健康・ヘルスケア
2020.6.3

新型コロナウイルスへの不安は続くのか…ストレスや不安を受けるとどうなる?【女医に訊く#110】

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私たちは、さまざまなストレスの中で暮らしています。特に今年は新型コロナウイルスの影響で、普段よりも大きな不安を感じたり、ステイホーム やソーシャルディスタンスといった新しい生活スタイルに慣れずにストレスを感じる人も増えています。そこで、そもそもストレスや不安とはどんなものなのか、精神科医の織戸宜子先生に教えてもらいました。

ストレスを受けると体はどうなるの?

私たちの日常の中には、例えば初対面の人と話す時や仕事でプレゼンをする時など、緊張する場面が多々ありますが、実はその時、メンタルだけでなく体の中にも変化が起こっています。

脳はストレスを受けると、血糖や血圧を上げたり、炎症を抑える働きをするコルチゾールというホルモンを副腎皮質から分泌します。さらに、自律神経が乱れて交感神経が優位なり、“戦闘モード”になるのだそう。

「こうした体の反応は、人間が狩猟をしていた太古の昔から進化してきた生存を守るシステムと考えられています。危険を察知するとコルチゾールを分泌し、血糖を上げて脳に糖分を送ったり、血圧を上げて全身に酸素を送ることで、目の前の敵に対処する準備をします。この反応があるからこそ、獣などの外敵にやられることなく生き残ることができたのです。現代では、外敵に襲われる心配はほぼありませんが、精神的なストレスでも同じような反応をする仕組みになっています」と精神科医の織戸宜子先生。

体を守るためのストレス反応ではありますが、ストレスが過剰に続いてコルチゾールの分泌量が増えすぎると、脳神経にダメージを与えたり、さまざまな病気を引き起こす原因になってしまう、と織戸先生。

「人によって異なりますが、ストレスがかかると、めまいや頭痛、吐き気、不眠、微熱、イライラ、下痢、食欲不振などの不調が現れます。それはストレスがかかりすぎているという体のサインです。自分のストレスに気づかずに同じペースで過ごしていると、集中力が低下したり、仕事がこなせなくなったりして、自分を責めてしまうかもしれません。それが原因でうつ状態に陥ってしまうこともあります。早めにストレスに気づいて自分なりに対策をとれば、ストレス後も、意欲が高まったり、心地よい疲労感に変わったりします」(織戸先生)

「正常な不安」と「病的不安」は、どう違うの?

新型コロナウイルスの影響で、大きな不安を抱えている人も多いと思いますが、「不安は誰もが体験する感情で、危険回避の視点から見れば健康的な反応」と織戸先生は言います。

例えば、大事な打ち合わせの時や趣味の発表会の時に「失敗したらどうしよう」と不安を感じても、終わってしまえば不安も自然に消えてしまいます。このように、「不安になる理由が明確」「他人がその不安に共感できる」「それほど長引かない、不安原因がなくなったり対処できたり、慣れてきたら消失する」「日常生活にそれほど差し障りがない」という不安は、「正常な不安」なのだそう。

「不安には『正常な不安』と『病的不安』の2つがあります。『病的不安』は、理由がはっきりせず、他人にも理解されづらく、日常生活に妨げが出るものですが、自分の抱えている不安がどちらなのか知ることも大切です。不安はとても不愉快なものですが、『正常な不安』は、意味のある次の行動を考えるのに役立ちます。しかし『正常な不安』も長引けばうつ病等の引き金にもなりますので、専門家の判断も場合によっては必要です」(織戸先生)

緊急事態宣言が解除された後こそ、「コロナうつ」が心配?

新型コロナウイルスの影響による長い自粛生活が少しずつ解除になってはいるものの(6月上旬現在)、私たちは大きな不安を抱えた生活を体験し、「コロナによるうつ」を心配する声もあります。

「うつ症状というのは、実は頑張った後に出てきます。ネガティブな出来事だけとは限らず、昇進うつ、引っ越しうつ、結婚うつなど、ハッピーなことの後でも起こりえます。普段と違うことを頑張ってやり続けて疲れがどっと出ることで、うつ症状を引き起こしてしまうのです。新型コロナウイルスに対してもこれまで頑張って立ち向かってきたので、状況が落ち着いた頃に心が折れて、強い疲労感や無気力感、自責感、イライラ感などが出てしまう人が増えるかもしれません」(織戸先生)

緊急事態宣言が解除になったとはいえ、第二波への不安もある今こそ、「レジリアンス(困難を乗り越える力)を高めるチャンスと捉えることができる」と織戸先生は言います。レジリアンスとは、時には他者に頼ったりしながら、心細さや不安、抑うつ感情に耐えられる力です。

「リモートワークや自宅勤務で時間に余裕ができた人は、自分の好きなこと、楽しいことを探してみるといいでしょう。楽しいことをするのが好きな人は、ストレスや不安を乗り越えやすいんですよ」(織戸先生)

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精神科医
織戸 宜子先生
精神科専門医、精神保健指定医。兵庫医大卒業後、神戸大学病院にて研修。内科診療を行いつつ、パルモア病院・神戸海星病院にて女性心療内科外来を立ち上げ、女性のメンタルヘルスに長年携わる。その後、東京慈恵会医大、総武病院を経て、2018年5月より代々木の森診療所で女性メンタルヘルス専門外来を担当。■代々木の森診療所

文/青山貴子

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