美肌育むキーワード「腸ぱく」って? 毎日の生活に取り入れるべき知恵袋6つ
最近太ったかも、で、単純に食事制限ダイエット、はいちばんしてはいけないこと。肌や髪があれる上、免疫力の低下から体調がくずれやすくなり、老け感につながる結果に…!たんぱく質で女性ホルモンを活性化&元気な腸で全身に巡らせる、が美肌の最強フロー。それを普段のごはんでおいしくとることができれば、最高ですよね…♪ 予防医療コンサルタントの細川モモさんにお話を伺いました。
“食べてキレイになる”新たな食習慣にシフト!
長引くマスク生活で肌のゆらぎを感じる人が多くなり、肌免疫やバリア機能の低下による肌トラブルに悩まされている人も多いと思います。大きな環境の変化によるストレスで腸内環境が乱れやすくなっていることも追い打ちに。そこで取り入れたい生活習慣が「腸ぱく」です。
これからの時代は“どう食べるか”というアプローチから、美容を考え直していく必要があると考えています。例えば、食事制限のあるダイエットは女性ホルモンが枯渇してしまうため肌がカサカサになるなどの肌トラブルを引き起こし、月経異常の原因にも。むしろ、きちんと食べることで筋力をつけ、代謝を上げることが大切。代謝が上がれば体の巡りが良くなり、美肌も育まれます。そこで重要になるのが“たんぱく質”。元々、人間の体はたんぱく質からできていますので、健康な体には不可欠な栄養素。それと同時に、美しい肌や髪、瞳、爪といった女性の美を包括的に管理している女性ホルモンを作るのにも、たんぱく質は必要なのです。このたんぱく質を上手に取り入れることが、美肌はもちろん美しい体を作るための最強フロー。
どんな食材に含まれているかというと、肉、魚、卵、大豆、乳製品で「5大たんぱく質」と私は呼んでいます。実は一口にたんぱく質といっても、それぞれに含まれる栄養素が異なるので、バランス良く食べることが必要です。肌の炎症を抑えるDHAやEPAは魚に多く含まれますが、ほかのたんぱく質には含まれません。女性ホルモンを活性化させるイソフラボンも大豆のみに含まれます。ひとつの食材に偏らず、まんべんなく食事に取り入れることが必要なのは、こうした理由からです。1食でも欠食すると、体内では筋肉が分解されてエネルギーやたんぱく質の不足分を補おうとします。ボディラインのくずれにつながる筋肉の分解を防ぐためにも、たんぱく質を3食均等にとることは大切です。
そこに腸活を意識した食事を取り入れて、腸内環境を整えることができれば相乗効果が期待できます。免疫力が上がるほか、排便も促してくれるので肌あれ防止にも。誤解してはいけないのが食物繊維を多くとっても、食事量が足りないと便秘になってしまうこと。和食であればカロリーは気にせず、しっかりエネルギーが補充できるたんぱく質を含んだ食事を心掛ければOK。たんぱく質でありながら発酵している納豆やキムチ、ヨーグルトなどの腸活食材は、いわば“スーパー腸ぱくフード”。積極的に食べて、健やかな肌を育むための食習慣にシフトしましょう。
毎日の食生活に取り入れたい腸ぱく知恵袋6
「腸活食材」と「たんぱく質」を合体させた造語“腸ぱく”は美肌を導くためのキーワード! そのためにも、たんぱく質と腸活の基本的な知識をおさらいして、普段の食生活に取り入れてみましょう。
【1】『腸ぱく』習慣に取り入れたい食材をおさらい
「たんぱく質はそれぞれ働きかける役割が違うので、『5大たんぱく質』をまんべんなく取り入れることが大切です。また『3大健腸食材』で腸内環境が整えば、たんぱく質の栄養をしっかり吸収できるので、合わせて食べることで相乗効果に。そして、たんぱく質でありながら発酵している納豆やキムチ、ヨーグルトなどの腸活食材は“スーパー腸ぱくフード”! ぜひ、積極的に取り入れましょう」
3大健腸食材
発酵食品
納豆、キムチ、ヨーグルト、チーズなど。納豆菌や乳酸菌などを含む発酵食品は腸活の強い味方。発酵調味料も活用すれば栄養価UP。
オリゴ糖
玉ねぎ、にんにく、ねぎなどの野菜のほか、バナナなどの果物、大豆などに含まれる。食物繊維と同様、善玉菌のエサとなる。
食物繊維
