の話よ 」「 彼女には 最後の機会だ 」「 そう…、仕方ないわね 」( 国王と王妃が、マーガレットの懇願に折れる場面での台詞 )。
3)「 ご一緒して 」「 それは 命令ですか?」「 要望です 」( ジャックの危機を救うために、エリザベスが 公衆の面前で 身分を明かした直後の、ふたりの台詞 )。
4) 夜が明けて、エリザベスが ジャックに宮殿まで送り届けてもらう車中での、ふたりの とりとめのない会話 )。
5)「 パパ、ママ、遅くなりました。こちらは 友人の ジャック・ホッジスさんです。彼も一緒に朝食を 」「 それは 不適切だと思うわ 」「 いゝえ、一緒に いたゞきます 」( 宮殿に戻ったエリザベスと、待ちわびていた王妃との会話 )。
6)「 君のおかげで 娘は無事に戻れたようだね。ご苦労だった、いろいろと 」「 恐れいります 」「 リリベット( エリザベスの愛称 )、このコトは 公言せぬように。お前は 一晩中、リッツに いたのだ 」「 はい、お父様 」( 朝食を終えた国王が、ジャックとエリザベスに言う台詞 )。
7)「 他言は無用よ 」( 本作での最後の台詞。ジャックから受け取った一輪の花を指揮棒のように持ち、エリザベスが 兵舎の門番兵に ユーモアを込めて〝命令〟する! )。

P.S. この映画を観て サラ・ガドンのファンになったという皆さんは、通信 118147256を クリックしてみてください。
P.S. 映倫PG12指定は、おそらく 娼館の場面があるため。But、描写としては コメディタッチです。

 

Photo by Sabrina Lantos (c) 2015 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.

ふくれ上がるアブない妄想 × 燃えさかる恋の情熱――。

人生の不条理を独特の哲学で描いた
ウディ・アレン監督 最新作!

教授のおかしな妄想殺人
アメリカ/95分
6.11 公開/配給:ロングライド
Kyoju-mousou.com

【STORY】 夏の日差しが きらめく アメリカ東部の大学に赴任してきた 哲学科教授のエイブは、真っ暗闇の中を生きていた。人生の意味を見失った彼は、慢性的に孤独な無気力人間になってしまったのだ。ある日、迷惑な悪徳判事の噂を耳にしたエイブは、その判事を殺すという 完全犯罪に夢中になっていく。かくして“奇妙な目的”を発見した途端、あら不思議、エイブの毎日は鮮やかに彩られ、身も心も絶好調に。一方、エイブに好意を抱く 教え子 ジルは、彼の頭の中に おかしな妄想が渦巻いているとは つゆ知らず、燃え上がる恋心を抑えられなくなり……。( 試写招待状より。一部省略 )

『 ミッドナイト・イン・パリ 』( 通信 105 )『 ブルージャスミン 』( 218 )、『 マジック・イン・ムーンライト 』( 281 )の W・アレン監督が、ホアキン・フェニックス( 145205232286 )と エマ・ストーン( 91151281 )を起用して作った、奇想天外な、ブラックに近い ダーク・コメディ。
今回は 日本の映画ファンの感性に どこまで合うか、少々心配な内容でしたが、僕は アレン作品ならではの ペシミスティックでドライなタッチを 大いに楽しみました。妄想を実行に移してしまうエイブ( J・フェニックス )の心理状態と、彼に熱を上げているジル( E・ストーン )との“噛み合わない絡み”が とても滑稽。But、最終的には アゼンとさせられる、驚きの結末が 用意されています。

納得できなかったのは、J・フェニックスが「 役作りのために体重を約15kgも増やした 」という 裏話。ファーストシーンのアップで「 なぜ急に、こんなに顔が緩んでしまったの? 」と思ったのですが、車から降りて来た彼は おなかが ポコッとセリ出していて、まるで妊娠 7~8ケ月……。試写後、「 役作りのために 」太ったと プレス資料を読んで知ったのですが、そんな必要は 100% なかったはず。アレン監督には、スターの健康と美容を害するようなコトを、安易に要求しないでほしいと言いたいです。
『 マジック…… 』では、帽子の似合うファッションで目を楽しませてくれた E・ストーン。今回の小道具はサングラスで、それが とてもカッコいゝ。プラス、チョコレートを つまんで食べる仕草の スマートな愛らしさ。
脇役は『 マジック…… 』での それよりも充実しています。特に パーカー・ポージー演ずる科学科教授 リタ( セックスの探求者的人物 )に、ある種の大人の女の魅力が感じられて、相当 興味深かったです。

