長澤まさみさん「今は、人生をとにかく楽しみたい。」スペシャルインタビュー|美的GRAND

届けられる作品ごとに魅了される。飾らない、正直な言葉に聞き入ってしまう。 少しずつ、静かに満ちていくような内面の豊かさ。仕事への向き合い方、仕事以外の過ごし方。 そのあり方が心身を美しく整える。だから、どんな作品が来ても時機純熟。
長澤まさみ 美の余白。
物には執着しないけれど、気に入ったものは長く使う。長澤さんが長年愛用しているのが巾着袋。幼少期に祖母が手作りしてくれたものを、楽屋のれん入れとして使い続けている。
「母が描いた絵を水色の巾着袋に刺しゅうしてくれたんです。私にとって本当に大切なものは意識しなくても忘れないし、なくさないものなのだなと思います」
主演映画『ドールハウス』は、大事にしていた人形から不気味な出来事が起こるミステリー。「心穏やかに過ごしたいので、ゾクゾクするものは苦手」という長澤さんにとって、初挑戦のジャンルになる。クランクイン前、参考に“怖い映画”をいくつか観る中で、作品への視座も広がったという。
「怖い印象しかなかった『エクソシスト』も最後のセリフに精神性を感じたりと、人生の奥深さを描いたものも多くあるし、海外では映画の怖いシーンを笑いながら観る方もいるんですよね。映画の楽しみ方は自由でいいのだと改めて感じました。今作で私が演じる母親の娘への関わり方はどこかゆがんでいて、私自身の固定観念も問われているような感覚がありました。その時々で最適な選択をしているつもりでも、偏った思考に陥ってはいないか、私は常に正気でいるのか、と。自分をしっかりもって生きるために広い視野をもつ大切さや、家族のあり方を考えさせられる映画です」
まとわりつく不穏、体が強張るような不気味さを増幅させる芝居。常に前作の自身を超えている存在感。演じることは自らを自覚することでもあるが、「カメラには内面も写る」ことも感じている。
「心が曇っていたり、焦っていたりするとそれさえも写ってしまう。演じるのは別の人物であり私でもある、というのが芝居なのだと思います。気持ちを落ち着かせ、どんな感情にも染まれるように、常にニュートラルな状態で芝居に臨みたいですね。そうすることで、役の実在感をより感じてもらえたらうれしいです。芝居を技術的に掘り下げ、時には目を背けたくなるような自分の思いにも向き合えるようメンタルを整えるためにも、大切なのは集中すること。それ以外は、自分の表現や個性を主張したいという思いはないんです。積み重ねてきたことで力になってきた部分をブラッシュアップしながら、誠実に物作りをして、皆さんに楽しんでもらえるような、“出合ってしまった”と思ってもらえるような作品を届けたいというのが、私のやる気スイッチ。単純なんです」
日々、心穏やかであるように。そのためにもスキンケアの時間を大切にしている。SHISEIDOのブランドアンバサダーでもある長澤さん、今回の表紙撮影でも透明感のある美肌に魅せられた。
「今日のようにナチュラルな潤いのある素肌感や空気感があるメイクが好きです。メイクを楽しむためにも、肌の土台作りは重要ですよね。潤っていると気持ちも元気になるし、ケアをすれば結果が出て、自信がもてるようにもなりますし。化粧水、美容液、アイクリームに至るまで日々しっかりと、楽しみながらケアをしています。美容液やクリームは塗り方が大事だと聞くので、シワを引っ張って、上に向かうように塗り込んでみたり。(CM出演している)アルティミューンTMの美容液は、私にはその後のメイクへの影響が少ないので、朝もつけています。老化細胞を除去するというテクノロジーもすごいですよね。美容は好きですが、人前に出ることを考えると、どこかキレイでいなくてはというちょっとした責任感を感じながらお手入れをしている気がする中で、科学の進歩は心強さと希望をくれるものだと感じています」
野菜たっぷりの食事を手作りする。食材のおいしさを生かし、味つけは天日塩でシンプルに。大好きなホーリーバジルティーをフレッシュで楽しみたいと、最近、苗を植えた。美術館にもよく通い、一眼レフカメラで心躍る瞬間を切り取る。服やアクセサリーは本当に気に入ったものを少しだけ選ぶようになった。冷えないように、夏も家では厚底のスリッパを履く……。無理のない、心地よい日常が美しさや豊かな感性の源。
「料理は息抜きにもなっています。私、よく人を招くんですよ。得意料理を基本に献立を考えたり、テーブルセッティングにこだわったりと、友人のためにあれこれ考えて用意する時間も好きです。最近だと、ソミュール液につけて作ったローストチキンがおいしかった! スキンケアと同じで、日々楽しいと感じる時間や経験をもつことでリフレッシュにも学びにもなるし、自分を労わることにもつながる気がしています」
キャリアも25年。長澤さんが自身と親密に向き合う程、私たちは見たことのない風景や新しい感情に心を揺さぶられる。挑戦を続けることの原動力を問うと、「寒いのが苦手だから、将来的に冬は家にいられるように、今のうちに頑張っておきたい(笑)」。そう茶化して笑った。
「仕事ではうまくできたり、失敗したりしながら、苦手なことにも対峙して努力する過程で、自分が変われることを少しずつ実感してきました。自信は自分で身につけていくしかないんですよね。年々、お芝居が楽しいと感じています。あっという間にこの年齢になって驚きますが、有限な時間を有意義に使っていきたいです。もう周りの目は気にならなくなってきたので(笑)、好きだと思うこと、挑戦したいと思う自分の声を聞いて、人生を楽しみたい。人生最後のときにカレーを食べたかった、ではなく、食べ尽くした、と思えるように生きたいです(笑)」
ドレス¥481,800(リシュモン ジャパン アライア〈アライア〉) イヤリング¥1,584,000、リング[右薬指]¥4,712,400、同[左人さし指]¥814,000、同[左中指]¥1,650,000[すべて予定価格](ブシュロン)
「ナチュラルな素肌感のあるメイクを楽しめるよう、ベースの肌を整える。
肌が潤うと気持ちも元気になり、自信がもてるようにもなる。
毎晩、シワを引っ張りながら美容液を塗っています。」
トップス¥165,000(リシュモン ジャパン アライア〈アライア〉) イヤリング¥15,708,000、リング¥6,732,000[ともに予定価格](ブシュロン)
「偏った思考をしていないか。私は今、正気でいるのか。そんなことを考えた作品に出合った。
演じるのは別の人物であり、私でもある。
カメラには心の内も写るから、心穏やかに、ニュートラルでいたい。」
トップス¥300,300、パンツ¥250,800、ネックレス¥4,950,000、リング¥561, 000、シューズ¥231,000(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン〈ボッテガ・ヴェネタ〉)
「人を招いて、料理を振る舞う。スキンケアの時間を楽しむ。
楽しいと感じる時間や経験がリフレッシュや学びになり、感性を豊かにしてくれる気がする。
今は、人生をとにかく楽しみたい。」
Profile
ながさわ・まさみ
1987年、静岡県出身。2000年に俳優デビュー。,04年の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』で第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など多数受賞。出演作に、映画『コンフィデンスマンJP』シリーズ、『スオミの話をしよう』、ドラマ『エルピス−希望、あるいは災い−』、舞台『正三角関係』『おどる夫婦』など。10月17日公開の主演映画『おーい、応為』で葛飾北斎の娘・応為を演じる。
『美的GRAND』2025夏号掲載
撮影/熊谷勇樹 ヘア/KOTARO メイク/渋沢知美(beauty direction)スタイリスト/吉田 恵 構成/松田亜子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。