30代は脳の曲がり角!? あなたの忘れっぽさはどのタイプ?|「もの忘れ脳」の仕組みを徹底解析
30代は脳の曲がり角!? マルチタスク時代、脳は常に忙しさに追い立てられています。睡眠不足や栄養不良もそこに拍車をかけているはず…なんだか忘れっぽい、思い出せないことが増えた、なんて人、必見!
もの忘れ撃退!お疲れの脳のリセット法
成長を続ける脳の変化に気づいて!記憶が定着しやすい思考にシフト
“記憶力”は生活習慣にとても影響を受けやすいものなので、情報過多でマルチタスクな生活を強いられる現代人にとって、脳がお疲れ気味なことは確かに「もの忘れ」の原因のひとつだと思います。しかし「昔は記憶力が良かったのに、最近、忘れっぽくて。私も年だな…」と感じているなら、それは大きな間違いです。
脳は何歳になっても右肩上がりで成長を続けています。20代の脳の仕組みと、30代ではまるで異なるため、使い方を間違えると記憶の定着がしづらくなるのです。これこそが、「忘れっぽい」という感覚を生み出している主な原因。特に多忙な人は、忘れないと次に進めないという脳の仕組みの中で、忘れやすさを感じている部分もあると思います。では、どんな対策を講じたらいいか。賢い人程パターン化を好む傾向がありますが、受け身になると脳の海馬は省エネモードに入りやすくなります。日頃からポジティブにタスクと向き合って、脳に刺激を与え続けることが大切に。
そもそも「忘れる」とは、入ったものが消えるという現象。ところが、そもそも入っていないとしたら…。少し厳しい言い方をすると、「忘れっぽくなった」ことは、その記憶が自分にとって有意義なものとして学習されなかった現れでもあるのです。つまり、自分にとって価値のある情報にフォーカスすることが記憶定着のカギ。まずは、忘れっぽさを嘆くより、自分の頭の中に本当に入れるべきものは何か、を知ることが肝心だと思います。
あなたの忘れっぽさ、どのタイプ?
タイプA|何かの拍子にやることを見失う
「PCを取り出して開いたけれど、検索する事柄を忘れた…」など、「取り出す」という別の動作を挟むことで遂行タスクを見失うタイプ。
\タイプ別アドバイス/
割り込み刺激を遮断!
感情を揺り動かす強い刺激が入ると「感情系」が優先されて、「思考系」が見失われやすくなる。行動に移す前に脳内リハを!
タイプB|うっかり系の忘れ物が多い
「買い物リストをつけたのに、肝心のリストを見ずに買い忘れた…」「鍵を失くした!」など、そそっかしい間違いをしてしまうタイプ。
\タイプ別アドバイス/
心を落ち着かせる行動を
「思考系」と「記憶系」の力が低下すると、注意力や集中力、記憶力が低下する可能大。写経や瞑想などで心を鎮めると◎。
タイプC|仕事で凡ミスが増えた
「オンライン会議の予定をすっかり忘れていた…」など、新たな仕事が始まってもマルチタスク処理ができずに、ミスや不調が増えるタイプ。
\タイプ別アドバイス/
脳の柔軟性や機動性をUP
「思考系」や「聴覚系」の力が低下するとマルチタスクが困難になり、大事な話を聞き逃すことも。ひとり後出しジャンケンで負けるようにすると脳が活性化されます。
タイプD|肝心の言葉が出てこない
「今、何を言おうとしたんだっけ…」など、相手を目の前にしても準備していた言葉が出てこず、コミュニケーションに支障を来すタイプ。
\タイプ別アドバイス/
小さな人付き合いを大切に
コミュニケーションの拠点となる「伝達系」の力が低下すると、言葉数が減ったり、考えを伝えられなくなりやすい。自分から人に話しかけて交流を図ってみて。
タイプE|固有名詞が出てこない
「あのドラマに出ていた俳優さんの名前…なんだっけ?」など、名前のほか作品タイトルなどの固有名詞が出てこないタイプ。
\タイプ別アドバイス/
マンネリ生活からの脱却を
「記憶系」の力量低下や刺激の少ない生活も原因。固有名詞は自分との関連づけで覚えると定着しやすい。
「もの忘れ脳」の仕組み徹底解説
忘れっぽくなった原因を知って、脳を正しくアップデートさせよう!
まずは特徴と役割をチェック!8つの「脳番地」とは?
