健康・ヘルスケア
2018.3.20

女医に訊く#5|生理中の子宮の痛みは生活習慣やファッションでも軽減!?

腹痛や頭痛、体全体のむくみやイライラ……月に1度訪れる生理の悩み。これって我慢するしかないの? 特に生理痛がひどい場合、婦人科系疾患の可能性はある? 他の人とは比べようがないだけに、どこからが“ひどい”痛みなのかがわかりにくいのが実情です。生理痛について、婦人科医の福山千代子先生に伺いました。

生理痛の原因は子宮がギュッと収縮するから

「生理痛は大きく分けて2つの種類があります。ひとつは体の仕組みで自然に発生する『機能性月経困難症』。子宮の収縮やホルモンの変化が関係する痛みですね。もうひとつは子宮や卵巣が何らかの病気を患っており、それが原因で起こる『器質性月経困難症』です」(福山先生)

前者の機能性月経困難症は、思春期から20代前半の、若い世代に多い症状です。理由は、“子宮が未成熟な状態にあること”。そもそも生理とは、子宮の内側にある子宮内膜が、月に1度剥がれ落ちて、経血となって体外に押し出される現象です。

「小さくて未熟な子宮は、子宮内膜を押し出そうと、一生懸命収縮を繰り返します。この時に痛みが発生するんですね。大人になって子宮が成熟してくると、自然に痛みは減少し、特に出産を経験すると痛みが軽減する方が多いようです」(福山先生)

お腹だけでなく頭も痛くなるのはなぜ?

その一方で、子宮が成熟しているはずの大人の女性でも、生理痛に悩んでいる人は多いはず。これは、生理前になると体内に分泌する“痛みの原因物質”が関係しています。

「排卵から生理が始まるまでの“黄体期”になると、体内に“プロスタグランジン”という痛みの原因物質が分泌されます。この物質が体内の受容体にくっつくことで、痛みを感じるんですね。こちらも機能性月経困難症の一種といえます」(福山先生)

人によっては生理中にお腹や腰など子宮のまわりだけでなく、頭痛がするケースも。これはプロスタグランジンが血中に放出され、子宮から離れた場所で受容体と結合するためだそうです。

ここまでは、体の仕組み上発生する、“自然な痛み”。しかし、生理痛には“病気が原因で発生する痛み”も存在します。

子宮筋腫や子宮内膜症が原因の痛みも!

少々気を付けなくてはいけない生理痛、『器質性月経困難症』は、体に何がしかの病気があるために発生する痛み。子宮筋腫や子宮内膜症があると、生理の時に強い痛みを感じたり、経血の量が増えたりします。これらの病気は女性ホルモンの影響を受けるため、器質性月経困難症は、生理の回数を重ねる……つまり年齢とともに増加するのが特徴です。

子宮筋腫の場合、良性でサイズが小さければ、自覚症状はほとんどありません。しかし筋腫が大きく成長すると、子宮周囲の臓器を圧迫し、痛みの原因となります。また子宮筋腫があると、子宮内膜の表面積も増えるため、経血の量が増えることに。

「生理前後だけでなく長期間痛みが続く場合、子宮内膜症の可能性があります。本来子宮内膜は、子宮の内側を覆っていますが、子宮以外にできてしまう病気ですね。生着した場所に炎症や癒着し、強い痛みを感じるケースが多いです」(福山先生)

いずれの場合も、“強い痛みがあること”“経血の量が増えること”がわかりやすいサインといえそう。もし思い当たるようなら専門医に相談してみましょう。

生理痛の原因と症状

機能性月経困難症

・思春期~20代前半の若い世代に多い

・子宮の収縮による痛み

・生理前から生理3日目ぐらいに発生しやすい

・年齢や出産経験とともに減少する

器質性月経困難症

・年齢を重ねるほど発生しやすい

・子宮筋腫や子宮内膜症など病的な要因による痛み

・排卵時から生理後まで、人によっては痛みが長期続く

生活習慣やファッションでも子宮の痛みは悪化する!?

普段何気なく着ている流行りの服や、食べているものが、生理痛を悪化させているとしたら……? 福山先生は「血の巡りを妨げる習慣は、生理痛を悪化させる要因です」と語ります。

「巡りが滞ると、血は固まりやすくなります。そんな血の塊を押し出すために、子宮が強く収縮しますから、痛みもひどくなるんですね。女性に多い“冷え”は生理痛の大敵。冬の寒い時期はもちろん、夏場の冷房や冷たい飲み物にも注意が必要です」(福山先生)

最近ではコンビニでも、水やお茶などの“常温コーナー”を設置しているお店も増えてきました。キンキンに冷えたドリンクではなく、意識して常温や温かいものを摂る習慣をつけてみるのもいいかもしれません。

また、お腹や足のつけ根を締めつける、タイトなファッションも血流低下の要因。

「あくまで個人的な印象ですが、生理の時に貧血で運ばれてくる患者さんは、スキニーパンツ率が高かったように思います」と福山先生。朝の通勤途中、満員電車で倒れて緊急で病院に搬送されてくる患者さんのスキニーパンツを看護師さんたちと苦労して脱がせて……、という記憶は一度や二度ではないそう。さらに、睡眠不足やストレスも血流を低下させてしまいます。仕事が忙しい時期や、環境が変わった時などは、生理痛も普段よりひどく感じるかもしれません。

生理痛を全く感じない…コレって逆に大丈夫?

ところで、生理痛を全く感じない人もいるのでしょうか? 福山先生曰く、カウンセリングシートの生理痛の項目に“感じない”と回答する人も一定数いるそうです。

「痛みの感じ方には個人差がありますし、体調にもよりますから、実際の痛みがどれくらいかは分かりません。ただ、子宮内膜症など病気がある場合、強い痛みが生じやすいので、そういう意味では病気のリスクは低いともいえます。生理痛がないこと自体は悪いことではなく、日常生活をおくるうえでも、痛みはないにこしたことはありません」(福山先生)

ただし、“痛みがないからといって、健康とは限らない”のでご注意を。自覚症状がなくても、子宮内に子宮筋腫が発生しているケースは数多くみられるそうで、意識して年に1度は婦人科検診を受けるのがベストです。毎年誕生日の前後を婦人科検診や人間ドックの日にするなど、“年に一度のイベント”として習慣にしてしまうのがよいそうです。

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産婦人科専門医
福山千代子先生
アヴェニューウィメンズクリニック院長。金沢医科大学卒業後、東京大学医学部附属病院など複数の病院で経験を積み、2009年11月より現職。クリニックでは更年期障害をはじめ、月経痛や月経前症候群(PMS)など、女性特有の疾患に関する治療を行っている。
■アヴェニューウィメンズクリニック https://www.aw-clinic.com

文/宇野ナミコ 撮影/藤岡雅樹(小学館)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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