以下、印象に残った ちょっとした台詞。
1)「 ウワサって 脚色されるのね 」( ジルだったか リタだったかの、何気ない台詞。全く その通り。脚色どころか、捏造されるコトもあるのが 現実ね )。
2)「 言葉は悪いが、ゴキブリは踏みつぶせだ! 」( 妄想殺人に走るエイブの 自己弁護的な台詞。確かに その通り )。
3)「 教科書からは 何も学べない 」( エイブが 教室で 生徒たちに言う台詞。そうかな? 違うのでは? )。

海岸のシーン( 岩場と砂場 )が、今回も美しく撮られていました。アレン監督の 好みの 風景・被写体なのでしょう。

 

©2016「植物図鑑」制作委員会

お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか? 噛みません、しつけのできた良い子です。

突然ひろった恋は、期限付きの恋でした。

植物図鑑
日本/112分
6.4より公開中/配給:松竹
shokubutsu.jp

【STORY】 ごく普通の女の子・さやかの目の前に、ある晩 あらわれたのは、生き倒れた青年・樹( いつき )。突然 始まった、二人の「 半年 」という期限付き同居生活。しかし彼は、自身の名前と 野草に詳しいということ以外は、謎に包まれていた。知らない世界を優しく教えてくれる樹と 毎日 過ごすうちに、積もっていく「 好き… 」という気持ち。けれども、彼には、ある秘密があった――。( 試写招待状より )

有川 浩の 大人気小説の映画版です。何も知らない僕は、雪の夜に さやかに助けられる樹の正体は「 野草の妖精? 」などと想像していましたが、ある秘密をもった「 人間の男子 」でした。料理が非常に上手で、月に三万円あれば 立派な食事 + さやかのお弁当まで作れるという才能の持ち主。そんな彼に 恋心を抱き、傷つき、もがく さやか。そして 樹の本当の想い……。

樹役は、EXILE/三代目 J Soul Brothersの 岩田剛典( 口角が上がる唇は羨ましい限り )。さやか役は、「 とと姉ちゃん 」( NHK連続テレビ小説 )のヒロインに抜擢されたビッグアイズの高畑充希。ふたりとも本作が映画初主演、みずみずしいピュアな演技で感動を誘います。
かなり気になったのは、さやかと同じ職場の先輩 = さやかのお弁当に興味を示したり、さやかを怒らせたりもする男性でした。この人( 本当は誠実で、とても優しい人です )の さやかに対する言動には 非常に大切なモノが含まれているので、その辺りも 特に 20歳以上の皆さんには、よく観てほしいと思っています。

 

名称未設定-1夏美のホタル
©2016「夏美のホタル」製作委員会

人は 寄り添いながら、生きていく。

父は 私に 何を伝えたかったのだろう。
導かれるように向かったのは、父との思い出の場所だった――。

夏美のホタル
日本/108分
6.11 公開/配給:イオンエンターテイメント
natsumi-hotaru.com

【STORY】 写真家になる将来の夢と、恋人の慎吾との関係に悩んでいた夏美は、父の形見のバイクで 思い出の森へ向かう。そこで小さな商店を営んでいる 通称・地蔵さんと ヤスばあさん親子に出会い、居候することに。地蔵さんの友人、雲月の不遜な態度を腹立たしく思いながらも、地元の子供たちと触れ合い、自然に囲まれ、穏やかに過ごしていた。しかし、ある日、地蔵さんが 別れた家族との間に 埋められない溝を抱え、長い間 苦しんでいることを知る……。( 試写招待状より )

森沢明夫の同名小説を映画化した、ハートウォーミングな一編です。
描かれているのは、光石 研 演ずる地蔵さん宅に居候した、有村架純 演ずる夏美の 精神的に成長していく姿。物語の背景にあるのは、夏美と その父( 若くして亡くなっている )、地蔵さんと その息子( 両親の離婚後、よその息子になっている )、それぞれの父と子との関係……。

