美的GRAND
健康・ヘルスケア
2022.7.2

【biiku】まずは「お母さんが」幸せでいてほしい!産婦人科医・高尾美穂先生インタビュー(第4回/全4回)

産婦人科医・高尾美穂先生による「今、ティーンのお母さんに伝えたいこと」最終回は、親子で知っておきたいデジタル時代のサバイバル術と、忙しいお母さんゆえ見失いがちな「人生のボリューム配分」について伺います。

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デジタル全盛期、「偏った情報の沼」に注意を

2年程前に始めた「高尾美穂のパーソナル人生相談室」には、思春期の子供との関係に悩んでいるというお母さんもいらっしゃり、中には大変なケースもあります。しかし、決して全体像ではないものの、今の子供たちは空気を読むのがうまく、「さとり世代+α」だと感じますね。そして、デジタルネイティブといわれる通り、大量の情報を取り込んで活用する術にも長けています。
ところが、SNSだろうとニュースサイトだろうと、インターネットを経由する情報は、手元に届くときにはすでに偏っているものです。自分で取捨選択しているつもりでも、アルゴリズムによって「あなた好みに仕分け済み」。そもそも私たちには、「見たいことを見たい」「聞きたいことを聞きたい」という欲求があるので、“沼の中”はとても心地いいのですが、どっぷりとハマるうちに「目の前の情報が唯一の正解」と信じるようになってしまいます。

発信には意図がある。信じていいのかな?と一歩引いた感覚を持って

私は毎朝、新聞を読みます。ひとえに「興味のないこと」を手に入れたいからです。思ってもみなかった記事は、まさしく未知との出会い。“私好み”の話題をセレクトしてくれるニュースサイトがある時代に、わざわざ「紙の新聞」を読むのに似て、多感な子供のうちに「まんべんなく勉強する」ことは大切だと思います。デジタル上でしか情報収集をしなければ、知らぬ間に偏った情報にとらわれてしまう可能性があります。
そして、私は常々「発信には意図がある」とお話ししています。例えば、同じ話題でも、新聞によって見出しや論調が異なりますよね。情報操作とまでいわずとも「記者の考え」が含まれていると認識するべきでしょう。その新聞の情報について、フランス人は7割、日本人は9割以上を信じるといいます。国民性の違いはさておき、SNSyoutubevoicyの情報はどうでしょう? みなさんは知りたいことがあるとき、検索結果のサムネイルから、よさそうなものを選びますよね。そのとき、この情報はどこまで本当だろう? と疑う気持ちはありますか? はなから「信じる」スタンスで情報を取りに行っては、二重三重のバイアスにとらわれる可能性があります。美容・健康から医学的なことまで、特にデジタルネイティブの子供たちには、この落とし穴に十分に気をつけてもらいたいと思います。

困ったときは「なんでだろう?」と自分に問うクセづけを

“悩みはスマホに聞け”という時代ですが、検索の前にまずは自分に目を向けてほしいと思います。例えば、調子が悪い、モヤモヤする…なんでだろう?と、自分なりに思いつく理由を探してみましょう。よく眠れなかったから、生理前だから、そんなレベルでいいのです。自分なりの理由が思いつき、それが続くようなら、対策を考えてみる。逆に、理由が思い当たらないなら、そう長くは続かないかもしれません。くよくよ心配する必要はないでしょう。
検索すれば即、解決策“らしいもの”が出てくるからこそ、自分自身で「なんでだろう?」と考えるクセを、つまりは自分を見つめる習慣をもってほしいですね。人生に悩みは付き物ですが、どれも自分の身に起きていること。体のことを含め、自分に関心がもてないようでは、なかなか解決に近づけないと思いませんか?

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子供はお母さんを見ています。だから、お母さんには幸せでいてほしい!

そんなことを考えると、お母さんには、幸せでいてほしい

子供を育てたことがない私だから言えると思うのですが、子供は「よく見て」います。お母さんが幸せそうじゃないと、子供は幸せに暮らせないと感じます。大人になるってこんなに素敵なことだよ、自分でお金を稼いで自由に使えて、まあちょっと面倒くさいときもあるけど、かわいい子供がいて…と、お母さんが「一人の人」として、いきいきと人生を楽しむ姿を子供に見せてあげてほしいと思います。
お母さんとは、子供、家庭、仕事と、自分以外のことに人生のボリュームを割きがちです。そんなこと言われても…と感じるかもしれませんが、「自分の人生」を楽しめているか、考えてみてください。子育てとは人間を育てること。素晴らしくもあり、大変です。でも、それが永遠に続くわけではないし、“お母さんとして、こうあるべき”と思い込んでいるのは、ひょっとするとまぎれもない自分なのかもしれません。
5年後10年後の自分を具体的にイメージして、今日から人生のボリュームをチューニングしませんか?「今はあなたを育てる時間が最優先。でも、5年後10年後には、あなたも成長するし、私はこうしたいと思っているの」そんなふうに子供にも伝えることができたら、親子としてばかりでなく、「人と人」として、新しいつながりを育むことができると思うのです。

>>第1回はこちら 最新生理事情を母娘で学ぼう
>>第2回はこちら いちばんシンプルな「生理の説明」、教えます!
>>第3回はこちら 「悩みを話せる大人」という存在を

高尾美穂:産婦人科専門医。医学博士。婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。女性の体特有の問題を明解な語り口で解説するなどメディアや講演会でも活躍するほか、ヨガの指導者としても活動。『いちばん親切な更年期の教科書』(世界文化社)、『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)ほか著書多数。

高尾美穂先生 公式HP https://www.mihotakao.jp/
Instagram @yoginidr_miho
Twitter @mippolin78

 

美的GRAND 2022年春号掲載
構成/佐野有子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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