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ヘアのお悩み
2024.3.17

【美髪ケア】令和で話題の「スキニフィケーション」って何?|美的GRAND

本邦初公開!「頭皮マップ」で髪の土壌を知り尽くし、洗浄・保湿・UVケア・血行促進で美髪を育てよ。

美髪を作るための頭皮のケアは、スキンケアを基本に!

\古今東西、豊かな髪は女の願い。令和で話題のすきにふぃけーしょんって何?/

頭皮ケアはスキンケアの応用。4本の柱を軸に「炎症のない頭皮」へ

東京工科大学 応用生物学部 毛髪科学研究室

岩渕徳郎教授

毛髪診断士、美容エディター

伊熊奈美さん

伊熊 今日はよろしくお願いします。さっそくですが、「良い髪は良い頭皮から」と言いますが、実際のところは?

岩渕 結論から言うとイエスです。例えば赤みのある頭皮はトラブル(炎症)を起こしていて、ほかのエリアと比べて皮脂が多く水分が少ない。そこから生える毛は切れやすく、ハリ・コシも弱まっていることがわかっています。太さは変わらないんです。質が劣化します。

伊熊 皮脂が多くて水分の少ない皮膚にトラブルが起きるのは、顔と同じですね。

岩渕 頭皮の方が圧倒的に皮脂量が多く、頬の約5倍。頭皮の毛穴は頰に比べて大きいため毛包も大きく、そこに付随する皮脂腺から出る皮脂は多くなります。頭頂部がいちばん多く、後頭部が最も少ない。

伊熊 はい。後頭部は赤みが出やすいと思うのですが、それは皮脂が少ないからというより、髪が密集していて洗い残しが多いからと推測するのですが、いかがですか?

岩渕 本来の髪の密度は頭頂部がいちばん高いですが、髪の重なりで後頭部はボリュームがあります。すすぎ方が悪くて残ったシャンプーが刺激になって炎症を起こし、角層が剥がれて乾燥する、というトラブルを起こしている可能性はあります。また、皮脂を落としすぎると皮膚の水分蒸散を防ぐ皮脂膜が作られず、乾燥が進んで炎症につながることもあります。

伊熊 つまり、「炎症のない頭皮が良い頭皮」。となると、いかに頭皮が炎症を起こさないか、が頭皮ケアのカギになりますね。

岩渕 そうですね。なお、皮膚の炎症と聞くと紫外線対策を思い浮かべますが、頭皮においては黒髪のメラニン色素が防御するため、毛分け部位以外はそこまで神経質にならなくて大丈夫。

伊熊 元々頭頂部がいちばん髪の密度が高いのに、薄毛や脱毛などのトラブルは頭頂部に現れやすいですよね。それは血流が関係しているのでしょうか?

岩渕 頭部の中では頭頂部の血流が最も少ないです。血流が多いと髪のハリ・コシが増して毛が太くなるという結果が出ています(※)。血流量の増加のためには頭皮マッ
サージが有効ということです。

伊熊 フェースケアは洗浄・保湿・UV対策が3大柱で、頭皮は血行を促すマッサージを加えたい。頭皮ケアのスキンケア化=スキニフィケーションです。

岩渕 はい、そのとおりだと思います。

女性の髪の加齢変化は女性ホルモンが影響している?

【頭皮ケアの4つの柱】

  • 洗浄
  • 保湿
  • UV対策
  • 血行促進

伊熊 髪と頭皮の加齢変化についても教えてください。例えば、顔がたるむと頰の毛穴もたるむように、頭皮もたるんで毛穴がゆがむ? 年齢で毛穴が変形して、髪がうねったりするのかな、と。

岩渕 頭皮の皮膚も筋肉も緩みますが、目に見えてわかる程はたるまないでしょう。毛穴に関しては、数万の生きた毛根、毛髪に阻まれ、その形状変化を観察できる技術はまだないと思いますよ。

伊熊 確かに。私たちも頭皮について考えるとき、表面の髪に目が行きがちです。

岩渕 女性の髪に最も太くてハリ・コシ・弾力があるのは30代で、40歳を境に変化し、量も減少。女性の薄毛の原因はまだ未解明ですが、40歳前後で変化するのは女性ホルモン。因果関係は不明なものの、男性より相当複雑なのは確かです。

伊熊 なるほど。複雑ということは、どこにチャンスがあってもおかしくない、ともいえますね。40歳を超えてからも、良い髪を生む良い頭皮を育てたいと思います。

前代未聞!大人美髪復活「頭皮MAP」

頭皮のスキンケア化=スキニフィケーションのために知っておきたい頭皮のこと。トラブルが出やすいエリアや年齢の影響を受けやすい箇所などを、カテゴリー別にマッピング。今までにない「頭皮の地図」はこちら!

※ 東京工科大学・岩渕徳郎教授(A)、AMATA 代表・美香さん(B)、ラ・カスタ オフィシャル ヘッドセラピスト・細川ひろ子さん(C)、デミ コスメティクス(D)、タカラベルモント(E)に取材しています。

【毛髪編】

【健康な状態での基本情報】
全頭で約10万本/ひとつの毛穴から2〜3本/太さは50〜100μm /主成分はケラチンタンパク/水分は約12%、脂質は約3.5%/強度は100〜150g(コーヒーカップ1個分の重みに耐えられる)/ 1か月で約1cm伸びる/ 1日で50〜150本抜ける/弱酸性

【ヘアサイクルは4〜6年】
「毛母細胞のある毛乳頭から新しい髪が作られ(新生期)、それに押し上げられて前の毛が抜け(脱毛期)、作られた髪が成長し(成長期)、毛乳頭の活動が弱まって(退行期)、活動を止める(休止期)。この髪の一生がヘアサイクル」(B)

