健康・ボディケア・リフレッシュニュース
2015.4.2

大高博幸の美的.com通信(281) 『間奏曲はパリで』『マジック・イン・ムーンライト』『パレードへようこそ』 試写室便り Vol.90

間奏曲はパリで
(c) 2014, Avenue B et Vito Films, Tous droits réservés.

ときには、おひとりさまで “いのちの洗濯”しませんか?
一生 輝き続けたい すべての女性へ贈る、
大人のフレンチ・ラブストーリー。

フランス映画祭 2014で、満員御礼・拍手喝采の大絶賛を博した話題作!

間奏曲はパリで』 (フランス/99分/PG12)
4.4 公開。kansoukyoku.paris.jp

【STORY】 ノルマンディーで農場を営む夫婦のブリジットとグザヴィエ。子供が巣立ってからというものの、穏やかで幸せだけど平凡な毎日。遊び心を忘れないブリジットは、変化をもたらそうと努力をしても、実直で無骨な夫は無関心。ある日、隣家のパーティで出会った魅力的なパリジャン・スタンとの楽しい時間が、彼女の心に火をつける。夫には内緒で、ひとり パリ行きの手配を始めるブリジット。未知なる期待を胸に、人生を変える休日へ出かけるのだった。(プレスシートより)

この映画は、どちらかと言うと目立ちにくいタイプの小品ですが、人間的な優しさと温かさ + 心地よい共感で観客を包み、そっと抱きしめてくれるような優秀作です。
主役の熟年夫婦は 倦怠期の真っ最中。夫婦の危機という程ではないにしても、これから先は 惰性で暮らして行くコトになりそうな気配…。それが あるコトをキッカケとして、or いろいろな経緯を通して、再び お互いを尊重し 愛しあう仲になるという 素敵なお話です。
結末を明かしてしまうコトになりますが、そうなれたのは、ふたりが 出会った頃の恋心を、心の奥に ずーっと持ち続けていたからだというコトが 観ている我々にも 徐々に分かってくる…。そこが この映画の一番素敵なところだと、僕は 僕なりに感じました。そして 長く一緒に暮らしていても 所詮 夫婦は男と女、完全に理解しあえるなんて まず不可能。そこで何よりも大切なのは、相手の心・思いやりに気づくコト、できるだけ相手に対する愛情を行動で示すコト、さらに それを信じ続けるコトだと、この映画は 僕に言い聞かせてくれているようでした。
ブリジット役は、フランスの国宝級女優:イザベル・ユペール。『3人のアンヌ』(通信(158))や『愛、アムール』、そして『ラブストーリーズ』(通信(272))の いずれとも異なるキャラクター = 夢見がちな少女のような感性の持ち主を、ユーモラスかつスマートに演じています。それにしても、彼女の作りモノではない美しさとエイジレスな魅力は 本当に貴重。
夫のグザヴィエ役は、『ル・アーヴルの靴みがき』(通信(96))で、最後に意外な人情味を見せる 冷徹な警部役を スタイリッシュに演じていた ジャン=ピエール・ダルッサン。無骨さの中に、実はロマンティストの一面を秘めているというニュアンスが素晴らしく、I・ユペールとのコンビネーションも絶妙。僕は『ル・アーヴル…』に次ぐ本作で、完全に彼のファンになりました。
脇役では、農場で働いている陽気なレジスという男性(単純そうに見えて、実は深い洞察力の持ち主)と、路上で違法に食料品を売って暮らしている 多分 インド人の青年 アプー(彼は徹底的に純粋無垢)のふたりが非常に印象的で、ストーリーに一層のふくらみと後味の良さをプラスしています。
脚本と監督は マルク・フィトゥシ。寓話とロマンティック・コメディの中間を行く作風、及び 奇をてらわない軽妙洒脱なタッチが秀逸。撮影は全体的に明るく、ノルマンディーの田舎町とパリの名所の数々を、柔らかくも輝くように捉えていました。
PG12の映倫指定は、牛の出産シーンがあるからでしょうか? それはともかく、これは おばさまたちだけに独占させてはいけない作品。皆さん、若い娘のうちに、ぜひ観ておいてください。
P.S. うっかり見落としたりしてほしくないのは、ある名画の “絵はがき” & その“レシート”。それが夫婦を再び強く結びつける キューピット的な役割を、ほとんど偶然に果たすのです。そのワケは、ぜひ映画館で!

 

マジックインムーンライト
(C)2014 GRAVIER PRODUCTIONS, INC. Photo: Jack English (c)2014 Gravier Productions, Inc.