アボカドや山芋などは便を軟らかくする水溶性。ごぼうやきのこ類は便のカサを増す不溶性。バランス良くとれば便秘改善に。
5大たんぱく質
魚介類
DHA・EPAには炎症を抑える働きや血液の質を改善し、生理痛や頭痛を緩和する効果がある。ほかのたんぱく質(鴨肉を除く)にはない抗うつ作用もある。
肉類
牛肉は炎症を抑える鉄や亜鉛、豚肉は代謝を促すビタミンB1、鶏肉は疲労回復を促すイミダゾールペプチドをそれぞれ多く含む。
卵
食物繊維とビタミンC以外のすべての栄養素を含む完全栄養食品。卵かけごはんやゆで卵など、手軽にたんぱく質補給ができる食品。
大豆製品
豆腐、豆乳などに含まれる大豆イソフラボンが特定の腸内細菌によって代謝され、女性ホルモンに似た働きをする物質ができる。
乳製品
牛乳はほかの食品に比べて栄養素の種類が少ないけれど、必須アミノ酸の含有バランスに優れ、カルシウムの含有量もダントツに高い。
【2】1日に必要なたんぱく質の摂取量は?
体重50kgの人は50g/日が目安
「肉や魚に含まれるたんぱく質の割合は約2割程です。1人前を100gとすると、メインを肉や魚にした場合にとれるたんぱく質は約20g。1食抜くとすぐにたんぱく質は不足するので、おやつや飲み物もたんぱく質を意識するといいでしょう」
【3】たんぱく質を合成する必須アミノ酸は食べ物でしかチャージできない!
「たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されていて、そのうち9種類は体内で作り出すことができない“必須アミノ酸”です。肌のハリやツヤを維持するためには、必須アミノ酸を多く含んだ良質なたんぱく質を意識的に食事で取りことが必要なのです」
必須アミノ酸の主な働き
【4】筋肉量を上げて代謝を良くするためにも、朝食は大切!
「私たちが1,000人の女性を対象にした調査では、朝食を毎日とっている人は体脂肪が少なく、筋肉量が多いという結果に。朝にたんぱく質をとることで体内時計のズレがリセットされ、筋肉量が多いと体温も上昇。結果、免疫UPや栄養の吸収にも役立ちます」
たんぱく質が充実している人の朝食欠食率
(c) 2015 三菱地所株式会社・一般社団法人ラブテリ All Rights Reserved.
たんぱく質が足りている人たちの朝食欠食率※は5%。逆に足りていない人たちのグラフでは、朝食欠食率はなんと43%。エネルギー不足によるたんぱく質の減少は、筋肉分解に拍車をかけることがわかる数値。
【5】美しい肌を作る女性ホルモンの原料こそ、たんぱく質!
「たんぱく質が不足すると、ホルモンバランスの乱れにつながります。特にたんぱく質とコレステロールから作られる女性ホルモンの低下は生理不順の原因になるほか、骨密度減少にも影響。頭蓋骨の骨密度の低下は、シワやたるみの原因にもなるので気をつけたいですね」
【6】腸活で腸内環境を整えて排便を促すことで、肌トラブルを防ぐ!
「20~30代女性の749名中、便秘に悩まされている人は26%。その原因は排便に必要な食事量や食物繊維などの不足です。また、筋肉を使わないデスクワークは、下腹部を圧迫して慢性的な便秘やガスの悩みの温床に。たんぱく質と適度な運動で美姿勢をキープ!」
便秘に悩まされている女性に不足している栄養素
(c) 2015 三菱地所株式会社・一般社団法人ラブテリ All Rights Reserved.
円滑な排便に必要な栄養素の不足を調査したところ、グラフにある食物繊維やたんぱく質のほか、マグネシウムや必須脂肪酸の不足も多く見られた。
著書は『生理で知っておくべきこと』(日経BP)ほか多数。
『美的』2021年10月号掲載
撮影/宗田育子 スタイリスト/阿部まゆこ 構成/正木 爽・宮田典子(HATSU)、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
ほそかわ・もも/両親の闘病をきっかけに予防医学を志し、渡米。医療と食の専門家による予防医療プロジェクト「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を発足。