美的GRAND
健康・ヘルスケア
2022.6.25

【biiku】かかりつけ婦人科医、その前に「悩みを話せる大人」という存在を。産婦人科医・高尾美穂先生インタビュー(第3回/全4回)

各種メディアで、ポジティブなメッセージを発信する産婦人科医・高尾美穂先生による「今、ティーンのお母さんに伝えたいこと」。第3回目は、いまどきのティーンを取り巻く環境から見えてくる、生理の悩みへの“リアルな”提案です。

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私が教育関係者向けに積極的に講演をする理由

以前から、メディアの取材のほかに、中学・高校の保護者会にはじまり、大学の講義、教育関係者向けの研修会…多くの講演依頼があります。コロナ禍でオンライン講演が可能になったこともあり、できうる限り、お引き受けしています。
特に、卒業生の4割が保健体育の教員になる体育大学での講義や、都道府県の体育協会の研修会は積極的に行っています。理由はただひとつ、保健体育の先生に、授業で話す“ネタ”を提供したいからです。
ご存じの通り、科学や情報、金融…学校教育は、時代のニーズに合わせ改訂されます。ところが、性教育を含む保健体育はほとんどアップデートできていないように感じます。世間では、多様性が説かれ、ジェンダー教育への関心が高まっていますが、教育現場では、何をどう教えるべきか、具体的な方針が定まらず、お困りの先生がたもおられるのではないでしょうか。また、ひとたび「先生」になってしまうと、外から新しいアイデアを吸収する機会も限られてしまうものです。
そもそも抵抗感のある性の話。先生が、時代に合った知識やスムースな伝え方を知らず、実生活でも出産や子育てといった体験がなければさらに…教育者とはいえ、子供たちに“響く”授業をするのは難しいでしょう。
そんな実情をなんとかしたいと講義を引き受けているわけですが、裏を返せば、“今の”保健体育の授業にはそこまで期待できないかも、ということです。

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思春期の子供たちの素朴な疑問。「誰に聞けばいいですか?」

中学や高校での講演会は、2部構成になることが多いです。前半は、子供向けで、必ず生理周期の話をします(第2回「いちばんシンプルな生理の説明」参照)。これは、お母さんにも必ず知ってほしい基本のお話なので、一緒に聞いてもらいます。後半はお母さん向けで、更年期の話題になることがほとんどです。
講演後の質問タイムは、親子を分けて行います。子供からの質問で最も多いのが、「生理のことで困ったときは、誰に相談すればいいですか?」「お母さんに聞くと、お母さんの意見を押し付けられるのがイヤ。保健室の先生に聞けばいいですか?」。
この質問には、保健室や保健体育の先生に相談するのは、もちろんアリですが、「保健室の」「保健体育の」と区切らず、「自分が信頼できると思う大人」に聞いてみるのもいい、と答えています。核家族化が進んでいる今、親戚のお姉さんでも学童や習い事の先生でも、家の外に信頼できる大人がいるのは、さまざまな意味で心強いと思います。

10代のうちから「かかりつけの婦人科をもつ」のは、正直、現実的ではない

ここ最近、「若いうちから、かかりつけの婦人科をもとう」といった記事を見かけることがあります。もちろん、生理痛が重くて勉強や部活動に支障が出たり、生理周期に不安があるといった場合は、迷わずに婦人科を受診するべきです。でも、そこまで苦労せず生理と付き合えているなら、初経が来たからと、即かかりつけ医を決める必要はないでしょう。
それというのも、婦人科クリニックが集中し、アクセスしやすいのは都市部のみ。多くの地域では、主に妊婦さんを対象とする産婦人科が中心で、昨今ニュースになっている通り、その産婦人科自体、決して多くはありません。さらには、10代の心理を考えれば、妊婦さんに交じって診察を待つこと自体、ハードルが高いですよね。子供向けの講演でも、高校生には、相談先の選択肢のひとつとして婦人科を提案しますが、中学生の場合は、まずはお母さん、お母さんに話しにくければ信頼できる大人に相談を、と伝えています。

>>第1回はこちら 最新生理事情を母娘で学ぼう
>>第2回はこちら いちばんシンプルな「生理の説明」、教えます!

高尾美穂:産婦人科専門医。医学博士。婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック『イーク表参道』副院長。女性の体特有の問題を明解な語り口で解説するなどメディアや講演会でも活躍するほか、ヨガの指導者としても活動。『いちばん親切な更年期の教科書』(世界文化社)、『心が揺れがちな時代に「私は私」で生きるには』(日経BP)ほか著書多数。

高尾美穂先生 公式HP https://www.mihotakao.jp/
Instagram @yoginidr_miho
Twitter @mippolin78

 

美的GRAND 2022年春号掲載
構成/佐野有子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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