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2014.12.16

大高博幸の美的.com通信(263) 『王の涙』『海月姫』『百円の恋』『バッド・マイロ!』 試写室便り Vol.82

李朝五百年の歴史に刻まれる名君、イ・サン。
王が ただひとり信じた家臣は、悲しい宿命を生きる宦官(かんがん)だった。
ふたりの男の絆に涙する感動のストーリー。

©2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
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王の涙 ――イサンの決断―― 』 (韓国/137分/PG12)
12.26 公開。www.ounonamida.net

【STORY】 宮廷内の最大派閥・老論派の策謀により、祖父である先代王によって父を惨殺されたイ・サン(ヒョンビン)。即位後も たえず暗殺の危険にさらされ、心を許せる家臣は ただひとり、宦官のカプス(チョン・ジェヨン)だけだった。一方、イ・サンの失脚を狙う老論派の後ろ盾は 祖父の後妃で、イ・サンにとっては義理の祖母にあたる 若く美しい貞純王后(ハン・ジミン)。理想の治世を実現するために 老論派の排除に動きはじめるイ・サンに対し、老論派は ある男を通じ、当代一の刺客ウルス(チョ・ジョンソク)を使って 王暗殺を企てるのだが……。やがて明らかになる カプスの秘められた悲しい過去。いよいよ迫る 王暗殺の時。果たして王の運命は? (プレスブックより。一部省略)

史実に加え、“資料に裏打ちされた想像力を駆使”して映像化されたという、ドラマティックなエンターテインメント大作。
主役のイ・サンを演ずるのは、海兵隊除隊後 初の映画出演となる ヒョンビン。21ヶ月間のブランクをエネルギーに変えたかのような演技を見せ、大スターの風格さえ漂わせています。
本篇が始まる前に 登場人物の相関図が簡潔に示されるので、それを頭に叩き込んでおくと、物語の展開が とても把握しやすくなります。さらに、カプスの少年時代を中心とする回想場面を注意深く観ていると、ラストの感動が一層強まるはずです。
出演者は男優陣が充実、中でも特に光っていたのは ウルス役の チョ・ジョンソク。絶賛された前作『観相師』(’13)の それとは全く異質な役柄を 今回も鮮烈に演じて、非常に印象的でした。
本作のCG技術は、2年程前の『王になった男』辺りと比較すると、特にロングショットの仕上がり等に一段の進歩が認められ、また アイライト(俳優の瞳の輝きを強調するための照明)の使用法も、古典的なテクニックとはいえエクセレント。たゞ少々残念に感じたのは、クライマックスへと向かう場面で、カプス役のチョン・ジェヨンに スーパーマン的な動きを 唐突に させていた点です。カプスは王の書庫の管理係で、常に物静かなキャラクターでもあるので、リアルな感覚を損わないために、もう一工夫の演出が必要だったと感じました(チョン・ジェヨンがオーバーアクションだったというワケではありません)。

 

(C)2014映画『海月姫』製作委員会 (C)東村アキコ/講談社
(C)2014映画『海月姫』製作委員会 (C)東村アキコ/講談社

笑いと涙に萌え!
オタクすぎるシンデレラ誕生!
海月姫(くらげひめ)』 (日本/126分)
12.27 公開。www.kuragehi.me

【STORY】 アパートで共同生活を送り オタク道を極めていた女子集団の前に、女装美男子と童貞エリートの兄弟が出現。慌てふためく彼女達に、聖地(ボロアパート)強奪の危機まで勃発! 大事なものを守るため、仲間とともに小さな一歩を踏み出した彼女達は――。 (試写招待状より。一部省略)

原作は 東村アキコの同名の大人気漫画で、自分の世界を大切にするオタク集団の奮闘を描いたエンターテインメント。監督は『ひみつのアッコちゃん』(’12)の川村泰祐。主役の海月姫こと倉下月海役に、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の能年玲奈。女装が趣味の蔵之介役に菅田将暉、童貞エリートの修役に長谷川博己というキャスティング。
マスコミ試写会は連日満員の盛況で、入場できずに「また今日も来てみた」「今日は早く来たのよ」と言っているジャーナリストさんが何人も! コレは相当の話題作だったんですね…。
子供の頃、海でクラゲに刺された経験を持つ僕としては、今までクラゲを好きと思ったコトはなかったのですが、本作を観て、気持ちが180度 変わりました。プロローグの、海に落ちた月海とクラゲの幻想シーンが 絵本のようにファンタジック。『ぷかぷか』とかいう店の水槽でユラユラしているクラゲが とってもキュート、水族館のクラゲが コレまた美しく、月海の惚れ込む気持ちが分かりました。
登場人物で一番面白かったのは 修役の長谷川博己、次いで お抱え運転手でメルセデス・オタク役の速水もこみち(このふたりの演技力は相当なモノです)。
能年玲奈は、1.5テンポ程 タイミングがズレるところが 何ともチャーミング。
オタク女子集団の4人は…、独得な台詞と その呼吸に縛られているようで、多分にマリオネット的で ギコチない感じ。もしも漫画からハミ出すような脚色・演出が成されていたなら、数段面白くなったに違いないと思いました。もっとも僕は、原作を知らないんですけれど。
But、とにかく2時間6分、楽しませていたゞきました。

