「歯周病がほかの病気を引き起こす」ってホント?真相を医師に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容や女性のライフスタイルの疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は免疫力アップなどでも注目されている「菌活」について。「菌ケアドクター」の異名を持つ下川穣さんにお答えいただきます。
Q:歯周病がほかの病気を引き起こすってホント?
口の中と全身の病気、一見関係なさそうに見えますが、口内環境が悪いとさまざまな病気へのリスクが高まる、逆に口内の細菌バランスが良いと病気のリスクも減る、というウワサが……。これは本当なのでしょうか。そこで、この疑問を下川さんに聞いてみました!
A:ホント
「今、30代以上の3人にふたりは歯周病と言われています。そして、歯周病菌が様々な病気と関係していることがわかっています。
歯周病菌が腸内に入ると腸の炎症性疾患になりやすいというデータもあり、一方で、唾液の成分が良いと免疫機能が上がって菌に感染しづらくなります。つまり、口腔内の環境を整えることが病気のリスクを減らすことに繋がるんです」(下川穣さん・以下「」内同)
Point
口腔内の環境を整えることが病気のリスクを減らすことに繋がる歯周病菌が関係する病気とは?
「糖尿病や認知症、肝硬変、心内膜炎や関節リウマチなどにも歯周病菌が関係していることがわかっています。そして、上述したように腸内の炎症性疾患になりやすいということも。これらの病気は歯周病菌を唾液と一緒に飲み込んでいることや、歯周病菌が出すLPSという生産物質の毒素が免疫力を下げることで発症することがあります。
例えば糖尿病の場合、歯周ポケットに潜む歯周病菌が炎症を起こし、その炎症に関係した化学物質が毛細血管から入り込み、全身をまわります。そうすると、その化学物質が血糖値を下げる役割のインスリンの効果を悪くしてしまうために血糖値が上がりやすくなってしまうことで糖尿病を発症してしまう。このように歯周病菌が直接の原因でなくても、間接的に病気の発症に関係しているパターンも多くあります」
\歯周病が原因、要因となって起こりやすい病気/
- 糖尿病
- 認知症
- 肝硬変
- 腸内の炎症性疾患
- 心内膜炎
- 関節リリウマチ
歯周病菌が出すLPSとは?
「本来、LPSというのは免疫力をアップさせる力を持っている、すごくいいヤツなんです。しかし、歯周病菌の出すLPSは特殊。逆に免疫機能を抑えてしまうんです。歯周病菌というのは相当したたかで、悪玉のLPSを出して免疫力を下げることで、自分たちが殺されないように守っているというわけです。
とは言え、乳酸菌も酸を出すことでpH値を下げてまわりの菌なんかを殺して生きていますから、歯周病菌も乳酸菌もやっていることは同じ。それがたまたま人間にとって良かったら善玉菌、悪かったから悪玉菌と言われているだけの話です。歯周病菌も自分たちが生きるために活動しているだけなのに、悪者扱いされてしまうのは可哀想と言えば可哀想な話ですよね。今、人間も地球にとって悪玉菌になっているかもしれませんから、気をつけていきたいですね」
マウスウォッシュのやり過ぎはNG
「人の唾液中には亜硝酸塩という糖尿病の抑制にひと役買っている、自然の殺菌力をもつ物質が含まれています。亜硝酸塩は口腔内の細菌によって硝酸塩が還元されたものですが、殺菌効果の高いマウスウォッシュはそれらの大事な菌まで殺してしまいます。本来殺したい悪い菌もろとも、良い菌まで殺してしまうことで逆に病気のリスクが高まることもあります。そのため、殺菌効果の高いものや、過度なマウスウォッシュの使用は控えるのがおすすめです」
菌のバランスの重要性
「フッ素入りの歯磨き剤などは虫歯予防に効果があることは実証されています。水道水にフッ素を入れている国もあるくらいで、それだけで圧倒的に子どもの虫歯が減るのは間違いないのですが、それ以外の影響は?と考えるような研究データはとても少ないのです。
虫歯がないアフリカの奥地に住んでいる原住民に歯ブラシと歯磨き剤を渡したら、1年後には虫歯だらけになっていたという報告もあります。それぞれの土地や習慣などによっても口腔内の菌バランスがあるのに、無駄なことをして菌のバランスを変えることで虫歯が増えてしまうということもあるわけです。たまたまそこの土地の人たちには歯磨き剤が合わなかったのかもしれませんが、口腔内の菌のバランスというのはそれだけ変わりやすく、重要な役割があるものなのです」
口腔内細菌がいちばん多い舌のケアをすべし
「腸内と同じように口内にもさまざまな細菌がいて、それらをバランス良く保つことが大事です。口内環境を整えるには唾液の分泌量を増やすことが基本で、プラスαでやって欲しいのが舌苔のケアです。
口腔内細菌がもっともも多くいるのが舌の上。なので、舌磨きなどのケアはしたほうが良いと思います。舌苔がうっすらとついているような正常な状態であれば、特に舌のケアをする必要はないですが、腸内環境が整っていなかったりするとべったりと舌苔がついていたりするわけです。舌の上にいる雑菌や悪玉菌を飲み込む込まないためにやるべきなのが舌苔のケアなのです」
▼ 関連記事
腸内細菌にコーヒーがいいってホント?真相を専門家に直撃!
文/土屋美緒
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
1985年4月1日生まれ。福岡県出身。岡山大学歯学部卒業後、歯科医師を経て、都内医療法人の理事長に就任。クリニックで慢性疾患に悩んでいる患者さんたちの根本治療を目指していく中で、より多くの人の力になるため起業を決意し、2018年12月KINSを設立。“菌ケアすることが当たり前である世の中”にするため、様々な活動をしている菌ケアドクター。
■株式会社KINS
■Instagram @yourkins_official @yutaka411985