全体的に ゆったりとした展開。小学生時代の夏休みを想い出させる長閑な空気感、木洩れ日、川面の煌めき、草木の緑の諧調など、田舎の夏ならではの美しい場面には うっとりとさせられます。

これは 書かないほうが いゝのかもしれませんが、予想はしていたものの 突然 ジーンと来て泣けたのは、地蔵さんと息子( 17歳ぐらいになっている )の再会場面。思いがけず会いに来てくれた息子に、地蔵さんは「 大きくなったなぁ 」と涙を流し、「 お父さん! 」と ひとこと言った息子と抱き合います。地蔵さんは「 俺の子供に生まれてくれて、ありがとう 」とも。

以下、記憶に残った台詞です。
1)「 小さい頃、お父さんと よくホタルを見たんです、こゝで。お父さんに会いたくなって……、ホタルがいたら いゝなぁと思って 」( 夏美が 地蔵さんに言う台詞 )。
2)「 結果じゃねぇ。才能ってのは 覚悟のコトだ。覚悟がなけりゃ 結果も出ねぇ 」( 小林 薫 演ずる 雲月が、プロの仕事について 夏美に言う台詞 )。
3)「 この世に生まれてくる喜び、親に愛される喜び、親になって子供を愛する喜び 」( 三つの喜びについての地蔵さんの台詞。夏美の父が、かつて口にしたという言葉でもある らしい )。

光石 研は、『 恋人たち 』( 通信 310 )で サギ師のような男を演じた時とは、目つき・顔つきが全く違っていました( メークの助けを借りずに )。心のありようが 目と顔に表れるコトを、彼は まざまざと 証明しています。
有村架純は、気丈に振るまっていた ヤスばあさん( 演ずるのは 吉行和子 )から「 一緒に行ってくれないかい? ひとりじゃ心細くって…… 」と頼まれた瞬間のデリケートな表情が最高です。たゞ、台詞の多くに もう少しソフトなニュアンスが加われば、さらに良かったのでは? とは思いました。

P.S. ホタルが飛び交う場面のスティルがなくて 残念。But、一番上のスティルの 夜の場面で観られます。お楽しみに!

 

toppu
© 2016 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

古( いにしえ )より 世界中で報告されている 死者の復活――。
神の領域に足を踏み入れた研究所で、我々は〝その先の恐怖〟に遭遇する。

ラザロ・エフェクト
アメリカ/83分
6.11 公開/配給:クロックワークス
Lazaroeffect.com

【STORY】 フランクと婚約者のゾーイたち研究グループは「 死者を蘇らせる 」ことができる「 ラザロ血清 」の研究に没頭していた。ある日、実験の最中に ゾーイが感電死してしまう。フランクは 研究員の制止を振り切り「 ラザロ血清 」をゾーイに投与、彼女を死の淵から蘇らせることに成功する。しかし 復活に喜ぶのも束の間、ゾーイの身体に様々な異変が起こり始める。( 試写招待状より。一部省略 )

〝死者の復活〟と〝血清〟というキーワードに ドラキュラ映画的興味を抱いたのですが、これは むしろ フランケンシュタイン映画の延長線上にある内容。「 ラザロ血清 」で生き返った犬が 不可解な行動を示す辺りからホラー映画のタッチが見え始め、終盤に近づくにつれて恐怖が増幅するという展開です。
医学的な裏付けに関しては 僕には よく分かりませんでしたが、少女時代のある出来事が ゾーイのトラウマになっているという要素が クライマックスで明かされます。

ゾーイ役は、最近 好調の オリヴィア・ワイルド。ほとんどノーメーク風の顔が 清潔で美しく、中盤以降、眼に異様な雰囲気を漂わせるところなど、その表情の幅の広さには 相当 驚かされもしました。
フランク役の マーク・デュプラスは『 バッド・マイロ! 』( 通信 263 )に続き、今回も好演。クラシックな文芸大作等への出演が叶えば、その実力と魅力は さらに輝きを増すはずです。

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
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(個別回答はできかねますのでご了承ください。)

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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