美的GRAND
健康・ヘルスケア
2023.10.8

「食べることが怖い」摂食障害が、低年齢化し増加傾向に…。もしや?の時に、私たちができること|biiku

やせたい! と言いながら食欲に負け、ダイエットに頓挫するなら心配無用。警戒すべきは、強い意志を貫き体重を落とす「神経性やせ症」。小学校高学年から中高生の女子に多い摂食障害で、低い自己肯定感や不安も絡んでいるといいます。biikuの子供のダイエット特集最終回(全3回)。

思春期の不安を、やせる達成感で紛らわす?

思春期の100人にひとりくらいの割合で発症する神経性やせ症。かつては拒食症と呼ばれた摂食障害で、近年は低年齢化と増加傾向にあり、コロナ禍の休校やリモート授業後に急増したという報告も。治療が難しく、その後の健康──人生に重篤な影響をもたらすのは、第1回 の通り。

18歳未満の子供の成長の目安となるのが、2014年から学校保健で積極的に活用されるようになった成長曲線(第2回 参照)。数十年にわたる健診データを統合して数値化したもので、肥満、やせ、低身長などの早期発見が可能になったといいます。

子供の摂食障害の治療に詳しく、『家族の力で拒食を乗り越える─神経性やせ症の家族療法ガイド─』(マリア・ガンシー 著/星和書店)を監修した井口先生曰く、「健診後、成長曲線から外れたのを機に介入し、初めて我が子の病的状態に気づく親も。神経性やせ症は手のかからない『いい子』に多く、元気いっぱいに見えて学校にも行きたがる一方で、あの手この手で食べず、やせる行動に執着する。そして、本人もうすうすマズいと感じているのに抜け出せない深刻なケースも少なくありません」

子供(18歳未満)の体格判定基準では、性別、年齢別、身長別の計算式で求められる標準体重の−20%以下がやせ、+20%以上が肥満と定義されています。「肥満も問題ですが、飢餓状態になると脳が萎縮して認知が歪み、心臓や肝臓など内臓の機能も低下。神経性やせ症は治療が難しく、予後も悪い。そのため治療を開始するときは、上記の数字を示して親子で危機感を共有してもらいます」(井口先生)

子供が頑くなに「やせる」と言って有言実行。どうすれば?

成長期の食欲を抑え込んでまで細い体を求める理由は、いったいどこにあるのでしょう。そして、そんな様子が見て取れたとき、私たち親はどうすればよいのでしょうか?

「根底には、『どうせ私なんて』というネガティブ思考があるようです。思春期は、仲間外れにされたくない、かわいく見られたいなどの欲求が強く、やせれば皆に受け入れられると考えたり、不安や悩みを『やせればうまく行く』とすり替えてしまったり。まだ自分の考えが確立していない子供は情報に流されやすく、エスカレートしやすい。神経性やせ症は心の病気です。食べること、体重が増えることを異常なまでに恐れ、治療は困難を極めます」

観察をすれば“兆候”は見つかると井口先生。そして、気付いたときの“初動”も教えていただきます。

「体重が3か月変わらない、身長が伸びない、好物を食べない、頻繁に体重を量るなどの変化があれば、どうしたの? 何かあったの? と声をかけ、『やせたい』の裏側にある不安や悩みを受け止めてあげてください。それでも、やせに強くこだわるようなら、科学的な事実に基づく声かけを。一緒に成長曲線を書いて体の状態を把握し、低体重のリスクを説くことも必要になるでしょう」

もしかして…摂食障害? まずは厚生労働省や専門団体のHPへ

〈女性の健康推進室 ヘルスケアラボ〉
摂食障害(神経性食欲不振症・神経性過食症)セルフチェック表も。リンクはこちら

〈摂食障害情報ポータルサイト〉
一般向けの相談窓口・受診案内など。リンクはこちら

 

星ヶ丘マタニティ病院 副院長

井口敏之先生

 

『美的GRAND』 2023年 夏号掲載
イラスト/すずきあさこ  文/片岡えり  構成/佐野有子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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