健康・ヘルスケア
2020.5.20

新型コロナウイルスを含む、感染症への抵抗力を高めるためにできることとは?【女医に訊く#108】

%e5%a5%b3%e5%8c%bb%ef%bc%91%ef%bc%90%ef%bc%98

感染症対策では、手洗いなどをしっかり行って病原体を体内に侵入させないことが重要です。それに加えて大切なのが、感染症への抵抗力。ウイルスなどの病原体が体内に侵入してしまった場合に、私たちを守ってくれるのが「免疫」。今回は、免疫を高めて抵抗力をつける方法を公衆衛生専門医の伊藤明子先生に教えていただきました。

免疫って、どういう仕組みなの?

免疫は、細菌やウイルスなどから私たちの体を守るために、体に備わっている防御システムです。免疫が低下していると、現在流行中の新型コロナウイルスを含む感染症に感染しやすくなってしまいますが、そもそも免疫とはどんなものなのでしょうか。

「免疫には、自然免疫と獲得免疫のふたつがあります。自然免疫は、常に体内を監視し、細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、いち早く攻撃し体を守ります。マクロファージやNK細胞などがあり、第一線で活躍する免疫システムです。獲得免疫は、自然免疫が出した情報を元に一度侵入した病原体を記憶し、その病原体を認識するための抗体を作ります。次に同じ病原体が侵入した時に効果的に排除してくれます。獲得免疫は、何年にもわたって病原体の記憶を持ち続けます」と伊藤先生。

私たちはよく「免疫力をアップする」と言いますが、どちらかを意図的に高めることはできません。しかし、食事や睡眠などの生活を見直すことによって、総合的に病気に対する抵抗力を高めることはできる、と伊藤先生は言います。

抵抗力を高めるにはやっぱり睡眠が大切?

仕事や家事、趣味など毎日忙しく過ごしていると、つい寝不足になってしまうという人も多いはず。しかし、伊藤先生によると、睡眠が8時間以上の人と比べて、7時間未満の人は感染症にかかる確率が約3倍高いというデータがあるそうです。

「皆さん忙しいとは思いますが、8時間を目指して睡眠をとることが抵抗力を上げるためには必要です。また、時間さえ確保すれば昼夜逆転の生活でも良いかというと、そういうわけではありません。例えば夜11時に寝て、朝7時に起きるなど日内リズムに沿った睡眠をとることで、修復ホルモンや成長ホルモンが分泌され抵抗力が高まります」(伊藤先生)。

抵抗力を高めるためにできること…摂取すべき栄養素は?

「抵抗力を高めるには、規則正しい生活をすることがとても大切なんです。食事も摂取時間が乱れただけで、腸内の善玉菌が減ってしまうことがわかっています。腸には全身の免疫組織の50%以上が存在しているので、腸内の善玉菌が減ると抵抗力も低下してしまいます」(伊藤先生)

食事の時間が乱れるだけで善玉菌が減ってしまうとは驚きですが、体に抵抗力をつけるためには、どんな食事をするのが良いのでしょうか。

「抗酸化作用の高いビタミンA、 C、 Eはとても大切で、これらは新鮮な野菜や青魚に豊富に含まれています。そのほか、食物繊維が豊富な雑穀や海藻、きのこ類、体の炎症を抑える作用のあるエキストラバージンオリーブオイルや亜麻仁油、荏胡麻油など良質なオイルを意識して摂取しましょう」(伊藤先生)

さらに、感染症対策として注目したいのがビタミンD。ビタミンDをしっかり摂取している人の方が、あまり摂取していない人よりも感染症にかかりにくいという研究結果がある、と伊藤先生は言います。

加えて、女性が積極的に摂取すべきなのが鉄です。食事摂取基準(2020年厚生労働省)によると、18〜40代女性(月経あり)の鉄の1日の推奨量は10.5mgなのに対し、国民健康・栄養調査(2018年厚生労働省)の鉄の1日の摂取量の平均値は2029歳女性が6.5mg3039歳女性が6.8mgと全く足りていないのが実情です。

「皆さんあまり気にしていないのですが、成人女性の多くは鉄欠乏症貧血です。それなのに放置している人がとても多い。貧血は感染症にかかるリスクを高めるので気をつけて欲しいですね。そして、ビタミンDと鉄は、食品で摂ろうとしても吸収率が悪く、摂取するのが大変なので、サプリメントで摂取することをおすすめしています。ただ、サプリメントは、安全性や効果などの品質を見分けるのが難しいので、詳しい医師に相談すると良いでしょう」(伊藤先生)

sample-8404
公衆衛生専門医
伊藤 明子先生
公衆衛生専門医、小児科医。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。有限会社アクエリアス代表取締役社長(同時通訳・国際会議運営)、同時通訳者でもあり、医学系学会での会議通訳、米国大統領をはじめ多々の国賓の通訳に従事。近著に「医師がすすめる抗酸化ごま生活」(アスコム)。2児の母。■赤坂ファミリークリニック

文/青山貴子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事