緊張ストレスで体臭がイオウ臭になるってホント?真相を専門家に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は、“体臭”について。緊張ストレスからイオウのような独特の体臭が出るって…ウソ? ホント? 東海大学理学部化学科教授の関根嘉香先生にお答えいただきます。
Q:緊張ストレスで体臭がイオウ臭になるってホント?
「ストレス臭」という言葉を聞いたことがある人も多いのでは? 人は、緊張やストレスを感じると、体臭が独特のニオイに変わるのだとか…。本当なのでしょうか。さっそく、この疑問を関根先生にぶつけてみました! 果たして答えは…?
A:ホント
「資生堂で、緊張による心理的ストレスがかかった人の皮膚ガスを調べてみたところ、ジメチルトリスルフィドと、アリルメルカプタンという主要成分が特定されました。これは、いわゆる硫黄化合物、イオウ系のニオイです」(関根先生・以下「」内同)
皮膚ガスとは?
「体臭の源は、体表面から放散される“皮膚ガス”です。皮膚ガスには300種類以上の物質が含まれていて常に放散されていますが、体調などによって通常以上に強く臭ったりする場合も。それが、一般的に体臭と呼ばれる加齢臭や汗臭、疲労臭です」
- 体臭の源は、体表面から放散される“皮膚ガス”
- 皮膚ガスには300種類以上の物質が含まれている
- 一般的に体臭と呼ばれる加齢臭や汗臭、疲労臭である
なぜ体臭がイオウのニオイに変わるの?
「残念ながら、なぜ心理的ストレスからこれらの皮膚ガスが発生するのか? というメカニズムは、まだ解明されていません」
対処法は?
「このメカニズムが解明されていないため、今のところ、これ! という対処法を挙げるのは難しいです。強いて言うならば、ストレスを溜めない、軽減させることがいちばんでしょうか。市販の汗拭きシートや制汗スプレーなどさまざまな商品がありますが、ジメチルトリスルフィドと、アリルメルカプタンのニオイに対応していないものでは、ふき取ることは難しいでしょう」
ストレスで増えるそのほかのニオイ成分は…
「我々の研究では、交感神経が緊張するような状態、いわゆるストレス状態において、さらにアンモニアが増えることを見つけました。アンモニアによる臭いは“疲労臭”と呼ばれていて、以下の要因が考えられています」
アンモニア臭が増える要因
- 偏った食事(肉や魚)
- 肝機能の低下(お酒の飲みすぎ)
- 筋肉疲労(運動、ケガ)
- 腸内環境の悪化(便秘など)
- 精神的ストレス
アンモニア臭の対処法はある?
「アンモニア臭に対しては研究が進んでいて、対処法もあります。もっとも効果があると考えられているのが、牛乳に含まれる乳糖を原料として作られるオリゴ糖の“ラクチュロース”を摂取すること。これにより、体内のアンモニアが減ることがわかっています。ラクチュロースは、胃や小腸では消化・吸収されず、大腸に到達してビフィズス菌(善玉菌)のエサとなり、ビフィズス菌(善玉菌)を増やしてくれるのです。ちなみに、ラクチュロースは森永乳業株式会社のヨーグルト“毎朝爽快”に含まれています」
Point
・アンモニア臭には、オリゴ糖の“ラクチュロース”が効果的・ラクチュロースは、大腸に到達してビフィズス菌(善玉菌)のエサとなり、ビフィズス菌を増やす
「また、我々の研究では、ストレスによってアンモニアが増える、というメカニズムを利用して、身体の一部に貼るだけで、その人がどれぐらいの緊張状態にあるかを調べられるデバイスを開発しました。腕時計タイプのもので、自分のストレス状態を知るバロメータとして活用させることを目指しています。そして、将来は、皮膚ガスから病気の発見ができるよう研究、開発を進めています」
文/木土さや
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
環境と健康の化学が専門。皮膚ガス研究の第一人者。日本テレビ「世界一受けたい授業」NHK「ガッテン!」をはじめ、テレビ、雑誌でも活躍中。
東海大学理学部化学科 関根嘉香研究室