意外とみんな驚く「フィンガーボール」の美しい使い方
皆様、フィンガーボールというものはご存知ですか?
私は幼少の頃、レストランで急に慣れないフィンガーボウルが登場し、アタフタした経験があります。テーブルでのマナーのことが頭から離れなく、料理を味わうことをすっかり忘れて二の次になっては、せっかくの食事が台なし。
更にその存在を知らない方は、飲み水だと思ってグビグビ飲んでしまったという話も聞いたことがあります。
いつ出てきても恐くないように、今のうちにきっちりマナーを習得しておきましょう!
■フィンガーボールとは
フィンガーボールとは、食事中に卓上で指先を洗うためのボウルです。
ガラス製か金属製、ステンレスなど様々なタイプがありますが、すべて小鉢のような器で、大きさは直径11cm×高さ4〜5cm位が平均のサイズです。
指先の消臭のためにレモンやコリアンダーを浮かべ入れてあることも
■フィンガーボールの歴史
古代ローマの風習のうち、中世に残った数少ない食具がフィンガーボウルです。実は古代エジプトの時代にまでさかのぼった古い歴史があるのです。
これも中世ヨーロッパにはよく使われ、特に上流階級の食卓では、シナモンや薔薇で匂いづけをしたものがよく使われました。
■フィンガーボールの出てくるタイミング
殻のついたオマール海老やカニなど、フォークとナイフで食べにくい料理に、フィンガーボウルはつきものです。
グラスの中で指を洗うのは、慣れるまでちょっと違和感があるのではないでしょうか。
洋食は、フォークとナイフを使うのが基本ですが、どうしても手を使わなければ食べにくいメニューの時に出されます。
つまり、 手を使って食べていいよという合図でもあります。
■フィンガーボールの美しい使い方
フィンガーボウルの中に指の第二間接まで、片方ずつ入れて指先の汚れを落とします。その場合、ばしゃばしゃと音を立て荒々しく洗ったり、手のひらまで水につけたりするのはNG。できるだけ音を立てずに上品に指先の汚れを洗い流しましょう。
洗い流したら、膝の上に置いていたナプキンで濡れた指先をふきあげましょう。
ナプキンは手と口を拭くものですので、ハンカチで拭くことはありません。
■マナー違反の素敵な逸話
最後になりますが、このフィンガーボールの逸話をご存知ですか?
宴会の席上で客のひとりがフィンガーボールの水を飲んだところ、主宰者がその客に恥を掻かせないように、自分もフィンガーボールの水を飲んだという実話があります。
この話は、世界中にあるようです。
主宰者の陸軍大将の荒木貞夫と賓客のひとり、ヴィクトリア女王とペルシャ国王など、様々なセレブ達がお客様に恥をかかせまいと振舞った勇気ある行動です。
夏目漱石の『吾輩は猫である』の中でも下士官に対し英国軍の連隊長が同様のことを行ったと書かれております。
マナー違反である行動が、逆に素敵な気遣いになるという場合もあるのですね。上品なマナーや振る舞いを身に付けても、やはり心が美しい女性は素敵です。
最後になりますが、これでフィンガーボールの使い方はマスターできましたか? どうぞ素敵なディナータイムをお過しください!
【参考】
※ 安倍勲(2003)『プロトコ-ル入門 国際儀礼とマナ-』 学生社
初出:美レンジャー ライター:高木ゑみ
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。