【医師に訊く】呼吸が浅い、息苦しい人のための「呼吸法」改善術
呼吸が浅い、息苦しい…そんな人は免疫力が低下して、肺がお疲れモードかも。肺は機能の低下を自覚しづらい面が。免疫力をアップしたり、疲れにくい体になるために、基本の「呼吸法」をマスターしましょう!また「深い鼻呼吸」をする習慣をつけましょう!ダイエット効果も期待できますよ。
「呼吸が浅くなる」3つの原因
【1】免疫力が下がっている
息切れが多いのは、肺からのSOS。まずは呼吸の改善から
肺は「沈黙の臓器」と呼ばれ、機能の低下を自覚しづらい面が。
「我慢強い肺がSOSのサインを出すのが呼吸です。日常生活で息切れをすることが多ければ、肺も疲れ気味。特にストレス過多で免疫力が下がっている人は、呼吸が速く浅く、ちょっとしたことでも息切れしてしまいます。そのままだと肺へのダメージが蓄積しやすくなるので、呼吸法から改善を!」(奥仲先生・以下「」内同)
【2】スマホやPC作業の時間が長い
「スマホやPC作業の時間が長い人は、姿勢が前かがみになりがち。それだと胸郭が縮まって、呼吸が浅くなります。気づいたときにすぐ姿勢を正し、深く鼻呼吸する習慣をつけましょう。免疫力UPやダイエット効果も期待できます」
“巻き肩”姿勢は呼吸を浅くする
スマホに夢中になっていると、自然と前傾姿勢に。横隔膜をはじめ呼吸筋がほとんど動かず、呼吸が浅くなる。
【3】マスク生活
コロナ感染対策で続くマスク生活。息苦しさからつい口呼吸や浅い呼吸になりがちです。
「まずマスクでウイルスの侵入を完全に防ぐことはできません。その上口呼吸だと、ウイルスがダイレクトに肺に届きやすくなります。そのため、マスク装着時も鼻呼吸を意識するのが◎。息苦しくならない素材のマスクを選ぶ工夫も必要です」
呼吸のメカニズム
浅い呼吸が肺の力を弱らせる
「鼻や口から取り込んだ空気は、気管を通って左右の肺へ。さらに気管支を通って先端の肺胞へ運ばれます。末端の肺胞では、酸素を取り込んで、二酸化炭素を排出する『ガス交換』が行われていて、私たちはそのガス交換によってエネルギーを代謝し、生命を維持しています。
ところが、呼吸力や肺活力が低下していると、ガス交換も不充分。体内の酸性とアルカリ性のバランスが乱れ、頭痛やめまい、過呼吸などの症状につながることもあります。しかもそういったタイプは、しっかり息を吐き切る深い呼吸を指導しても、簡単にはできません」
深い呼吸ができない理由
「呼吸をつかさどる器官は肺ですが、肺には筋肉がないため、周辺にある20種類以上の筋肉(=呼吸筋)の力を借りて呼吸運動を行います。呼吸力や肺活力の低い人は、この呼吸筋が固くこわばっていて、可動域が狭く、深い呼吸をしたくてもできないのです。」
横隔膜を動かすことで呼吸を深める
呼吸筋のメインは横隔膜。息を吐くときは横隔膜が上がって肺がしぼみ、吸うときは横隔膜が下がって肺が膨らむ。
「ただし、無意識に行う胸式呼吸では、横隔膜はほとんど動きません。呼吸は、腹筋や肋間筋などそのほかの呼吸筋を使って意図的に横隔膜を動かし、鼻で吐く・吸うをゆっくりと実践することで、ぐっと深まります」
呼吸が浅い…「肺のお疲れ度」セルフチェック
普段の生活で“息苦しさ”を感じるときをチェックしてください。
- (1)少し急ぎ足で歩いているとき
- (2)長めの階段を上るとき
- (3)急いで着替えをしているとき
- (4)シャンプーをしているとき
- (5)大きな声でしゃべっているとき
- (6)怒ったり、泣いたりしているとき
\以下で当てはまる項目にもチェックを/
- (7)気づくと口で呼吸している
- (8)スマホやPC作業で前かがみの姿勢が長い
- (9)ストレスを感じることが多い
(1)~(6)にひとつでも当てはまれば、あなたの肺は疲れ気味。
多い程、深刻度が増します。(7)~(9)に当てはまるのは“肺活力”が低下しやすい人です。
浅い呼吸を治す「呼吸法」2選
【1】基本の呼吸法
「横笛呼吸」で“吐き切る”感覚をつかむ
【Step.1】口から息を長く吐く
口から息を長く吐く
リラックスした姿勢で口を横に広げ、薄く唇を開く。10~15秒かけて息を吐き、吐き切ったところからさらに吐く。すべて吐き切って。
【Stpe.2】鼻から息をゆっくり吸う
吐き切ると自然に空気が入ってくるが、慌てずに5~6秒かけてゆっくりと鼻から息を吸う。
この吐く、吸うを4~5セット繰り返す。
「鼻呼吸」で横隔膜をしっかり動かす
【Step.1】鼻から息を吐き切る
リラックスしてイスに座り、横隔膜を意識しながら7~8秒かけて鼻から息を吐く。吐き切ったところでさらに吐き、すべて吐き切る。
【Step.2】鼻から息をゆっくり吸う
吐き切って自然に入ってくる空気を、慌てずに5秒くらいかけてゆっくりと鼻から吸う。この吐く、吸うを4~5セット繰り返して。
【2】いつでもどこでも姿勢を正して「鼻呼吸」
前かがみの姿勢が続いたら、肩を回してリセット
【Step.1】腕を下ろして肩を上げる