 

(C)2014東映ビデオ
(C)2014東映ビデオ

時価百円の女・斎藤一子、32歳。
傷だらけの「恋」と「闘い」の物語。
百円の恋』 (日本/113分/R15+)
12.20 公開。www.100yen-koi.jp

【STORY】 実家で自堕落な生活を送り、妹との喧嘩をきっかけに実家を出た一子(いちこ)。百円ショップで深夜労働しながら一人暮らしを始めた彼女は、帰り道に通るボクシングジムで 寡黙に練習するボクサー 狩野と出会い、人生に変化が訪れるが…。 (試写招待状より)

だらしなさの見本のような女の子。背中も肩も丸めてズルズルと歩き、パジャマ姿(?)で夜食を買いに…。その途中、街角で ちょっと立ち止まった時、「立ち小便? まさか!」と一瞬 思わせた程の女の子。髪は半分まで茶色。母親からは「歯医者さんに行きなさい! そんな下水道みたいな匂いさせて!」と怒鳴られている。ブザマな格好で道で転んで下着の線までクッキリ見えたり、いゝところが ひとつもなさそうな女の子。
この映画の監督さんは、根っからの女嫌いなのか…、だとしたら観に来るんじゃなかった…と、僕は途中まで思っていました。
でも、違ったのです。この“不器用にしか生きられない女、一子”を見つめる監督:武 正晴の目は 温かい、というよりは 熱い。話が進むうちに、僕は一子が いじらしくなり、親戚の子を見守るような気持ちになっていました(ラストシーンでは、一子は掛け値なしの幸せをつかむと 何となく感じて、嬉しくもなりました)。
おきれいゴトではないドラマ。誰もが見逃してしまいそうな女の子の、芯の弱さと強さに向き合う気持ちがあるならば、ぜひ観てほしい映画です。
P.S. 一子役は 安藤サクラで、体当たり的演技を披露。But、次回作ではピシッと引き締まった役を演じてほしい。性格は、暗くても 意地悪でも かまいません。期待しています。

 

©PREDESTINED, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
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大好きなパパを守るため “お○り”から飛び出した、
驚異のラブリーモンスター、ここに誕生!
バッド・マイロ!』 (アメリカ/85分/R15+)
12.20 公開。
www.facebook.com/badmilo.jp

【STORY】 すべての始まりは、ごく平凡な中年サラリーマン、ダンカンが 腹部の不調を訴えて病院に駆け込んだこと。イヤミな上司や奔放な母親からのプレッシャーでイライラが極限に達した彼は、猛烈な腹痛に悶え苦しんだ揚げ句、トイレで気絶してしまう。時同じくして、ダンカンの周囲では 謎の凶悪生物による惨殺事件が続発。やがてセラピストの催眠療法を受けたダンカンは、この世の出来事とは思えない 驚愕の真実を目の当たりにする。なんと自分の肛門から、まるで腸のような奇妙な生き物が飛び出し、ダンカンが気絶している間に、ダンカンのストレスの原因となる者を次々と襲撃し、また肛門に戻っているらしいのだ。想像を絶する状況に唖然とするダンカンだが、徐々に その生き物に 愛着が わきはじめ ≪マイロ≫と名付け、二人で暮らし始めるのだが…。 (プレスブック+チラシより)

ストレス漬けの現代人の心情に寄り添う、風刺的なテイストを持つホラー・コメディ。恐怖とユーモアの巧みなブレンドが、最終的にハートウォーミングな感動を呼ぶという珍しい作品です。
バッド・マイロは、ダンカンのネガティブな感情が具現化したモンスターで、ひとたびキレると鋭利な牙を剥く獰猛な生き物。しかし、彼がキレるのは、大好きなパパ=ダンカンのストレスの元凶を 始末する必要に駆られた時…。そんな一途な行動原理に加え、蛙に似た円ら(つぶら)な瞳を潤ませて ダンカンに甘えようとするコトもあるマイロは、不気味でいて愛嬌たっぷりの“キモカワイイ子”。ダンカンの肛門内に戻りたくてモゾモゾする帰巣本能など、いとおしくさえ見えてくるから不思議です。牙を剥く凶暴な顔も、昔、僕の愛犬 ジョンが、僕を守ろうと 侵入者に向かって見せた凄まじい形相を 想い出させてくれました。
R15+の映倫指定は 殺人場面があるためで、お子様方には少々刺激が強いかも…。But、脚本家も監督も出演者も、良識をキープしつつベストを尽くした仕事ぶりに、僕は拍手を贈りたい程でした。

 

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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