不眠、冷え、PMS、頭痛などの“プチ不調”に悩んでいるなら! いまさら聞けない『漢方』のキホン5
厳しい残暑の中、夏バテとともに「なんとな~く、しんどい」が積み重なる時期。病院に行くほどでもなさそうだけど、今抱えているこの不調をどうにかしたいなら試してみる価値あり!
\美的クラブにアンケート!/漢方ってなんだろう
体質を改善して健康な体を作ることを目標にする漢方は、病院で診断がつかない「疲れやすい」「めまいがする」といったプチ不調を解決することを得意としています。病院に行く程ではないと思って我慢してしまったり、諦めてしまう前に、漢方でなんとなく不調を解決してみませんか?
Q.『美的』読者のプチ不調は?
1位 夏バテ
2位 頭痛
3位 冷え
今夏も酷暑で「夏バテ」が圧倒的1位に。暑さで寝苦しさが続き睡眠不足になったり、逆にエアコンで冷えてしまったり、夏バテによる不調は根が深い様子…。頭痛と冷えはわずかの差で、ほかは婦人科系の悩みが多数に。
Q.漢方のイメージは?
2023年6月30日実施。n=105
漢方=漢方薬という認識が強く、薬についてのネガティブな印象も。漢方薬には即効性のあるものもたくさんあり、苦さは錠剤で解消も可能。価格も保険適用のものがあるので、次ページをチェックしてみて!
\今さら聞けない/『漢方』のキホン5
今こそ漢方を始めるチャンス!続けるコツは“細く、長く”
漢方は難しい…と思っている方が多いと思うのですが、実は誰にでも寄り添える医療が漢方だと思っています。よく風邪のひき始めに葛根湯を飲むように、「あれ、調子が悪いな…」と感じたときが漢方薬の出番!
漢方は人間が本来もっている自然治癒力を高めて、体質改善へと導く医療です。体質改善を促すには漢方薬以外にも、自分でできる健康の心掛け“養生”が重要です。例えばストレッチで血流を促したり、食生活を見直したり、簡単でお金がかからないことばかりです。漢方外来にいらっしゃる患者さんにも、薬がすべてではないことを前提に、漢方的な養生のご提案もしています。養生はストイックにならず、細く、長く続けるのがコツです。
この何年か、私たちはコロナ禍を経て、自分で自分の体調を管理することの大切さを再認識させられました。マスクや手洗いのほかにも、免疫を高めるための生活習慣が以前よりも根づいたのではないでしょうか。病気になりにくい体作りへの意識が高まった今こそ、漢方を始めるいい機会ではないかなと思います。
1.台湾、韓国、日本…漢方は各地で 独自の発展 をしている
漢方医学は中国が起源。歴史は長く、 日本人に合うように独自に発展してきた医学 です。西洋医学が入ってくる明治初期までは、漢方が日本の医学の主流でした。また、 台湾や韓国でも古代中国医学をルーツに、呼び方は違えど、その国ならではの漢方が根づいています。
「個人的には、中国や台湾にある生薬市場が気になります。生薬が量り売りされて、日本よりも漢方が身近に存在しているのです」(堀場先生)
2.病気を遠ざけるには プチ不調=未病 に対処するのが漢方!