マジシャンと占い師が もつれて、こじれて、瞬間移動!
“魔法とトリック”に誰もが胸弾ませる、ロマンティック・コメディ。

マジック・イン・ムーンライト』 (アメリカ=イギリス合作/98分)
4.11 公開。magicinmoonlight.jp

【STORY】 この世に魔法や超能力など絶対に存在しないと信じる英国人マジシャンのスタンリー(コリン・ファース)が、ある大富豪が入れあげている 米国人占い師の真偽のほどを見抜いてほしいと 友人に頼まれる。すぐさま 自信満々に コート・ダジュールの豪邸に乗り込むスタンリーだったが、その占い師 ソフィー(エマ・ストーン)が連発する驚くべき透視能力に圧倒され、人生観を根底から ひっくり返される。しかし 容姿も性格も抜群にチャーミングな彼女に、不覚にも魅了されてしまい…。(試写招待状より)

『ブルージャスミン』(通信(218))に次ぐ ウディ・アレンの最新作は、『ミッドナイト・イン・パリ』(通信(105))の路線上にある ロマンティック・ラブ・コメディ。舞台は 1928年の南フランス。そして主演は 本作が初顔合わせとなる コリン・ファースと エマ・ストーン。それだけで興味津々、胸が ときめいてしまうエンターテインメント。
カラフルな画面は 時間と太陽光線の関係までキメ細かく計算され、撮影後に色彩調整が施されているのか、特に外景シーンは驚くほど色鮮やかで美しい。音楽は、場面転換時に チャールストンをはじめとするポピュラーソングや軽音楽が使われている上、その音に 78回転レコード特有の針音と 蓄音機のモーター音を微かに重ねるという、アレン作品ならではの芸の細かさ。
出演者 No.1は、ハツラツとした若さを自然に振りまく エマ・ストーン(彼女の出演作については、通信(91)に『ヘルプ〜心をつなぐストーリー』、通信(151)に『L.A. ギャングストーリー』の紹介あり)。’20年代のファッション、特に帽子の数々が全て似合っていて(ベストは 御曹子との ディナーシーンで被っていた 紫色の帽子)、しかも楽し気に演じている姿が 今まで以上にチャーミング。
コリン・ファースは、中国人のメークと扮装で登場する奇術のステージシーンが見せ場のひとつ。ところが、どうしたコトか、今回は全篇を通して目の輝きが弱く、キャメロン・ディアスと共演したドタバタ喜劇『モネ・ゲーム』(通信(151))と比べて、元気がないように見えました。
さらに脇役陣は、ヴァネッサ叔母さん役のアイリーン・アトキンスを除いて魅力に乏しく、特に大富豪の親子に ’20年代の富豪らしさが感じられなかった点は相当残念。アレン一流の ひねりの面白さも いまひとつで、『ミッドナイト・イン・パリ』の痛快さとイメージの広がりの豊かさには及ばないという印象…。
要するに僕は、期待に胸を膨らませすぎていたのです。
But、それでも観ずにはいられない作品であるコトは 絶対に確か。水遊びする海辺や美しい庭園の場面、雨に降られて ズブ濡れになったふたりが逃げ込む 天文台の場面、月明かりの下でのダンスパーティの場面etc、もう一度 観たくなる場面なら 幾つも幾つもありました。

 

© PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.
© PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.

英国サッチャー政権下、境遇の違う人々をつないだ 深い友情と感動の実話。
不況と闘うウェールズの炭坑労働者に手を差しのべたのは、ロンドンの LGSM(ゲイの活動家)の若者たちだった!

パレードへようこそ』 (イギリス/121分)
4.4 公開。www.cetera.co.jp/pride

【STORY】 1984年、サッチャー政権下の荒れるイギリス。始まりは、ロンドンに住む一人の青年のシンプルなアイデアだった。炭坑労働者たちのストライキに心を動かされ、彼らと その家族を支援するために、仲間たちと募金活動を始めたのだった。しかし、全国炭坑組合に何度電話しても、寄付の申し出は無視される。理由は一つ、彼らがゲイだから。炭坑組合にとって、彼らは別世界の住人でしかないのだ。そこへ、勘違いから始まって 唯一受け入れてくれる炭坑が現れる! 寄付金のお礼にと招待された彼らは、ミニバスに乗って ウェールズ奥地の炭坑町へと繰り出すのだが――。(プレスブックより)

つまらないかも…と思いつつ観に行ったのですが、あきれたり、笑ったり、感じ入ったりを繰り返しながら、ラスト直前で ドカンと胸を突かれ、一気に あふれ出した涙で 一瞬 画面が かすんでしまいました。これは誤解や先入観や衝突を乗り越え、いわば両極端な境遇の ふたつのグループが、手を取りあって未来を切り開こうとするまでを描いた リアルなコメディです。
僕が特に感動したのは、① 偏見とは無縁の炭坑の代表者:ダイというオジさんが、大勢の仲間を前にして「皆さんがくれたのは、お金ではなく友情です」と熱く語る場面、② 丸々と太った町の一主婦が、LGSMのメンバーに 体を張って味方する場面、③ LGSMのリーダー格のジョナサンの 情熱的で男性的なダンスが、町の若者たちの心を動かす場面(その辺りから、ごく一部の偏屈な人間を除いて、みんなの心が融合して行くプロセスが映し出されます)、④ そしてラストの、ドカンと来るクライマックス。
本作は、2014年のカンヌ国際映画祭 クィア・パルム賞を皮切りに、ブリティッシュ・インディペンデント・フィルム・アワードの3賞等々を受賞。ロッテントマトでは、批評家94%、観客93%という高い満足度を記録。イギリスを代表する名優たちの味わい深い演技と、若手俳優たちの真摯な熱演に、あなたもノックアウトされてください。

 

次回の試写室便りは、ディズニーの実写版『シンデレラ』について、4月14日頃に配信の予定です。では!

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
試写室便り等の感想や大高さんへのコメントもどうぞ!
info@biteki.com (個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事