卵子凍結とは? メリットとデメリット、専門家による正しい知識を知ろう
指原莉乃さんの“採卵済み”宣言で注目を集める「卵子凍結」を始め、「プレコンセプションケア」「不妊治療」など、将来子供を産みたいと考えている方々へ、専門家による「今知っておきたい情報」を紹介します。
卵子凍結
『美的』読者の半数近くが関心をもつ、卵子凍結。ただし卵子凍結をしたからといって、将来必ず妊娠できるとは限りません。まずは卵子凍結の基本情報を正しく知りましょう。
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科 医長
三戸 麻子先生
みとあさこ/内科専門医。’11年より国立成育医療研究センターに入職、日本初のプレコンセプションケアセンター設立に尽力。
01.卵子凍結とは採卵して冷凍保存する技術
タレントの指原莉乃さんが、SNSで《卵子凍結済みで生活しています》と投稿したことで注目が。「卵子凍結とは採取した卵子を、 未受精卵のまま保存する技術 です。マイナス196℃の液体窒素で凍結することで、卵子の質を保ったまま保管が可能に。本来は卵巣機能を低下させる病気や治療などに先立って行われる医療ですが、近年、将来の妊娠に備えて健康な女性が若いうちに行う卵子凍結が注目されています」(花岡嘉奈子先生)
02.凍結保存した卵子は将来、妊娠したいときに融解
「今は仕事を優先したい方などが、現時点で卵子を残し、妊娠したいときに融解して精子と受精させます。その間、自然妊娠をする場合も多いですが、不妊治療の 最終手段として凍結卵子を用いた顕微授精 という方法を残すことができます」(花岡先生)
03.女性は出生時、約200万個の卵があるが、成長するにつれて減っていく!
女性は出生時に100~200万個の卵子(卵母細胞)がありますが、年齢を重ねるごとに数が減少していくことがわかっています。「 卵子は女性の胎児期に一気に作られ、以後、その数が増えることはありません 。毎月、約400〜500個の卵子が消費され、最も状態の良い卵子が1個だけ排卵されます。とはいえ、体内にある卵子は自分と同じだけ年齢を重ねていることから、質の変化も当然、受けます。加齢とともに妊娠率が低下することを知っておきましょう」(片桐由起子先生)
04.卵子凍結のための採卵には1回約2週間かかり、その間3~5回の通院が必要
卵胞の育ち具合を確認するため、1~3回の通院が必要。採卵手術にかかる時間は10分程。
※あくまで一例です。治療には個人差があります。
05.卵胞がどれくらい残っているか推定する抗ミュラー管ホルモン検査
「抗ミュラー管ホルモン検査(AHM検査)とは卵胞から分泌されるホルモンの量を測定する検査で、体内に残っている卵子の数を推定できます。この数値で採卵できる卵子の数が変わって治療の方針も決まります。AMH値が2~3の場合、1回に採卵できる卵子の数は10~15個程です。
ただしAMH値はあくまで卵子の推定数であり、質とは関係ありません
。数値が実年齢より高くても、卵子の質自体は年齢相当と考えられます」(花岡先生)
「長期間、ピルを服用している人は卵巣が休眠状態のため、
AMHの数値が実際より低く出る可能性
があります。正確な結果を得るためにも、医師に検査のタイミングを相談してからAMH検査を受けてください」(片桐先生)
ライターOがはなおかIVFクリニック品川で体験!
1回の血液検査で現在の卵子の推定在庫数を確認
血液を採取するのみの簡単な検査だったため、ものの数十分で検査は完了。1 週間後に結果を聞きに伺うと、今30 代ですが、40 代相当の卵子の在庫数だとわかりました。今後の妊娠・出産について考えるきっかけとなりました!
はなおかIVFクリニック品川
住所 東京都品川区大崎1丁目11-2ゲートシティー大崎イーストタワー1F
電話番号 03-5759-5112
営業日 9:00〜12:00、15:00〜19:00(火・木9:00〜11:00、14:00〜17:00)
休診日 日・祝
料金 AMH 検査 ¥7,700、初診料 ¥3,300 完全予約制
06.卵子凍結にかかる費用は1回当たり約30万円以上
「当院(はなおかIVF クリニック品川)では、AMH の数値やエコー、年齢により使用する薬剤を使い分けています。その際、検査費用のほか、排卵誘発剤、採卵、凍結にかかる費用などを包括した1回(1 周期)当たりのパック料金を導入しており、約30 万円前後です。また、凍結費用は卵子の個数当たりの単価を提示しているクリニックが多く、凍結できた卵子の個数により費用が変動します。 保険適用外のため、全額自己負担 となります」(花岡先生)
07.想定の5倍以上の申請者数!都の説明会申し込みは7,000人超え
昨年より東京都で卵子凍結にかかる費用の助成が始まり、これまで約1,650人の申請があったと話題に。東京都によると 健康な女性を対象とする卵子凍結への助成は、都道府県としては全国初 。助成の条件のひとつである説明会参加には、今年1月時点で7,300人超の応募者が殺到しました。
東京都が’23年より上限30万円の卵子凍結助成金制度を実施
対象:東京都に住む18~39歳までの女性
助成額:合計最大30万円
1.卵子凍結を実施した年度に上限20万円
2.卵子凍結を行った翌年以降、1年に2万円ずつ(最大5年間)
主な条件 ・都が開催する説明会へ参加
・都内に住民登録していること
・都が実施する調査に協力すること、etc.
08.30代後半は10個採卵しても出産に至るのは50%前後
凍結卵子がすべて妊娠につながるわけではないため、より多くの卵子を凍結しておいた方が有利です。30代後半では35個以上の卵子凍結が理想。ただし、たくさん採卵しても、 年齢が高くなる程、妊娠・出産の確率は低く なります。37歳だと10個卵子が確保できても出産に至る確率は50%前後です」(花岡先生)
35歳を過ぎると、1回に採取できる卵子の数も減るため、摂取回数を増やす必要が。
09.凍結卵子5個の保管費用に¥33,000/年
「保管費用はクリニックによって異なります。当院(はなおかIVFクリニック品川)の場合は 凍結卵子5 個につき¥33,000 /年 。保管期間は1年ごとの更新で、期限は50歳の誕生日前日まで。 凍結卵子の使用年齢 は、妊孕性(にんようせい)やハイリスク妊娠の観点から 45歳までが推奨されます が、個人差もあるので個別に相談しながら決めていきます」(花岡先生)
10.融解卵子を使っての妊娠率は4.5〜12%
「凍結融解した後、 卵子の生存率は90~97% 。 受精率は71~79% 、 着床率17~41% 、胚移植当たりの 臨床妊娠率36~61% 、 融解卵子当たりの臨床妊娠率は4.5~12% といった報告があります(Fertility Steril2013; 99:37-43)。ひとつの凍結卵子を使って、妊娠にまでたどり着ける確率は決して高くはありません」(花岡先生)
『美的』2024年5月号掲載
撮影/松原敬子 イラスト/斎藤充博、きくちりえ(Softdesign) 構成/つつみゆかり、大瀧亜友美、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
はなおかかなこ/産婦人科医、生殖医療専門医・指導医。2014年開設のはなおかIVFクリニック品川にて、 日々不妊に悩む患者と向き合う。