女医に訊く#43|花粉に負けない肌を手に入れるにはどうしたらいいですか?
花粉が飛散しはじめると、なんとなく肌の調子が悪くなったり、ムズムズしたりしませんか? 花粉に反応を示すのは、敏感な目や鼻の粘膜だけではありません。肌に花粉がつくことで肌の調子が悪くなったり、顔や首などにかゆみや湿疹が出る「花粉症皮膚炎」になったりすることもあるのです。今回は、花粉飛散時期のゆらぎ肌対策について教えていただきました。
花粉の飛散時期だけに起こる「花粉症皮膚炎」とは?
アレルギー症状は、目や鼻とともに皮膚の症状としても現れやすいもの。特に、もともとアトピー性皮膚炎がある場合、花粉の飛散時期は、症状が悪化しやすくなってしまいます。
「通常、肌には角層による強固なバリア機能があるため、花粉が付着してもブロックしてくれます。しかし、化粧品かぶれやアトピー性皮膚炎などで肌がガサガサ、グチュグチュしていると、花粉を防ぎきれず、抗原抗体反応は起きやすくなります」と話すのは、皮膚科専門医の慶田朋子先生。
アトピー性皮膚炎ではなくても、肌の乾燥や肌荒れが気になる人は要注意! 乾燥や摩擦により肌のバリア機能が壊れていると、花粉の浸透を許し、かぶれや炎症、湿疹などを引き起こす「花粉症皮膚炎」になったり、そこまではいかなくても、肌が赤くなったり、肌の調子が悪くなったりすることがあるのです。
スギ花粉が飛び始める1〜2月は、大気が乾燥しているため、肌も乾燥して肌のバリア機能が衰えやすくなります。今のうちに肌のバリア機能を立て直しておきましょう。
ターンオーバーを整えて肌のバリア機能をUP!
肌のバリア機能の維持には、表皮が重要な役割を果たしています。なかでも、表皮内にある角層はバリアの最前線。角層には肌のうるおいを蓄えておく力が備わっており、乾燥と外的刺激から肌を守っているのです。角層で肌のうるおいを保つために重要な働きをしているのは、次の3つです。
(1)角質細胞間脂質
主成分はセラミド。角質細胞と角質細胞の間に水分を挟み込みながら細胞同士をつなぐ
(2)天然保湿因子
アミノ酸を主成分とし、角質細胞の中にスポンジのように水分を蓄える
(3)皮脂膜
汗と皮脂が絶秒なバランスで混ざり合った“天然のクリーム”。角層を柔らかに保つ
「肌が乾燥しているということは、角質細胞間脂質と天然保湿因子が不足しているということ。ふたつの物質は、皮膚が生まれ変わる過程で生産されますから、不足するのはターンオーバーの過程が上手くいっていないか、材料不足か、生産力が落ちているのか…。洗い過ぎによりバリア物質が漏出し、肌内部の水分が蒸発している可能性もあります」と慶田先生。
肌のバリア機能を回復させるには、ターンオーバーの乱れを改善する必要があります。睡眠不足や栄養不足、ストレスもターンオーバーの乱れの要因に。これらを解消して、肌をすこやかに保ちましょう。
保湿力の高いアイテムをたっぷり塗り重ねる
「また、花粉による炎症を抑えるには、きちんと保湿をして肌のバリア力を補うこと、それ以上の抗原抗体反応が起きないように抗アレルギー薬を飲むこと、花粉が肌に触れないよう物理的にブロックすることの3つが大切です」と慶田先生。では、いつものお手入れを変える必要はあるのでしょうか?
「保湿ケアについては、絶対かぶれないというお守りコスメがあるのなら、あえて変える必要はありません。保湿力の高いもの一品でいいので、たっぷりの量を、肌がしっとりするまで塗り重ねましょう」(慶田先生)
ただし、湿疹を起こしてしまって肌がヒリヒリするようなときは、水性の成分はしみたり、刺激になったりすることがあります。肌が上皮化(欠損した皮膚が治癒過程において表皮で再度被覆されること)するまでの間は、精製したワセリンでシンプルにつくられたバーム(サンホワイト、IHADAなど)で、肌に薄い膜を張ってうるおいを保持し、花粉などの異物が侵入するのを防ぎましょう。
目元は薬を使って早めにかゆみと炎症を抑えて
目の周りは皮膚が薄いぶん、花粉などの刺激を受けやすく、かゆみや乾燥、赤みなどの症状が出やすい部位でもあります。目の表面に花粉などのアレルゲンが付着し、結膜に炎症を起こすと、まぶたのかゆみと相まって目をこすりやすくなります。そのため、早めにかゆみと炎症を抑える必要があります。
花粉による結膜炎や目元の炎症を防ぐには、保湿をしっかりしてからメガネをかけて、花粉がつかないようにすることが大切。かゆみなどの症状が出てしまったときは、抗アレルギー薬の点眼を頻回に行うことに加えて、弱めのステロイドの塗り薬を薄く塗って、目元の炎症を速やかに抑えます。
「掻いたり、炎症を繰り返したりして肌のバリアが傷むと、症状はますます悪化してしまいます。火事は初期消火が大切なのと同じです。掻くのを我慢できるようになるまで、薬できっちりコントロールしてください」(慶田先生)
かゆみがあるときには、冷やすとラクになります。ただし、肌は濡らすと傷つきやすくなってしまいますから、冷やすときは保冷剤に薄手のハンカチなどを巻いてカバーし、肌当たりをなめらかにしましょう。
■銀座ケイスキンクリニック
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ
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