健康・ヘルスケア
2019.4.3

低用量ピルの副作用はありますか?ピルが飲める人と飲めない人の違いは…【女医に訊く#56】

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前回、今すぐ妊娠を考えていない女性にとって低用量ピルを上手く使うことは、子宮内膜症を予防することにもなるというお話をしました。しかし、人工的に排卵を止めることは、体にとって負担にならないのでしょうか? また、低用量ピルにはどんな副作用があるのでしょう? 産婦人科医の松村圭子先生に教えていただきました。

低用量ピルで排卵を止めるリスクはないの?

 「排卵を止めることのリスクはありません。むしろ排卵させるよりはいいでしょう」と語るのは、産婦人科医の松村圭子先生。

 卵巣にある卵子は、月に1回、1個だけ、卵巣の膜を破って外に飛び出します。これが排卵です。破られた膜は毎月修復されますが、何度も繰り返すうちに作業にエラーが起こると、そこにガン細胞ができてしまうことがあります。

 「極端にいうと、排卵というのは妊娠を目的としない限り、メリットがないんです。排卵すると活性酸素も生んでしまいますし、排卵の回数が多いと卵巣ガンのリスクにもなる。ですから、低用量ピルで排卵を抑えるということは、昔と比べて排卵回数の多い現代女性にとって、卵巣ガンのリスクを減らすことにもなるのです」(松村先生)

低用量ピルは太る? 低用量ピルの副作用は…

もちろん低用量ピルも薬ですから副作用はあります。主な副作用は、不正出血、吐き気、胸が張る、頭痛、むくみなど。ただし、これらの症状は、服用を開始してから3カ月以内に大部分が治まります。

 また、「ピルを飲むと太る」というのは、過去に使用されていたホルモン量が多い中用量ピルでいわれていたこと。日本で行われた低用量ピルの臨床試験では、ほとんどの人が±2kgの範囲で、服用していない人の体重変動と大きな差はありませんでした。

 「飲み始めはむくみがあったりして体重の数値が一時的に増えることはあっても、低用量ピル自体で脂肪が増えることはほとんどありません。それまでひどい生理痛や月経前症候群で月の半分くらい不調で食欲もなかったのが、ピルで元気になって食欲が増して体重が増えたという人もいれば、逆に活動的になって体重が減ったという人もいる。これはライフスタイルの違いであり、ホルモンの影響というのは考えにくいですね」(松村先生)

 副作用に注意しながら飲むというのは、風邪薬も同じ。副作用を恐れて何もせずに毎月痛い思いをすることを考えれば、注意しながら上手く利用して日々快適に過ごす方がいいかもしれません。

 「私も産婦人科医になっていなかったら、やっぱりピルに対して誤解や偏見を持っていたと思います。女性は一生のうちでもホルモンによって揺らぎますし、1カ月のうちでも揺らぎます。ホルモンに翻弄されるのではなく、ホルモンを上手くコントロールしていくのは、いいことだと思いますよ」(松村先生)

低用量ピルの服用が適さないのはどんな人?

低用量ピルを服用する際は、医師に相談することが必要です。健康な女性であれば、ほとんどの場合、低用量ピルを服用することができますが、まれに血栓症(血管内に血のかたまりが詰まる病気)が起こることがあるため、体の状態によっては服用できない場合もあります。

「肥満の方やタバコを吸う方(35歳以上で1日15本以上喫煙)、高血圧の方、糖尿病の方など、血栓症のリスクが高い人には低用量ピルを処方しません。血栓症は2030代の女性ではめったに起こりませんが、万が一、突然の脚の痛みや腫れ、手足の脱力、突然の息切れ、押しつぶされるような胸の痛み、激しい頭痛、舌のもつれ、突然の視力障害などの症状があらわれた場合は、すぐに救急医療機関を受診してください」(松村先生)

 

婦人科専門医
松村圭子先生
広島大学医学部卒業。成城松村クリニック院長。女性の体の悩みを多角的にサポート。『女30代からのなんだかわからない体の不調を治す本』(東京書店)、『医者が教える女性のための最強の食事術』(青春出版社)など著書多数。 ■成城松村クリニック

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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