健康・ボディケア・リフレッシュニュース
2015.5.5

大高博幸の美的.com通信(286) 『ホーンズ』『小さな世界はワンダーランド』『インヒアレント・ヴァイス』『イマジン』 試写室便り Vol.92

ホーンズ-1
(C)2014 The Horns Project, Inc. All Rights Reserved.

恋人殺しの容疑者となった男は、
誰もが真実を語りだす<角(ツノ)>を使って、
真犯人に迫る――。

ホーンズ / 容疑者と告白の角』 (アメリカ=カナダ合作/120分/R15+)
5.9 公開。Horns-movie.jp

【STORY】 恋人を殺され、その容疑者となったイグ(ダニエル・ラドクリフ)。怒りと絶望の日々を送っていたある日、目覚めると頭に2本の角が生えていた。その時から、誰もがイグに様々な秘密を打ち明け始める。イグの角には人に真実を語らせる不思議な力があるのだ。イグは その<告白の角>を使って、最愛のメリン(ジュノー・テンプル)を奪った真犯人を探すことを決意する。人々の露わになった欲望や耳を疑う本音が押し寄せるなか、遂に真犯人の手がかりをつかんだ時、メリンの死の悲しくも切ない秘密が明らかになる――。(プレスブックより)

25歳の青年に成長した『ハリー・ポッター』シリーズの D・ラドクリフが、頭に角が生えるという大胆かつ破天荒なキャラクターに挑んだ ファンタジー・サスペンス。原作は、スティーヴン・キングの息子である ジョー・ヒルの長編小説「ホーンズ 角」(小学館文庫)。監督の アレクサンドル・アジャは、「原作の最もオリジナルな要素を尊重して、J・ヒルの熱狂的なファンを裏切らないようにするコトが 自分の義務だと考えた」と語っています。
映画としては回想シーンの採り入れかたが独得で、僕は そこに一番 感心しました。回想シーンが始まったというコトは明確に分かるのですが、観ているうちに それが回想であるコトを忘れてしまう…。そして元のシーンに戻った瞬間に、「あ、今のは回想だった」と我に返る…。そんなマジカルとも言える部分が数ヵ所にあったのです。
構成としては、前半に少々モタつきが感じられました。イグの角を見た人々が、欲望や本音を露わにするという描写が 必要不可欠とはいえ横道にソレて、ポルノ映画まがいの2~3の場面が目立ちすぎていた感じ(その中で面白かったのは、ポリスの男同士の描写ぐらい)。But、中盤以降、真犯人の姿が徐々に浮かび上がってくるに従って(その真犯人は、あるコトによって、イグの角に気づかない)、ガゼン 興味とスピードを増し始めます。なぜか蛇の一群がイグの味方をする場面なども、気味が悪い以上に不思議なパワーを感じさせました。
D・ラドクリフは、今がキャリアの一番むずかしいところでしょうが、熱のこもった演技を見せています(彼の素顔は 鏡リュージさんに、ますます似てきた感じです)。
脇役ながら、マスコミの脚光を浴びようと 故意に嘘の証言をする美人ウエイトレス役の ヘザー・グラハム(’70年生まれ)が印象的。スリムでセクシーでチャーミングで、28歳前後か、もう少し上でも32歳ぐらいかと思って観ていたのですが、実年齢は43歳と知り、ビックリさせられました(プチ整形などは、していない感じです)。

 

smallworldiswonderland
(C)BBC 2014

大人になるのは一大事。
2匹の子供が初めて挑んだ冒険の旅!

小さな世界はワンダーランド』 (イギリス/44分)
5.9、2D&3D 公開。
wonderland.gaga.ne.jp

【STORY】 神秘的な原生林に住むシマリスと、見渡すかぎり空っぽな砂漠に流れついたスコーピオンマウス。彼らは大人になるために、生まれて初めて家族と離れ、不思議の世界へ歩を進める。そこは、まるで おとぎ話の世界。しかし、このおとぎの国には常にキケンが付きまとう。クマやオオカミ、いのちを狙うハンターたち、さらには 初めて過ごす厳しい冬。彼らの世界を生き抜くこと、そして大人になるのは 一大事。勇気をふりしぼり、確かな一歩を踏み出す、小さいけれど大きな成長ものがたり――。(プレスシートより。一部省略)

