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2012.3.5

大高博幸の美的.com通信(91) 『ヘルプ』 見逃すべからず!! 試写室便り No.22

いまを生きる全ての人に贈る、勇気と感動の物語。
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
(原題=The Help)

3月31日(土)から全国ロードショー。
詳しくは、Help-movie.jpへ。

エクセレント・ピクチュアー。コレは正真正銘の優秀作です。僕は観た日から、知人・友人たちに「絶対オススメ」と言い続けています。こんなコトは滅多にないのですが(去年は『英国王のスピーチ』を多くの人にススメました)、今年はコレをプッシュします。できるコトならば、みんなにチケットをプレゼントしたいくらいです。

実は僕は、試写招待状のビジュアルだけを見て、「適度にハッピーな、女の子受けするミュージカル風の作品?」などと単純に想像していたのですが、それは大きな間違いでした。
『ヘルプ』は決して重々しくはない真実のヒューマンドラマで、ファーストシーンから最後の最後まで、観客をスクリーンに引き込むパワーを有しています。2時間26分という長篇ですが、それは登場人物たちの心理・状況・行動の全てを、説得力を持って描くために必要な長さだったからであり、なくてもいいような場面は1つもなかったと思っています。

舞台は1963年前後のアメリカ南部、ミシシッピ州の町・ジャクソン。ストーリーは、予備知識を余り持たずに観る方がいいような気もしますが、フライヤーの文面を引用すると…、
作家志望のスキーター(エマ・ストーン)は南部の上流階級に生まれ、黒人メイドの存在が当たり前の地域社会で育ってきた。だが、大学から戻った彼女は、白人社会でメイドたち(題名の『ヘルプ』は、ここから来ています)が置かれた立場が、もはや当たり前には思えなくなってくる。そして、身近なメイドたちにインタビューをしようと試みるが、彼女たちにとって真実を語ることは、この南部という地域社会で生きる場所を失うことを意味していた…。
そんなある日、白人家庭に黒人専用トイレの設置(しかも屋外に)を義務付けようと活動するスキーターの女友達(というよりは高校時代の同級生、底意地の悪い女性・ヒリー。演ずるのはブライス・ダラス・ハワード)の家で働いていたミニー(オクタヴィア・スペンサー)が、(家庭用の)トイレを使用したため解雇されてしまう。誰もが口をつぐむ中、ミニーの親友のエイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)が勇気を出して、ついにインタビューに応じた。そしてその小さな一歩は数多くの勇気へと広がり、やがて彼らを取り巻く社会を根底から揺るがす大事件へと発展していく…(カッコ内は大高の注釈です)。

カン違いしてほしくないのは、この映画は社会派映画的なお説教や声高な演説の類い、お涙頂戴的な演出や恐怖心を煽り立てるような描写によって成り立っている作品ではないというコト。ここに描かれているのは、勇気を持って生きるコトの価値(勇気とは、いさましい立ち振るまいを指すのではなく、正しい行ないを敢然とするコト)、真の意味で誇りを持って生きるコトの大切さ、人がどう言おうと、人に何をされようと、信念を貫き通す真っ当な姿の美しさです。

そして同時に重要なのは、’60年代の人種差別に基づく内容でありながら、実は現代の私たちの社会にそのまま通じる話でもあるという点です。この映画に描かれている事実は、日本人同士の間で、会社(or 業界)や地域の人々の間で、今も現実に起きているコトと一緒なのです。この映画の登場人物の誰かにそっくりな人間が、僕やあなたを含めて、みんなの周囲に必ずいる( or いた)はず…。僕がこの映画に引き込まれた第1の理由はそこにあり、ラスト近くで毅然とした行動に出る人たちの姿に溜飲を下げ、拍手したくもなりました。そしてこれから先、自分もそういう姿勢で生きて行こうと、改めて強く思うコトができたのです。

この映画についてはレポートする以上に、観た人たちの話を聞きたいという気持ちです。
唐突ですが、どう生きるかによって、人間の顔は変わります。生来の骨格はほぼ変わらないし、顔立ちにも大きな変化はないでしょう。But、顔つきだけは、生き方or心のありようによって、180度変わってしまうコトだって実際にあるのです。美的.comの読者なら、そのコトに少なくとも気づいているのでは? そして『ヘルプ』を観たなら、その感を一層深くするはずと僕には思えるのです。

この映画は数多くの映画賞にノミネートされ、既に40以上の賞を受けているそうです(2月16日現在)。脚本も演出もストレートな作風が素晴らしく、出演者たちの演技も見事なアンサンブルの上に成り立っているので、ノミネートも受賞も当然の話…。エンディングタイトルに流れるメアリー・J・ブライジの歌もしっかりと聴き、日本語訳の歌詞字幕まで忘れずに読んでください。

皆さん、この映画は見逃さないで。できれば自分自身と向き合うために、ひとりで観に行くコトをオススメします。そして「良かった!」と感じたなら、周囲の人たち、特に心ある人たちにオススメしてください。僕は映画館で、もう一度観てきます。

P.S.1 少々orかなり鈍感で、ヒリーをリーダー格とする元同級生たちからは仲間外れにされてもいるシーリア(ジェシカ・チャステイン)に、僕はとても惹かれました。家事はまるっきりダメだし、頭も決していいとは思えない女性なのですが、感動的なまでの純粋さとサムシングの持ち主で、それが彼女を美しく輝かせる源となっているようです。終りのほうで彼女が夫と共に、ミニーへ感謝の意を表わすというちょっとした場面には、後光が射しているかのような“美”が宿っていました。僕は、コレはスキーターにもミニーにもエイビリーンにも共通して言えるコトですが、シーリアとその夫との永遠の幸福を、心から祈らずにはいられませんでした。

P.S.2 忘れられないセリフの1つは、「ブサイクってのは心の中で育つものよ」。たしか、ミセス・ウォルターズ(シシー・スペイセク)のセリフだったと思いますが、サラリと流すように語られるので、聞き逃さずにいてください。
もう1つ、ある重要な場面で、エイビリーンがヒリーに向かって発するセリフ、「疲れませんか? (そんな生き方を続けていて)疲れませんか?」。コレは弱い立場に置かれているエイビリーンにとっては精一杯の、実に実に素晴らしい一言でした。

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