原因その1|脳の機能をまんべんなく使えていない
脳には、なんと1,000億個以上の神経細胞が存在しています。しかも得意分野ごとに拠点を作り、それぞれの役割を全うしているのです。これを加藤先生は8つの拠点に分けて、「脳番地」と名づけています(下図参照)。
この脳番地の衰えがもの忘れに影響を及ぼしていて、例えば「思考系脳番地」が衰えると同時進行をする際に忘れやすくなり、「記憶系脳番地」が衰えると固有名詞が出にくくなります。
また、脳はすぐにサボりたがる性質をもつため、常に脳に刺激を送ることが効果的。8つの脳番地をまんべんなく使うことがもの忘れ撃退には必要なのです。
原因その2|美的世代は“脳”の曲がり角…。今までと脳の仕組みが変わっていた!
脳は年代ごとに使い方が異なります。20代では理解系脳番地が未熟なため、物事を理解したり面白がることより、見たものや聞いたものを単純に記憶する「無意味記憶」が優位。
それに比べ、30代は概念や知識を記憶する「意味記憶」が優位になるため、物事をきちんと理解することで長期記憶に結びつきやすくなるのです。
極端に変化を拒んだり、新しいことに挑戦することを避けてばかりいると、脳の劣化が始まる人も。自分が興味をもてることを見つけて脳を活性化させて!
美的世代の脳は体験学習が記憶定着のカギ!
記憶や理解に関連する「超側頭野」が成長のピークを迎える美的世代。自分が体験することによって運動系・視覚系・聴覚系・思考系・理解系の脳番地の連携が強化され、成長が促されます。
原因その3|睡眠不足で記憶が定着しにくくなっている
私たちの脳は、眠りが浅い「レム睡眠」のときに記憶の定着が行われて、眠りが深くなる「ノンレム睡眠」のときに長期記憶として形成されます。
そのため睡眠時間が短いと、その分、記憶は定着できなくなるため、平均睡眠時間は8時間が理想。また、就寝時間を固定して、規則正しい時間に脳と体が動く仕組みを作ることも重要です。
原因その4|ワーキングメモリーの処理機能が低下している
何かをするときに必要な情報を一時的に記憶・処理する能力がワーキングメモリー。決断事項が多すぎるとキャパオーバーになり、もの忘れを誘発することに。
細かくて簡単なことはTo Doリストをつけて早めに片づけることで、脳内のメモリー容量を増やしましょう。また、暗記ではなく理解して記憶するという手順を踏むことが効果的。「理解系脳番地」を働かせて、「なるほど! そういうことか」と脳を刺激しながら情報を取り入れることを意識して。
【脳の記憶メカニズムの3STEP】
情報は視覚系と聴覚系からインプットされます。このとき、ワクワクした気持ちや体験を伴う記憶は、記憶の調整役「海馬」が重要と判断して長期記憶へ移行。前向きな思考が記憶定着の秘訣です。
- 情報を認知して受け入れる
- 海馬で情報を整理する
- 長期記憶へ移す情報を選別
原因その5|活性酸素がたまりやすい生活をしている
脳に必要なのがキレイな酸素。体の中でも脳は大量の酸素を消費するため、活性酸素によって組織が傷む“酸化ストレス”を受けやすい場所。脳内で老廃物となりやすい活性酸素は、じわじわと細胞の働きを阻害し、長期的に脳へ悪影響を及ぼします。抗酸化作用のある食品を積極的に食べて、新鮮な情報を受け入れやすい脳にしよう!
【抗酸化作用のある食品】
- 緑黄色野菜
- 海藻類
- 大豆、ナッツ類
- イチゴやキウイなどのフルーツ
原因その6|自律神経や女性ホルモンが乱れている
脳は自律神経を通じて、体のすべての動きをコントロールしています。そのため、心身へのストレス負荷が高まると交感神経が優位になって心拍数が上がり、落ち着きがなくなり、記憶力もダウンしてしまうのです。生理などで女性ホルモンが乱れてエストロゲンが減少することも、一時的な記憶力低下の要因になっています。
運動で脳を活性化!
自律神経や女性ホルモンの乱れを抑えるためにも運動は大切。リモートワークなどで長時間座って作業をしていると、血行が悪くなって自律神経が乱れる原因に。散歩などの身体活動でセロトニンの分泌を促せば、幸福感が増すほか、記憶力UPにもつながります。
『美的』2023年12月号掲載
イラスト/ミキタナカ 構成/宮田典子、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
「加藤プラチナクリニック」院長。「脳の学校」代表。脳科学音読法や脳番地トレーニングの提唱者。最新刊『一生頭がよくなり続けるすごい脳の使い方』(サンマーク出版)ほか、著書多数。