【加齢で髪内部の乾燥も進む】
「年齢を重ねると、髪も水分保持力が低下します。それにより髪内部の乾燥が進み、傷みやすくなったりエイジングの現象が出てきたり。たんぱく質も減少してダメージが深くなり、より入念なケアが必要になります」(C)

【女性は髪全体が薄くなる「びまん性脱毛」が多い】
「女性の薄毛は髪全体が薄く見えるタイプ(びまん性脱毛症)が多く、加齢により女性ホルモンの分泌量が変化してホルモンのバランスがくずれることが原因のひとつ。また、髪の一部が引っ張られて薄くなる“牽引(けんいん)性脱毛症”も。男性型脱毛症は、頭頂部や前頭部が薄くなります」(D)

【構造編】

【健康な状態での基本情報】
頭蓋骨は23個の骨が組み合わさっている/50以上のツボがある/頭頂部には筋肉がない/頭皮より顔の方が筋肉の活動量が活発

【頭部のツボの作用】
「抜け毛や白髪に関わるのが角孫(かくそん)。百会(ひゃくえ)は自律神経を整え、太陽と和髎(わりょう)は眼精疲労、首のつけ根にある完骨・風池・天柱と後頭部にあ
風府はむくみや肩こりに関係します」(C)

【髪の立ち上がりと立毛筋の関係】
「毛髪1本に付随している立毛筋が柔らかく伸縮すると毛穴が引き締まり、髪が垂直に立ちやすくなります。立毛筋は鍛えることができず、加齢により立毛筋が緩んだ状態で硬直してしまうと毛穴が広がります」(D)

2種類のEMSで頭筋と表情筋にアプローチしながらフェースラインの肌を引き上げる。
パナソニックバイタリフト ブラシ EH-SP60 ¥39,600(編集部調べ)

3種のアタッチメントつきで全身に使用可。筋肉だけでなく肌表面もケア。
ヤーマン YA-MAN TOKYO JAPAN ハイパーフェイスリフトブラシ ¥132,000

【加齢は帽状腱膜や頭部筋肉に影響大!】
「さまざまな人の頭皮を見て実感することは、帽状腱膜の状態で顔が変わること。頭皮の筋肉を動かすと帽状腱膜とつながった腱膜が伸び縮みするので、目を見開いてからギュッと閉じたり口角を思いきり上げたりして頭部の筋肉につながる表情筋に刺激を」(B)、「顔と同様、加齢によりコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンが減少して真皮が薄くなり、脂肪層も減少。筋肉も腱膜も薄くなります」(D)、「前頭筋が弱まると額に横ジワができたり、顔全体が下がって見えることが。側頭筋が弱まると顔がたるみやすくなり、後頭筋が固くなると血行が悪くなって毛根部に栄養が行き届かなくなります」(E)

【皮膚編】

【健康な状態での基本情報】
毛穴の数は顔の約1/5/毛穴の大きさは顔の約5倍/皮脂腺は顔のTゾーンの約3倍、汗腺は胴の約2.5倍/頭皮(角層)の厚みは顔の約4倍/頭皮の常在菌は約90%が3種の菌(アクネ菌・表皮ブドウ球菌・コリネバクテリウム)


【頭皮のリフトアップは顔にも影響する】
「緩んだまま固まった立毛筋をほぐすように頭皮のリフトアップケアを行うと、顔のシワも減少する結果に。頭皮と顔は1枚の皮膚なので相互に影響しますが、リフトアップには頭皮のケアが効果的です」(D)

※古い脂質と角質を落とし髪を根元からふんわりさせる頭皮用美容液を用いて、イーラル独自の頭皮ケアメソッド「ヘッドキュア」を施術。その前後をVISIA( ビジア)というシミやシワなど肌の状態を詳細に分析することができる肌診断機器で測定することで、シワの数を解析。緑色の線が画像解析で認識されたシワとなり、施術前のシワの数を100%とした場合、施術後には37.9%に減少。資料提供/イーラル株式会社


出典/花王ヘアケアサイト

【頭皮マッサージやヘッドスパは頭皮に好影響】
「頭皮は加齢により薄く、固く、動きにくくなります。頭皮マッサージを行わないと血流量が減るため、頭皮マッサージは有効。側頭部の場合、押す・しっかりこする・もむ・軽くこするの順で血流量がアップ。気持ちがいいから血流量が増すわけではないのです」(A)、「筋肉をもみほぐす揉捏(じゅうねつ)法により、皮膚温度が上がることを確認。血流量が上がるとむくみが解消されるため、ヘッドスパは頭皮を健やかにするのに有効です」(E)、「 頭皮の血流量が増えると、髪の育成に必要な栄養や酸素が届けられるため、健やかな毛髪を育むことにつながります」(C)

【冬の皮脂に要注意!加齢でニオイも変化】
「夏は皮脂と共に汗も出るため流動性があり、毛穴に皮脂がたまりにくい。冬は汗が出にくく外気温も低いため、皮脂が固まって毛穴に包まれ残りやすい傾向に。夏程注意しなくなることもあり、冬の頭皮のニオイは意外と盲点です」(D)、「ニオイは出てくる皮脂の違いによって変わります。年齢が上がるにつれ皮脂の粘性は高くなって長鎖脂肪酸も増加し、ニオイが変化します」(A)


【頭皮の色で健康チェック】
「頭皮の色は健康状態のバロメーターといわれます。なかなか頭皮の色を見る機会はないと思いますが、専門サロンなどで一度見ていただくと状態が把握できておすすめ」(D)

『美的GRAND』2024冬号掲載
撮影/小川 剛(近藤スタジオ) イラスト/きくちりえ 構成/斉藤裕子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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