布団に入って目をつぶっていても眠れない。こんなときはどうしたらいい?【女医に訊く#88】
布団に入って目をつぶっていてもなかなか眠れず困ったことはありませんか? 上手に眠りに入るための工夫について、睡眠専門医の柳原万里子先生に教えていただきました。
上手に眠るためには、寝る前の夜の過ごし方から
不思議なものでベッドの中で寝よう、寝よう、と頑張っているとなぜか余計にうまく寝られなかったりします。ベッドに入ってから頑張るのではなく、ベッドに入る前の夜の過ごし方を工夫することもスムーズな入眠に役立ちます。眠るための身体の仕組みのひとつ、“自律神経”に着目して寝る前の夜の時間の過ごし方を見直してみましょう。
自律神経とは、自分の意志とは関係なく体の機能をコントロールしている神経のこと。自律神経は正反対のはたらきをする2つの神経、すなわち興奮・覚醒する方向へ働く“交感神経”とリラックスし休息する方向へ働く“副交感神経”からなり、両者のバランスで体の機能をコントロールしています。
「睡眠に適した自律神経のバランスはリラックス系の“副交感神経”の活動が活発になるバランス。入眠の前の夜の時間にはリラックスをこころがけ、興奮・覚醒する系の“交感神経”を刺激しないように工夫すると、よい眠りへとつながります」と語るのは、睡眠専門医の柳原万里子先生。
寝る前の激しい運動・熱いお風呂・カフェイン摂取はNG!
「入眠前に興奮・覚醒する系の“交感神経”を刺激しないことがまず大切。交感神経を刺激するものとしては、ドキドキと心拍数があがるようなことをイメージすれば掴みやすいかもしれません。例えばジョギングや筋トレなどの心拍数をあげるような激しい運動、熱い温度のお風呂、ドキドキしてしまうような心配事。こういったものはカフェインと同じように交感神経を刺激して眠りを遠ざけてしまいます」(柳原先生)
熱いお風呂が好きな方は帰宅後早めに入浴を済ませる、心拍数があがるような激しい運動は入眠前ではなく夕食前や起床後にするなど時間配分を工夫しましょう。
「ストレッチなどのゆっくりとした心地よい運動、ぬるめの温度での入浴や足湯は、逆に眠りを誘う “副交感神経”の活動を活発にさせてくれる効果があるため入眠前にもお勧めです。これらでは少しだけ(1℃程度)あがった体温が平熱に下がる際に眠気がきやすいといった、体温調節を利用した入眠効果も期待できます」(柳原先生)
お布団に悩みごとを持ち込まない
布団の中で眠れず、つい悩みごとや考えごとをしてしまうことはありませんか。毎日のように繰り返していると、いつしか無意識にお布団が考えごとをする場所になってしまうそう。明日の仕事のこと、今日のイライラしたこと・困ったこと、果ては“今日もうまく眠れなかったらどうしよう?”などなど。眠れない夜に悩みはつきません。
「あまり楽しくない考え事を始めたら、思い切って一旦ベッドからでてしまうこともお勧めします。穏やかな音楽を流す、好きな香りのアロマを焚くなど、寝室のイメージを楽しくリラックスして過ごす空間へとかえてみるのもいいかもしれません。上手に眠りに落ちるためには寝室が安心のできる心地のよい場所であることが大切です」(柳原先生)
また眠れないからと就寝前にお酒を飲んではいませんか?アルコールは寝つきをよくしますが入眠してからの睡眠は浅くさせます。すぐに寝られたわりには翌朝にすっきりと起きられないことが多いのはこのためです。
「眠るためのお酒は完全にNG。睡眠薬を使うと止められなくなるのでは?と心配する方もおられますが、アルコール依存症という言葉がある一方で、現在は依存性がほぼないとされる睡眠薬もあり、認知行動療法など薬を使わない不眠症治療も始まっています。寝つきが悪い=すぐに不眠症というわけではありませんが、もし困っている場合には一人で頑張らずに睡眠医療機関を受診してください。眠れない原因や解決を一緒に探しましょう」(柳原先生)
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ(小学館)
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