病名がつく程でもない不調といえど、放置すると病気になる可能性も。 ここまでが健康、ここからが病気とはっきり区別できず、グラデーションになった部分を漢方では「未病」と呼びます (下図参照)。
「スマホやインターネットの普及で便利になった一方で、たくさんのストレスにさらされがち。生活や勤務形態の変化で、不調になる方も。漢方の知恵を活用して未病の改善を心掛けましょう」(堀場先生)
3.漢方薬の 選び方&使い方
漢方の専門医がいる病院やクリニックで処方される漢方薬のほか、薬局などで買える市販の漢方薬も。ただ、病院やクリニックで処方されるものと比較して、中身や量は異なることもある。また、漢方専門薬局で薬剤師が生薬をブレンドしているものは、保険適用されず高額になることも。
「症状を診断して適切な漢方薬を選んでくれるオンラインショップも便利ですね。 体調に違和感を感じたときが飲むタイミング! 」(堀場先生)
\症状別に漢方を選べるサイト/
【クラシエ】
https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/product/symptom/
【ツムラ】
https://www.tsumurakampo.jp/product/
4.疲れやすい、むくみやすい…etc.その人の 体質や症状に合った処方 をするための診察方法
漢方では、その人の体質と症状を合わせた現在の体の状態を見分けるために、“虚実”“寒熱”“気血水”などの考え方を基に診察。そのため、 同じ不調でも体質や症状によって対処の仕方が変わるのが特徴 です。
「漢方は心身両面から総合的に診断する、いわばオーダーメイド診療。診断を受けて、健康に良いとされることが必ずしも自分に合っているとは限らないことに気づく患者さんも多いんですよ」(堀場先生)
病気に対する抵抗力や反応を見る 虚実(きょじつ)
【実とは】
気力が充実して、力がみなぎっている状態。体力があり、病気に対する抵抗力も強い傾向にある。
【特徴】筋肉質/顔色が赤いか白い/声が大きくて高い/汗をよくかく/胃腸が強く便秘傾向/大食/活発/舌の色が赤もしくは白で舌に付着する舌苔が厚い/暑がり
【虚とは】
気力が衰え、力が抜けている状態。基礎体力がなく、病気に対する抵抗力も弱い虚弱体質である。
【特徴】
細くて華奢/顔色が悪い/声が小さくて低い/じわじわと汗が出る/胃腸が弱く下痢傾向/少食/消極的/舌の色は淡く舌に付着する舌苔は薄い/寒がり
新陳代謝による体の状態を見る 寒(かん)と熱(ねつ)
「寒」は顔が青白く、寒気がして震えている状態。「熱」はほてりがあり、顔が赤みを帯びて、発汗がある状態。本人の自覚症状によって判断するため、体温が高くなくてもほてっていれば「熱」、熱が出て寒気があるなら「寒」になります。
不調の原因を探るための物差し 気(き)・血(けつ)・水(すい)
漢方では「気・血・水」の3つの要素が体内をうまく巡ることで、心と体の健康が維持されると考えられています。これらが不足したり、滞ったり、偏ったりしたときに不調が出てくるのです。次のページではセルフチェックができるので、自分の不調がどのタイプによるものかを知って、養生の傾向と対策の参考に!
【気】
「元気」「正気」「気合」の“気”と一緒で、目に見えないエネルギーのこと。自律神経の働きに近いものとされています。血や水の流れを促し、体を動かす原動力に。
【水】
血液以外のリンパ液など体液全般のこと。水分代謝や免疫システムなどに影響し、心身を正常に機能させるために必要なもの。体内の水分バランスを調整し、血の原料となる。
【血】
主に血液を指し、体のすみずみを巡ることで全身に酸素や栄養を届けます。臓器の機能を活発にして、精神の安定にも。血は十分な食事や運動から作られます。
5. 漢方薬+養生 が体と心を整えるコツ!
漢方薬は比較的体に優しい成分でできている、といって頼りすぎるのは禁物。 普段の食事を見直したり、睡眠をたっぷりとって適度な運動を習慣づけたり、養生を心掛けることが大切に。
「漢方的には、日々の食事が実は薬だったりもします。自分の体を自分で把握できるように、日々チェックしてくださいね」(堀場先生)
『美的』2023年10月号掲載
撮影/川上輝明(bean・静物) スタイリスト/来住昌美 イラスト/ボブ.a.k.a.えんちゃん 構成/宮田典子(HATSU)、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
日本東洋医学会漢方専門医・指導医、日本産婦人科専門医。日本漢方生薬ソムリエ。慶應義塾大学医学部漢方医学センター医局長として外来や、研修医の指導に携わりながら、同大学病院の婦人科外来も担当している。