お悩み別ケア
2023.7.15

トラネキサム酸セチルHCl|独自に開発された持続型トラネキサム酸【美容成分大全】

トラネキサム酸セチルHClは、トラネキサム酸にセタノールという成分を結合させて、油になじみやすい性質(親油性)をもたせた”トラネキサム酸誘導体”です。皮膚に吸収されるとセタノールとの結合が外れ、トラネキサム酸として働きます。医薬部外品の「美白」有効成分として認められています。日本化粧品検定協会が美容成分をくわしく解説する【美容成分大全】。成分を正しく理解して、コスメ選びの参考に!

プロフィール

成分名 トラネキサム酸セチルHCl
表示名称 トラネキサム酸セチルHCl(医薬部外品の表示名称:トラネキサム酸セチル塩酸塩)(愛称:TXC)
主な配合アイテム スキンケア
成分のはたらき メラニン生成指令阻止、抗炎症
医薬部外品としての効能効果 美白

どんな「効果・働き」があるの?

  • メラニン生成指令阻止
  • 抗炎症

美白・シミを予防する

メラニン生成指令阻止

紫外線を浴びると活性酸素が発生し、その活性酸素が「メラニンをつくれ!」という指令をメラノサイトに伝え、メラノサイト内で酵素チロシナーゼが活性化します。その結果、メラノサイトでメラニンがたくさんつくり出されます。トラネキサム酸セチルHClは皮膚内でトラネキサム酸となり、メラニン生成指令となる情報伝達物質の増加を抑える働きがあります。

特に情報伝達物質の1つである“プロスタグランジン”をブロックします。メラニン生成指令を抑えることから、過剰なメラニン生成が抑えられ、シミやそばかすを防ぎます。この作用により医薬部外品の「美白」有効成分としても認められています。

肌荒れを防ぐ

抗炎症

皮膚に吸収されるとトラネキサム酸として働くことから、トラネキサム酸と同様に微弱な炎症状態を抑える抗炎症作用も期待できます。トラネキサム酸は、肌荒れを引き起こす“プラスミン”というタンパク質分解酵素の生成を抑えてバリア機能を維持・改善することで肌荒れを防ぎます。

トラネキサム酸を「肌荒れ防止」の有効成分として配合した商品は多くあります。ただし、誘導体であるトラネキサム酸セチルHClは「肌荒れ防止」ではなく、「美白」の効果のみが認められた有効成分です。

美容賢者からの「アドバイス」

日本化粧品検定協会代表理事

小西 さやか


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トラネキサム酸セチルHCl配合製品はシャネルだけ!

トラネキサム酸セチルHClはシャネルが独自に開発した「美白」有効成分のため、現在、医薬部外品としては、シャネルが発売している製品にしか使用されていません。新しい医薬部外品の有効成分はほとんどが日本の企業による申請ですが、トラネキサム酸セチルHClは外資系化粧品企業から申請された数少ない医薬部外品の有効成分です。

トラネキサム酸セチルHClは界面活性剤の性質もある

トラネキサム酸セチルHClは、塩酸(HCl)が結合した部分が“親水性”、セタノールが結合した部分が“親油性”と、1つの分子内に親水性と親油性の部分をもっているため、界面活性剤としての性質をもちます。この性質により、配合製品の安定性を高めることもできます。

「歴史・由来」その他の雑学

一般的に、水に溶けやすい親水性が高い成分は角層となじみにくいため、皮膚内部に吸収されにくい特徴があります。一方、適度な親油性をもつ油になじみやすい成分は、皮膚への吸収が良いとされています。トラネキサム酸セチルHClは、親水性であるトラネキサム酸に親油性であるセタノールを結合させ、適度な親油性にすることで皮膚への吸収性を高めています。皮膚内に吸収されたトラネキサム酸セチルHClは、“エステラーゼ”という酵素によってセタノールとの結合が外れてトラネキサム酸になることで効果を発揮します。エステラーゼが徐々に作用するため、持続性も高いとされています。

歴史

出血したときに血管の傷をふさぐ働きをするフィブリンは“プラスミン”というタンパク質分解酵素の働きによって分解されます。トラネキサム酸は、プラスミンの働きを阻害する「抗プラスミン作用」をもち、止血を行います。医薬分野において、1946年にプラスミンの働きが明らかになり、その働きを阻害する物質の研究が進み、「ε(イプシロン)-アミノカプロン酸」に続いて、1954年に「トラネキサム酸」が岡本彰祐・歌子を中心とする日本の研究者により発見されました。

その後、1963年に作用が究明、1965年に内服薬「トランサミン」が第一三共製薬から発売されました。抗プラスミン作用による止血効果により、皮膚の毛細血管から血液成分が浸透するのを抑えて炎症を鎮める効果もあり、医薬品として湿疹やのどの痛み、口内炎などの幅広い領域で治療に用いられています。

トラネキサム酸は、1995年に医薬部外品の「肌荒れ防止」の有効成分として、2002年には「美白」の有効成分として承認され、さらにトラネキサム酸の誘導体であるトラネキサム酸セチルHClも、2009年にシャネルの申請により「美白」の有効成分として承認されました。

主な原料の由来

合成

医薬品やサプリメントには?

医薬品や食品には使用されません。

注意事項

特にありません。

 

<引用元>
オレオサイエンス, 16(7), 337-344 (2016) 
シャネル株式会社 リリース, 2011年2月24日
薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録 (2008年11月5日,2009年5月28日)

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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