健康・ヘルスケア
2022.6.8

電車に乗れない、美容院に行けない…パニック障害とは?【女医に訊く#200】

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満員電車や美容院などで、あるいは熱中症になったときやスキューバダイビングをしたときに突然、強烈な不安に襲われて、心臓がドキドキしたり、めまいがしてフラフラしたりしたことはありませんか? パニック障害について、精神科専門医の松島幸恵先生に教えていただきました。

10人に1人は起こすパニック発作とは?

パニック発作とは、激しい苦痛、不安、恐怖などが突然現れて短時間で治まる発作のこと。パニック発作では、以下の身体症状や精神症状を4つ以上伴います。

・動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
・発汗
・身震いまたは震え
・息切れまたは息苦しさ
・窒息感
・胸の痛みまたは胸部の不快感
・吐き気または腹部の不快感
・めまい、ふらつき、頭が軽くなる、または気が遠くなる
・寒気または熱感
・しびれまたはチクチク感
・現実ではない感じ、または自分自身から離脱している感じ
・抑制力を失う、またはどうかなってしまうことに対する恐怖
・死ぬことに対する恐怖

「パニック発作中は動悸などが顕著で『死んでしまうかもしれない』と感じやすいため、多くの方は内科や救急外来を受診されます。ところが、そこでは体に何の問題も見つからず、いろいろな科をまわった結果、精神科を受診される方が多いですね」と話すのは、精神科専門医の松島幸恵先生。

パニック発作は、10人に1人の割合で一生のうち1回は起こすといわれています。最近は、パニック障害であることを公表する著名人も増え、広く知れ渡るようになりました。

「パニック発作は多くの場合、1回だけしか起こりません。ほとんどの方は、『あれは何だったんだろう?』で済んでいるようです」(松島先生)

パニック発作とパニック障害はどう違うの?

「パニック障害は予期しないパニック発作が何回もくり返されること。パニック発作がまた起きるのではないかと思っていると、余計に不安が高まりますよね? すると、どんどん不安が高まって、またパニック発作が起きてしまう……という悪循環に陥り、障害になってしまうのです」(松島先生)

パニック発作をくり返すと、「また発作を起こすのではないか」という恐怖感をもつようになります。このような症状は予期不安といわれており、パニック障害の人の多くが予期不安を感じています。

「パニック障害の病気の本質的な部分は、予期不安です。この予期不安が強くなり過ぎると、特定の場所や状況を避けるようになります。すると、広場恐怖という症状が生じてきてしまうのです」(松島先生)

広場恐怖とは?

広場恐怖はパニック障害のなかでもっとも重い症状のひとつ。以下の5つの状況のうち2つ以上について恐怖または不安を感じます。

・公共交通機関の利用
・駐車場、市場、橋など、広い場所にいること
・店、劇場、映画館など、囲まれた場所にいること
・列に並ぶ、または群衆の中にいること
・家の外に1人でいること

広場恐怖になると、パニック発作や耐えられないような症状が起きたときに、すぐに助けを求められなかったり、逃げ出せないような場所を避けるようになるため、日常生活に支障を来すことがあります。

「若い女性の場合、美容院、歯医者、マツエクサロンなど、椅子に座って施術を受ける状況に恐怖を感じる方が多いですね。いずれも予期不安で、万が一発作が起きたときにすぐに逃げられない……と思って怖くなってしまうのです」(松島先生)

美容院のなかには、シャンプー時の目隠しをなくす、ケープを巻かない、短時間でカットのみ行う、いつでも中断・休憩ができるなど、パニック障害に対応してくれるところもあります。心当たりのある方は、問い合わせてみましょう。

精神科専門医

松島幸恵先生

文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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