健康・ヘルスケア
2023.11.16

子宮内膜症、子宮筋腫、PMS…30代女性がなるリスクのある子宮周りの病気について専門家が解説!|『美的』世代に多い子宮周りの病気

「私は大丈夫!」と過信しないで!30代の女性に多い子宮周りの病気について専門家の先生が解説とともに、予防法・治療法について教えてくれました♪

クレアージュ東京 レディースドック クリニック 婦人科顧問

大島乃里子先生

【子宮内膜症】\過多月経やつらい月経痛があったら疑ってみて/30代がなりやすい 子宮内膜症 子宮筋腫 には女性ホルモンが関与

毎月月経を重ねる度、子宮にダメージが蓄積

30代になると、子宮を取り巻く婦人科系のトラブルに悩む女性が増えてきます。中でも 子宮内膜症と子宮筋腫 は、この世代の2大婦人科系疾患。

「いずれも詳しい原因は明らかではありませんが、 女性ホルモンが少なからず影響している ことはわかっています」と、レディースドックの顧問を務める産婦人科医の大島乃里子先生。

「女性の体は、卵巣から周期的に 女性ホルモンが分泌 されて、排卵して、妊娠しなければ 子宮内膜が剥がれ、月経が来て …の繰り返し。初潮を迎えて既に20年程たつ30代は、途中で妊娠・出産を経験しない限り、それを休みなく続けていることになります。実際、子宮筋腫や子宮内膜症は、 月経が来る度に増殖・増大 します。初産の平均年齢が30歳を越える現代女性の間で、このふたつの疾患が多いのは当然かもしれません。いずれも命に関わる病気ではないけれど、増殖・増大が続けば、月経痛や過多月経、貧血などが悪化したり、不妊になる可能性も!」

 

月経の出血が子宮の外で起こり、激しく痛む!

「女性の体は、排卵された卵子が受精をしないと、子宮内膜が剥がれ落ちて経血として体外へ排出される仕組み。子宮内膜症は、その内膜組織が子宮以外の部位に発生し、発育する病気です。月経の度に子宮の外のあちこちで出血が起こっているイメージ。代表的な症状は過多月経や月経痛など月経困難症です」(大島先生)

 

放っておくと不妊の一因に!

「子宮内膜症が悪化すると、その場で炎症や癒着を引き起こして、ひどい月経痛や下腹部痛、腰痛、さらには不妊の原因にも。実際、不妊女性の約30%は子宮内膜症を合併しているとされています」(大島先生)

 

子宮内膜症は子宮以外の部位に飛ぶ


卵巣チョコレート嚢胞
子宮内膜が卵巣に発生。月経時に排泄されなかった古い血液がチョコレートのような状態になって溜まり、嚢胞(袋)を形成。

子宮内膜症
子宮内膜症ができやすいのは腹膜、卵巣、子宮と直腸の間(ダグラス窩)、卵管などほとんどが骨盤内。ごくまれに肺や腸にできることも。

子宮内膜症の治療法は…

【薬物療法】

低用量ピル
低用量ピルの服用で過多月経や重い月経痛を緩和する。エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の合剤のLEPは保険適用で、処方されることが多い。排卵を抑えるので子宮内膜が厚くならず、子宮の収縮も弱まる。エストロゲンの量や血栓のできやすさなど体質が考慮されるものの、痛み物質そのものができにくくなるので、月経痛も軽くなる。改善が見られない場合は、別の薬剤や手術を検討。

黄体ホルモン剤
低用量ピルで改善が見られない場合、黄体ホルモン療法を用いる。子宮内膜組織の増殖を抑え患部を小さくし、痛み物質そのものを減らすので、月経痛も緩和。長期的な治療になることも。

ミレーナ

子宮内に黄体ホルモンがついた器具を入れる。挿入すると持続的にホルモンを放出し、最長5年間使用可能。子宮の内膜を薄くして、月経量や月経痛なども減らすことができる。

 

【手術療法】

子宮内膜症は放置すると、卵巣が癒着したり、嚢胞が大きくなって破裂する危険も。まれにがん化のリスクもあるので、経過を見つつ癒着剥離患部摘出などの手術を検討。ただし子宮内膜症は再発しやすいのが難点。妊娠希望の場合、手術の時期を医師と相談して。