巻き肩に気づいたときは、まず両肩を上げ、後ろに向けてぐるりと回し、ストンと落とす。
【Step.2】前から後ろにぐるりと回す
胸を開いて姿勢を正し、鼻からゆっくりと息を吐き、ゆっくりと吸う。
【Step.3】胸を広げて姿勢をまっすぐ
信号待ち、エレベーター待ち、レジ待ち…そのタイミングで鼻呼吸
「意図的に深い鼻呼吸をする(随意呼吸)機会を増やすだけでも有効な肺トレに。信号待ち、レジ待ちなど、私たちの日常には、足を止める瞬間が何度もあります。そのタイミングに深い鼻呼吸をする習慣をつけましょう。文字どおり「呼(吐く)」が先で、「吸(吸う)」が後。腹筋を使ってしっかりと吐き切ると、オキシトシンやエンドロフィンなど幸せホルモンが分泌されて、心も落ち着きます」
スローテンポの鼻ハミングで“鼻呼吸力”を強化
「口を使わず、鼻だけで呼吸するトレーニングに、『鼻ハミング』がおすすめです。無意識に出てしまう軽い鼻歌ではなく、意識的に大きい音を奏かなでること。最初は、童謡の『うみ』や『チューリップ』、『ぞうさん』など、短い曲から試しましょう。10秒は息継ぎを我慢して、なるべくゆっくりしたテンポでチャレンジ。思った以上に呼吸筋を使うため、1曲終えるとかなり達成感があります」
呼吸を深める「ストレッチ」
呼吸筋をほぐすストレッチ
「横隔膜の働きを促し、肺機能全体を高めるためには、こわばった呼吸筋をほぐし、可動域を広げることが大切です。普段使わない筋肉をしっかり伸ばすようにしましょう。横隔膜と連動して『吐く力』をサポートする骨盤底筋のトレーニングも忘れずに」
「ボールを抱えた風ストレッチ」で横隔膜を大きく動かす(1分×1セット)
【Step.1】両腕で大きなボールを抱えるポーズ
両足を開き、両腕でボールを抱えるように輪を作る。鼻からゆっくりと息を吐きながらひざを徐々に曲げ、背中を丸めて腰を落とす。
【Step.2】両腕を前に伸ばす
ボールを抱えるポーズのままゆっくりと両手を前に伸ばし、10秒かけて鼻から息を吐き切る。息をゆっくり吸いながら【Step.1】に戻る。
【Step.3】上半身を右にひねる
10秒かけて鼻から息を吐きながら、上半身をゆっくりと右方向にひねる。息をゆっくり吸いながら【Step.1】に戻る。
【Step.4】上半身を左にひねる
10秒かけて鼻から息を吐きながら、上半身を左方向にひねる。息を吸いながら【Step.1】に戻る。
「鎖骨回しストレッチ」で肩胛骨を柔軟に(30秒×1セット)
【Step.1】両手を鎖骨に当てる
正面を向いて、両手を鎖骨の上へ。腕はリラックスさせておく。
【Step.2】両ひじを大きく回す
鎖骨につけた手を起点にして両ひじを上げ、外側に大きく1~2回回す。肩胛骨周りの筋肉を動かすように意識。同様に内側にも回す。
「肋間筋ストレッチ」で胸郭をほぐす(1分×1セット)
【Step.1】左手を後頭部、右手を腰に
イスに深く腰かけて背筋を伸ばし、左手のひらを後頭部に当てる。右手は腰をつかむ。
【Step.2】ひじを上げて上半身を倒す
鼻から息をゆっくり吐きながら、上半身を右横に倒す。左手のひじを高く上げ、肋間筋をしっかり伸ばす。伸び切ったところで少し息を止め、息を吸いながらゆっくりと【Step.1】に戻る。
【Step.3】反対側も同様に
手を替えて、同様に右側の肋間筋をストレッチする。
「ハンモック筋ストレッチ」で骨盤底筋をトレーニング(10秒×10セット)
【Step.1】あお向けに寝る
あお向けに寝て両手のひらを床へ。両足は軽く開き、ひざを90度曲げる。
【Step.2】お尻をもち上げて、肛門を締める
鼻から息を吐きながらお尻を少しもち上げ、頭の方へお尻を引きつけるイメージで肛門をキュッと締める。
【Step.3】お尻を下げて、肛門を緩める
息を吸いながらお尻を下げ、肛門を少しずつ元の位置に戻すイメージで緩めていく。お尻が床につき、おなかの筋肉が緩んだら、もう一度鼻から息を吸う。
呼吸をサポートするアイテム 2選
【1】SHIGETA ボディー・マインド・スピリット
- 心の緊張をほぐす、ゼラニウムやカモミールをブレンドしたオイル。
- 眠る前に手首につけて深呼吸をすると、呼吸のリズムが整い安眠できます。
価格 | 容量 |
---|---|
¥6,600 | 15ml |
【2】バンフォード b SILENT ピローミスト
- 寝る直前まで仕事をしていても、この香りをかぐと即オフモードに。
- ラベンダーやマジョラムの香りは、思わず深呼吸したくなる程、穏やかな気持ちになれます。
価格 | 容量 |
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¥4,180 | 50ml |
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
呼吸器外科医。医学博士。東京医科大学病院勤務を経て現職。専門は肺がん治療。メディア出演も多く、わかりやすい解説に定評がある。著書に『医者が教える肺年齢が若返る呼吸術』(学研プラス)など。