頭痛薬を飲み続けると、効かなくなってしまうって本当ですか?【女医に訊く#83】
頭が痛くなったとき、あなたはどうしますか? 市販の鎮痛剤を飲む人も多いと思いますが、服用を避けて痛みをガマンしている、という人もいるかもしれません。片頭痛の病状緩和について、脳神経内科医の霜田里絵先生に教えていただきました。
市販の痛み止めを飲み続けている人は要注意!
日本人の約8%が片頭痛もちといわれていますが、医療機関にかかっている人は少数。多くの人は、頭が痛くなる度に市販の鎮痛剤を飲んで対処し続けているようです。
よく「市販の痛み止めを長期乱用すると、効きにくくなる」という噂を耳にしますが、脳神経内科医の霜田里絵先生によると、これは本当なのだとか。効果が感じられなくなるどころか、脳が過敏になってきて、逆に痛みが起こりやすくなることもあるようです。
「矛盾した話にはなってしまうのですが、それでも鎮痛剤は早めに飲んだ方がいいですね。錠数は増えてしまいますが、気持ちが悪いときや悪心および嘔吐を伴うとき、前兆で光がギザギザする方などは、やはり服薬した方がいいと思います」(霜田先生)
頭痛薬を月10錠以上飲んでいるなら病院へ
片頭痛の頻度が多い人の中には、市販の鎮痛剤を長期乱用してしまい、脳が過敏になってきて、しょっちゅう頭痛が起きてしまう人もいるとわかりました。片頭痛の頻度が多くて日常生活に支障がある場合は、痛みが出てから薬で叩くだけではなく、処方薬で頭痛が起きにくくする治療をする必要があります。
「私が診療する場合、痛みにくくする治療をする判断基準は、市販薬を月10錠以上飲んでいるかどうか。本当は月4~5錠で治療を始めてもいいのですが、毎日服薬してもらうのは、なかなか難しいのが現実。月10錠以上の方でしたら、さすがに毎日薬を飲んででも予防的治療を受けたいと思ってくださるんです」(霜田先生)
片頭痛の予防にはどんな薬を使うの?
霜田先生の場合、月に診る患者数は300~400人で、そのうち約半数は片頭痛に特化した痛み止め(トリプタン系)のみで済む方。残りの半数は月10回以上の発作に悩む方で、予防薬の処方も必要としているそうです。
「片頭痛の予防には、抗てんかん薬や血管に作用する薬、抗うつ薬、漢方薬などが用いられます。例えば、光や音の過敏性が高い方には抗てんかん薬が効きやすいのですが、てんかんを抑えるほどの量を使ってしまうと眠くなったり集中力が低下したりするため、少ない量を夜寝る前に使用します」(霜田先生)
ただし、効てんかん薬は近いうちに妊娠を考えている方には使わない、一剤でコントロールがつかない方には何剤か併用するなど、患者によってその処方は変わります。
片頭痛の治療期間はどのくらい?
片頭痛はなんらかの遺伝傾向があり、体質として持っている方が、排卵・月経といった生理変動や気象変動、ストレス、生活習慣の乱れなどの影響で引き起こすことが多いと考えられています。そのため片頭痛の治療は比較的長期間にわたって行われます。
「とはいえ、何年間もずっと通院し続ける方が多いかというと、そんなこともありません。2~3週間から半年前後でコントロールがついてきて、痛み止めだけになる方もいます」(霜田先生)
自己診断や市販薬の長期乱用は危険、と霜田先生。市販の鎮痛剤を月に10錠以上飲んでいるようなら、早めに受診しましょう。
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ(小学館)
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