呼吸力や肺活力の低下で頭痛やめまい、過呼吸も…肺トレの基本の呼吸法をマスター!
感染症を重症化させないためだけでなく、免疫力をアップしたり、疲れにくい体になるために、まずは肺の働きと呼吸の関係を学びましょう! 詳しいお話を呼吸器専門医の奥仲哲弥先生に教えてもらいました。
息を吐き切らない浅い呼吸が肺の力を弱らせる
「鼻や口から取り込んだ空気は、気管を通って左右の肺へ。さらに気管支を通って先端の肺胞へ運ばれます。末端の肺胞では、酸素を取り込んで、二酸化炭素を排出する『ガス交換』が行われていて、私たちはそのガス交換によってエネルギーを代謝し、生命を維持しています。
ところが、呼吸力や肺活力が低下していると、ガス交換も不充分。体内の酸性とアルカリ性のバランスが乱れ、頭痛やめまい、過呼吸などの症状につながることもあります。しかもそういったタイプは、しっかり息を吐き切る深い呼吸を指導しても、簡単にはできません」(奥仲先生・以下同)。
その理由とは?
「呼吸をつかさどる器官は肺ですが、肺には筋肉がないため、周辺にある20種類以上の筋肉(=呼吸筋)の力を借りて呼吸運動を行います。呼吸力や肺活力の低い人は、この呼吸筋が固くこわばっていて、可動域が狭く、深い呼吸をしたくてもできないのです」
肺の先端「肺胞」で、命を支える「ガス交換」が行われている
気管を通って肺に入った空気は、気管支の中を進んで先端にある肺胞まで送り届けられる。ブドウのような形の肺胞はわずか0.1mmサイズ。ここで、(1)空気中の酸素を取り込んで毛細血管に送り、全身の細胞に運ぶ、(2)毛細血管から運ばれてきた二酸化炭素を肺へ送り、呼気と共に体外へ排出する、ふたつの重要な役割を果たす。
肺の周囲の筋肉「呼吸筋」が連動し、横隔膜を上下させることで呼吸が深まる
呼吸筋のメインは横隔膜。息を吐くときは横隔膜が上がって肺がしぼみ、吸うときは横隔膜が下がって肺が膨らむ。
「ただし、無意識に行う胸式呼吸では、横隔膜はほとんど動きません。呼吸は、腹筋や肋間筋などそのほかの呼吸筋を使って意図的に横隔膜を動かし、鼻で吐く・吸うをゆっくりと実践することで、ぐっと深まります」
横隔膜をしっかり動かすには、「随意呼吸」が必要!
呼吸は、無意識に行われる「代謝呼吸」、意識的に行う「随意呼吸」、心の変化に伴って変わる「情動呼吸」に分けられる。それぞれが脳幹、大脳皮質、大脳辺縁系といった脳の呼吸中枢によってコントロールされている。
肺トレを始める前に、基本の呼吸法をマスター
【Step 1】「横笛呼吸」で“吐き切る”感覚をつかむ
口から息を長く吐く
リラックスした姿勢で口を横に広げ、薄く唇を開く。10~15秒かけて息を吐き、吐き切ったところからさらに吐く。すべて吐き切って。
鼻から息をゆっくり吸う
吐き切ると自然に空気が入ってくるが、慌てずに5~6秒かけてゆっくりと鼻から息を吸う。この吐く、吸うを4~5セット繰り返す。
「鼻呼吸」で横隔膜をしっかり動かす
鼻から息を吐き切る
リラックスしてイスに座り、横隔膜を意識しながら7~8秒かけて鼻から息を吐く。吐き切ったところでさらに吐き、すべて吐き切る。
鼻から息をゆっくり吸う
吐き切って自然に入ってくる空気を、慌てずに5秒くらいかけてゆっくりと鼻から吸う。この吐く、吸うを4~5セット繰り返して。
『美的』2020年10月号掲載
撮影/鈴木希代江 ヘア&メイク/木村三喜 スタイリスト/日置 彩 モデル/夏海 構成/つつみゆかり
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
おくなかてつや/呼吸器外科医。医学博士。東京医科大学病院勤務を経て現職。専門は肺がん治療。メディア出演も多く、わかりやすい解説に定評がある。著書に『医者が教える肺年齢が若返る呼吸術』(学研プラス)など。