身を落ち着かせる「マインドフルネス」と「呼吸法」とは?【女医に訊く#202】
パニック障害の克服には、薬物治療のほかにも、ライフスタイルの見直しやストレスマネジメントが大切です。精神科専門医の松島幸恵先生に、心身を落ち着かせる「マインドフルネス」と「呼吸法」について教えていただきました。
パニック障害を克服するには?
「パニック障害は薬物の反応性が非常に高いといわれています。もちろん繰り返してしまう方もいらっしゃいますが、比較的治りやすい疾患です」と話すのは、精神科専門医の松島幸恵先生。
「パニック障害の克服には、正しい知識を得て、ライフスタイルをちょっと見直して、ストレスをどうやってマネジメントしていくかが大切です。そこでおすすめしているのが、マインドフルネスと呼吸法です」(松島先生)
自分に対する理解が深まる「マインドフルネス」とは?
マインドフルネスとは、「心を今、ここに向けた状態」にすることで心を整えるストレスマネジメント手法。今、ここに意識を向けたとき、その気づきに対して、良い悪いの判断を一切せず、今の感覚をただ受け止めるようにします。
今回は、隙間時間を使って行えるマインドフルネスのエクササイズ(思考の実践)を松島先生に教えてもらいました。
「人間の想像力はとても強力ですよね。例えば、『ピンク色のゾウさんを想像しないでください』と言われると勝手に想像してしまいます。嫌なことが流れていくという想像することで、頭の中でぐるぐる考えることから逃れることができるのです」(松島先生)
嫌なことを繰り返し考えないようにすることは、ストレスの軽減に役立ちます。嫌なことを繰り返し考えてしまうようだったら、このエクササイズをやってみましょう。
【流れに漂う葉っぱ】
1)あなたはゆったりとした川の傍らに腰を下ろして、葉っぱが流れていくのを眺めています。
2)ここで自分の考えや思いに意識を向けてください。
3)頭に浮かんだ考えや思いを、それぞれ1枚の葉っぱに乗せて、流すようにしましょう。
4)ここでの目的は、あなたが流れの傍らにいること、そして、葉っぱを流れ続けさせることです。
5)もし葉っぱが消えたり、意識がどこかよそに行ったり、あなたが川に入ったり、葉っぱと一緒に流れていることに気づいたら、一度中断して、なにが起こったのかを観察しましょう。
6)そしてもう一度、流れの傍らに戻って浮かぶ考えを観察し、それらをひとつずつ葉っぱに乗せて、流れさせてみましょう。
なぜストレスマネジメントに「呼吸法」が大切なの?
「ストレスマネジメントには、呼吸法も大切です。過呼吸症候群の方もそうですが、息が吐けなくなると不安が惹起されてしまいます。パニック障害は自律神経症状といわれる身体的な基盤が大きいため、呼吸の乱れがパニック発作を誘発することもあると考えられるのです」(松島先生)
わたしたちの心身の状態は、自律神経によって調節されています。自律神経は、心身を緊張させる交感神経と、心身を弛緩させる副交感神経により成り立っています。
「自律神経系は運動神経などとは異なり、自分の意志で調節することはできません。しかし、呼吸法により一定の調節ができるようになるのです」(松島先生)
通常、息を吸うときには交感神経が刺激され、息を吐くときに副交感神経系が刺激されます。呼吸法はこのような呼吸に伴う生理的現象を応用したもの。つまり、息を吐くことを主とした呼吸により副交感神経系を刺激し、交感神経系の過剰な緊張を緩める効果を狙ったものです。
【ストレスによる不安や緊張への抵抗力を強くする呼吸法】
1)椅子に楽に腰かけ、全身の余分な力を抜きます。
2)へそ下の下腹部正中(丹田)に、ひとつの風船が入っているとイメージします。
3)口を閉じて、鼻から細く長くゆっくりと息を吐き(1から6〜8まで数えるくらい)、おなかの風船を凹ませます。
4)息を吐き終えたら、そのまま1拍おきます(2数えるくらい)。
5)出した分の空気を力まず楽に鼻から吸いながら(1から3〜4と数えるくらい)、おなかの風船を再び膨らませます。
6)以上のような行きの出し入れを、息が苦しくならない程度の自分に合った楽なリズムと数で10分間程度続けます(アラームなどは使用しない)。
7)終わったら腰かけたままで軽いストレッチ(両腕を上に伸ばす、首を回すなど)を行い、目を開けます。
「この呼吸法は原則として朝・昼・夕の1日3回行ってください。ポイントは吸う息と吐く息の比率を1:2にすること。パニックや過呼吸の際にも、呼吸法を行うことで心身を落ち着かせることができますよ」(松島先生)
文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
池袋オリーブメンタルクリニック院長。精神保健指定医。精神科専門医。日本医師会認定産業医。日本医師会認定健康スポーツ医。