空気中に「クロカビ」が!? 体内に侵入して増殖する危険なカビの種類とは?

口や鼻から肺に侵入して増殖する、空気中にひそむカビの種類は?日ごろの生活から予防できる方法もご紹介!
弱った肺で増殖を広げて肺アスペルギルス症に!【アスペルギルス】
感染すると、せきやたん、息切れが続いてつらい!
「私たちが1日に吸い込むカビの量は約1万個。アスペルギルスも含まれます。通常は、吸い込んでもせき払いや白血球の力で排除できますが、感染すると肺の中に巣を作って増殖し、肺を破壊していきます。過去に肺の病気をしたり、喫煙習慣があるなど、肺が弱っているとかかりやすいので注意が必要です」(亀井先生・以下同)
長引くせきやたんは受診を!
「原因がはっきりしないせきやたんが2~3週間続いたときは、呼吸器内科を受診して、レントゲン検査を受けましょう。肺アスペルギルス症は進行すると治療が難しくなるので、早めの発見が重要です」
脳を攻撃して髄膜炎に!【クリプトコッカス】
抵抗力が下がっていると、肺から脳へ感染が広がる!
「クリプトコッカスは鳩の糞をエサにして増えるカビ。糞が乾燥すると空中に舞い上がって、人への感染源になります。免疫力が下がっていると感染しやすいので、肺炎に。しかも脳を好むカビなので、肺から脳へとダメージが及び、髄膜炎を引き起こすこともあります。ただし抗真菌薬が効きやすく、多くの場合、内服薬で治ります」
梅雨に増えて肺に侵入。アレルギー性肺炎に!【トリコスポロン】
湿度の高い時期に注意!女性に多い季節性疾患
「6~10月頃、湿度の高い台所やエアコンに多く発生するのがトリコスポロン。吸い込むと、アレルゲンとして肺を刺激して、アレルギー性肺炎のひとつ、夏型過敏性肺臓炎に。風邪のような症状で時期を過ぎると治まりますが、繰り返しかかると肺が固くなって元に戻らなくなるので放置は禁物」
大量に吸い込むとアレルゲンに。鼻炎や気管支喘息に!【クロカビ】
クロカビの多い部屋はアレルギー疾患を招く!
「住まいで目につくクロカビでは、胞子が肺に入り込んでも感染症を引き起こす力はあまり強くありません。とはいえ、大量に吸い込むとアレルギー性鼻炎や気管支喘息など、つらいアレルギー疾患に。普段から室内にクロカビを増やさないために、温・湿度の管理や、こまめな掃除を心掛けましょう」
風邪でも、花粉症でもなさそうなのに、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどの症状が続く場合、クロカビの胞子を含むハウスダストが原因かも。
空中には1m2におよそ1,000個ものカビが浮遊。気づかないうちに吸い込んでいる。
予防するには…
(1)住まいのカビ掃除はちょこちょこが◎!
「空気中のカビをゼロにはできないけれど、吸い込む量を減らすには、住まいをこまめに掃除することが大切。特にエアコンは、吹き出し口やフィルターを定期的に掃除するだけでなく、カビの温床となる奥のクリーニングはプロに任せるのが◎」
(2)風通しを良くして、空気のよどみを解消
「締め切った部屋で空気がよどんでいると、カビの胞子がその場で落下して根づきやすくなります。そこでまた胞子を作って飛ばすといった悪循環に。こまめに換気を行って空気を動かし、カビの胞子を外へ逃しましょう。目安は1時間に5分程度」
『美的』2021年7月号掲載
イラスト/白ふくろう舎 構成/つつみゆかり、有田智子
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
かめいかつひこ/千葉大学医学部附属病院呼吸器内科助手、米国スタンフォード大学客員研究員などを経て現職。真菌症の研究、治療開発のほか、真菌専門外来で診療も行う。