【子宮筋腫】\筋肉組織にできる良性の腫瘍。30代女性の4人にひとりが発症/

過多月経、月経痛、不正出血などつらい症状があれば治療を

「子宮筋腫の症状は発生する部位や大きさによってさまざまです。子宮の内側にできると小さくても痛んだり、過多月経の要因になるのに対し、子宮の外側だと巨大化するまで気づかないことも。良性の腫瘍ですが、症状がつらければ治療を!」(大島先生)

 

月経が来る度に大きくなるから、定期的な婦人科検診が必須

「子宮筋腫は女性ホルモンの作用で、月経の度に大きくなります。巨大化すると周囲の臓器を圧迫して下腹部痛、腰痛、排尿障害、便秘などに。不妊や習慣流産の原因にもなります。治療のタイミングを図る上でも年1回の婦人科検診はマスト」(大島先生)

 

粘膜や筋層など発生の部位で症状も異なる


漿膜(しょうまく)下筋腫
子宮壁の外側に向かって大きくなる筋腫。5cmを超える大きさでも目立った症状はない。

粘膜下筋腫
子宮の内側の粘膜下に飛び出すようにできる筋腫。小さくても症状が強く、過多月経や不正出血、不妊、流早産の原因になりやすい。

筋層内筋腫
子宮壁を作っている平滑筋の筋層内にできる筋腫。子宮筋腫の約7割を占める。大きくなると過多月経や不妊の原因に。

子宮筋腫の治療法は…

【薬物療法】

薬(ホルモン剤)で女性ホルモンの分泌を抑制し、筋腫を縮小させる方法がある。低エストロゲン状態になって月経もないので、月経痛や貧血症状も楽に。根本治療にはならない。

 

【手術療法】

子宮ごと取る子宮全摘手術、筋腫のみを取り除く筋腫核出術、腟から挿入した内視鏡手術器具で筋腫だけを削り取る子宮鏡下手術がある。子宮を残したい場合は筋腫核出術、または子宮鏡下手術に。子宮鏡下手術は、径3cm未満の削りやすい筋腫のみに適用。

【PMS(月経前症候群)】30代の女性に多発!\女性ホルモンの変動が一因/

[PMSの症状は人それぞれ]

【心の不調】

  • イライラする
  • 情緒不安定になる
  • 落ち込みやすい
  • 不安になる
  • ぼ~っとしてしまう
  • 集中力がない

 
【体の不調】

  • 体がむくむ
  • 乳房やおなかが張る
  • 疲れ・だるさが取れない
  • 昼間に眠く、夜眠れない
  • 食欲が出ない
  • 頭、腰、腹痛、便秘

 

月経前の女性ホルモンの急激な変動が体や心の不調を引き起こす

「PMSは、月経前3~10日に現れる心と体の症状で、月経が来ると改善するのが特徴。黄体期(排卵から月経まで)のエストロゲンとプロゲステロンの急激な増減により自律神経が乱れて引き起こると考えられています」(大島先生)

PMSの治療法は…

【認知行動療法】

月経日誌をつけ、自分のPMSのパターンを把握。いつ頃、どんな不調がいつまで現れるのか。体調だけでなく睡眠、食事、関連する事柄を2週間はメモすると、次の波の予測や、不調対策が立てやすい。

 

【薬物療法】

低用量ピル
低用量のホルモン剤を服用することで排卵を止める。女性ホルモンの乱高下が抑えられて、PMSの症状が改善。婦人科を受診し自分に合った薬剤を用いる。
 
漢方薬
イライラやうつっぽいなど精神症状の緩和に用いられる代表的処方は加味逍遙散(かみしょうようさん)や抑肝散(よくかんさん)。むくみほか、婦人科症状全般には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)。ほぼ保険適用となる。
 

PMSをケアする市販薬もチェック!


\血行を促し月経リズムを整える/
女性ホルモンや自律神経の乱れを11種類の生薬が改善。
小林製薬 女性薬 命の母ホワイト 第2類医薬品 180錠 ¥2,824


\不快なPMSの症状を和らげる/
月経前の心と体の不調を暖和。
ゼリア新薬工業 プレフェミン 第2類医薬品 30錠 ¥1,980(編集部調べ)

 

『美的』2023年12月号掲載
イラスト/ito aya 構成/つつみゆかり、長島理子、有田智子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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