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2023.8.9

月経トラブルの救世主!? 知っておくべき「ピル」のこと【わたしにもできるフェムテックBeauty】月経・生理編⑥

「ピル」とは経口避妊薬のことで、正しい使い方をすれば、その避妊効果は99.7%とされています。そのため、「ピル=避妊したいときに飲む薬」というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、むしろ美的世代にとってうれしいのは、月経困難症や生理不順、PMSなどの不調を改善するといったピルの副効用。実際、婦人科では、月経困難症の治療薬として「低用量ピル」が処方されています。最近では、オンライン処方サービスも増えて、低用量ピルがより身近なイメージに。そこで、ピルに興味がある、使ってみたいと思っているあなたのために、ピルの基本を解説します。自らも25歳から婦人科系疾患予防のために低用量ピルを服用しているという「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」院長・産婦人科医の岡田有香先生に回答していただきました。

Q. どうしてピルで避妊ができたり、月経トラブルを改善できたりするの?

そもそもピルとは、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が配合された錠剤。本来女性の体は、脳から卵巣に指令を出して卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体刺激ホルモン(LH)を分泌させ、排卵を起こすしくみになっています。ところがピルから女性ホルモンを取り入れると、脳はFSHやLHを分泌させる必要がないと判断して卵巣への指令をストップ排卵が起こらなくなるため、妊娠しないというわけです。

(1)下垂体がピルに含まれる女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)をキャッチすると、排卵を促すホルモン(FSH、LH)の分泌が抑えられ、排卵が起こらなくなる。
(2)子宮内膜が厚くならないので、もし排卵して受精したとしても受精卵が着床しにくい。
(3)子宮の入り口にある頸管の粘液を変化させ、精子が子宮に入りにくくする。

また、ピルで排卵が止まると、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなることがなく、内膜が剥がれるときの子宮収縮の痛みや出血も軽減されます。生理痛や過多月経などの改善にピルが有効なのはそのためです。ピルの服用で女性ホルモンのバランスが整うため、PMSの抑制やニキビの改善にも効果を期待できます。

Q. よく聞くのは「低用量ピル」ですが、ほかにも種類はありますか?

ピルは、含まれるエストロゲンの量によって、多い方から「中用量ピル」(0.05mg)>「低用量ピル」(0.05mg未満)>「超低用量ピル」(0.03mg未満)に分類されます。低用量ピルは、避妊効果や生理周期の安定、肌あれ改善などの効果が認められているピル。月経困難症や子宮内膜症などの治療目的で使用されるのは主に超低用量ピルで、保険が適用されます。なお、中用量ピルは、生理日を移動させるために使われることが多いです。

また、同じ低用量ピルや超低用量ピルに分類される中でも、薬(ブランド)によって配合されているホルモンの量は少しずつ違うので、医師の診断により、その方の症状や目的に合わせて処方するのが原則です。

Q. 毎日飲み続けるのでしょうか?

原則、生理の初日から毎日1錠ずつ飲み続けます。飲み続ける期間は、21日間飲んで1週間休む、24日間飲んで4日休むなど、ピルの種類によって違います。120日間飲み続けて、年に3回くらいしか生理を来なくするタイプもあります。その方の症状や目的、ライフスタイルによって、医師が合うものを処方します。

Q. 飲み忘れたときは、どうしたらいい?

飲み忘れに気づいた時点ですぐに1錠飲み、その後はいつも通りに服用を続けます。3日以上飲まずに生理が来てしまったら、そこを休薬期間と捉え、再スタートしてください。

Q. 副作用はありませんか?

女性ホルモンをコントロールするため、飲みはじめの1〜3か月は副作用が出やすいと言われています。症状は、吐き気、むかつき、乳房の張り、頭痛、眠気、下腹部痛、腹痛、むくみなど。不正出血がある人も1割以上はいるようです。その場合、ピルの種類を替えると改善されることもあります。また、ピルの服用によって、1万人に5〜9人の割合で血栓症を発症すると言われています。ピルを内服していない方も1万人に2〜3人は血栓症を発症します。そのため、ピルが飲める方かどうかの問診や血液検査などの検査が重要です。

Q. ピルを飲むのをやめたら、生理は来ますか?

まず、ピルは排卵を止めるものであって、生理を止めるものではありません。なのでピルを服用していても生理は来ます。ただし、子宮内膜が厚くならないため、経血量はかなり抑えられます。ちなみに、ピルを飲むのをやめたら、排卵は3か月以内に90%復活します。ピルの服用を続けていたからといって、その後、自然妊娠ができにくくなるようなことはありません。

Q. 生理日をズラしたいときは、いつ飲めばいいですか?

生理をズラしたいときは、基本的に中用量ピルを推奨します。生理を早めたい場合は、本来の生理予定日の前月の生理3〜7日から飲みはじめ、10〜14日間毎日続けます。また。生理を遅らせたい場合は、生理予定日の5〜7日前から飲み続けます。

Q. ピルをオンラインで購入しても大丈夫?

ピルの処方には医師の診察が必須です。オンラインのピル処方サービスも、問診記入や医師の診療をクリアした上で処方されるものなら、大きな問題はありません。忙しい日常の中で気軽に入手できるのはメリットだと思います。ただし、そもそもの月経トラブルの原因として子宮内膜症などの病気が隠れていないかをチェックしたり、血栓症など副作用のリスクを避けるためにも、本来は婦人科に足を運び、内診や血液検査を受けることをおすすめします。

Q. 月経トラブルがある限り、ピルを飲み続けた方がいいの?

出産回数が減った現代女性の月経回数は昔よりはるかに多く、その分、婦人系疾患やトラブルが起こりやすい状態にあります。過多月経や生理痛などの月経困難症がある人の約70%は子宮内膜症になると言われていて、それを放置すると不妊のリスクも高まります。妊娠を望むときはもちろん服用をストップすべきですが、その予定がないのであれば、疾患予防やトラブル改善のために飲み続けることをおすすめします。

グレイス杉山クリニックSHIBUYA 院長・産婦人科医

岡田有香 先生

 

イラスト/リバー・リー(Softdesign) 構成/つつみゆかり

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