初めて目にする不思議な世界…。コレはTOHOシネマズ×BBCアースが贈る<プレミアム・ムービー>第1弾。上映時間44分、中編1本立ての興行で、入場料も 大人(一般・大学生・シニア)が¥1,100、子供(高校生以下)が¥500と イレギュラー(たゞし、3D上映館では別料金)。
興味深いのは、ドキュメンタリー映像がストーリー仕立てになっているコト。僕は シマリスやマウスよりも小さな妖精のパックか何かになって、彼らと行動を共にしている気分を味わいました。生後わずか2ヶ月のシマリスが、冬に備えてドングリを集める姿の可愛らしさ。But、そのドングリがコソ泥にゴッソリ盗まれて大ピンチとなる場面以降、ドキドキしながら目を見開いて観るコトに…。そのシマリスがコソ泥と闘ってドングリを奪い返すシーンや、突然の鉄砲水に襲われた砂漠のマウスが 必死で渓谷を駆け上がるシーンを筆頭として、全編のあらゆる場面が興味をそゝります。
ナレーターは、進境著しい若手俳優:斎藤 工。時に そっと囁くような落ち着いたトーンの語りも、とても素晴らしいモノでした。
小さなお子様と観ても、大人の誰かと or ひとりで観ても、絶対に楽しい1作です。

 

映画『インヒアレント』
©2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC,AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

ヒッピー探偵、元カノの愛人の大富豪を救えるか?
70年代 ポップ・カルチャーに彩られた“グルービー”な世界!

インヒアレント・ヴァイス』 (アメリカ/149分/R-15)
4.18より公開中。www.inherent-vice.jp

【STORY】 L.A.に住む私立探偵ドック(ホアキン・フェニックス)の前に、今も忘れられない元カノのシャスタ(キャサリン・ウォーターストン)が現れる。不動産王で大富豪の愛人になったシャスタは ドックに、カレの妻と その愛人の悪だくみを暴いてほしいと依頼する。だが、捜査に踏み出したドックは殺人の濡れ衣を着せられ、大富豪もシャスタも失踪してしまう。そしてドックは、きな臭い陰謀に引き寄せられていく。果たして、この事件の先に“愛”はあるのか? (試写招待状より)

『ザ・マスター』(通信(145)で紹介)の P・T・アンダーソン監督と H・フェニックスが再びタッグを組んだ探偵サスペンス。フェニックスが愉快なダメ男を大真面目に演じる一方、彼に絡むのが刑事役を演じたらピカイチの ジョシュ・ブローリン。このふたりがユーモアたっぷりでいて、相当 かわいそーに見えてくるところが最高でした。ついでに言うと、フェニックスの今カノ役の リース・ウィザースプーンが非常にカッコいい。テーラードなスーツ、夜会巻きを無造作にアレンジしたようなヘアスタイル、そして他の女優陣の誰よりも流行に左右されすぎないメークをしていて、表情も身のこなしも自然かつ洗練の極み。この三人を目で追うだけで、僕は大満足しました。
少々難解だと感じたのは、その他の登場人物の関係が混み入っているコト。そしてアンダーソン監督作品に付きものの、精神を病んでいる人物たちの背景が、僕には しっくりと伝わってこないコト。But、彼の色彩感覚…、特に 赤・青・若草色の緑の使いかたには、今回もホレボレさせられました。この映画、ヘンにサイケデリックではありませんので、その点は心配しなくて大丈夫。
もうひとつ、日本語字幕が軽快この上なく、実にうまくて面白い。ブッ飛んでいるのに上品さを保っているのは、字幕作者:松浦美奈氏の功績です。

 

映画『イマジン』リスボンの街で出会った盲目の男女は恋に落ちた。
耳をすまして。きっと あなたにも見えるはず――。

イマジン』 (ポーランド=ポルトガル=フランス=イギリス合作/105分)
4.25より公開中。
http://mermaidfilms.co.jp/imagine

【STORY】 舞台は リスボンにある視覚障害者のための施設。そこで新しく教師として働くことになった盲目のイアン(エドワード・ホッグ)は、“反響定位”という方法を使って 白杖を持たずに歩くことができた。イアンは 引きこもりがちだった盲目の美しい女性 エヴァ(アレクサンドラ・マリア・ララ)の心を少しずつ解きほぐし、二人は街へと出かけて行く。そこで二人が聴いた(見た)ものは…。(プレスシートより。“反響定位”とは、音の反響を使って 周囲にあるものの位置や性質、大きさを知覚するテクニック)

試写招待状と幾つかの記事(紹介記事や批評文)に目を通して、僕は「この映画は好きになれないかも…」と思いつつ試写に出向いたのですが、その予想は完全に外れました。最初から最後まで目を見張り、耳を澄まし、全神経を集中して観入ったのです(それでも疲労感は覚えませんでした)。
『イマジン』は全盲の男女を中心に描いた作品でありながら、五感=視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚+想像力を備えた全ての人間と 本質的に共通する要素を備えていて、うまく説明できませんが、僕には もうひとりの自分自身を観ているようにも感じられました。
少しでも気になる“何か”を感じた方には、考えたり迷ったりせずに、自分自身の目と耳で、とにかく じっくりと観るコトをオススメします。
監督は ポーランドの鬼才、アンジェイ・ヤキモフスキ。

 

次回の試写室便りは、『サンドラの週末』『夫婦フーフー日記』等について、5月19日頃に配信の予定です。では!

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
試写室便り等の感想や大高さんへのコメントもどうぞ!
info@biteki.com (個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事