女医に訊く#26|まつげを長く・太く・濃くする正しい「まつ育」教えます
まつげの長さ・太さ・濃さは改善できるのでしょうか? 今年6月、自身が院長を務めるクリニックに「まつげケア外来」を新設した井上先生に、正しいまつげのケア方法について、詳しく教えていただきました。
まつげが抜け落ちるのは、アレルギーの可能性も
まつげケア外来では、まず最初に、なぜまつげがハゲてしまうのかを検査するという井上先生。まつげが生えてこない人の場合、自覚症状はなくてもベースとして慢性的なアレルギーがあることが多いのではないかと井上先生は語ります。
「現代は、コンタクトレンズ装用や花粉など、アレルギーが発生しやすいような環境にあります。また、腸内環境が悪くなってくると、人間の体はアレルギーに傾きやすくなります。粘膜はアレルギー症状がいちばん出やすい部分ですから、アレルギーの自覚症状がなくても、まぶたに炎症を起こしていらっしゃる方が多く、眼瞼周辺の状態も良くないんです」
井上先生によると、眼瞼結膜や眼瞼周辺疾患の治療をしてあげるだけでも、まつげが生えてくる患者さんが多いとか! まつげの抜け落ちが気になる人は、一度、眼科で診察を受けてみるのもよさそうです。
『の』の字を書くように、まつげの根元を洗いましょう
アレルギーなどの治療が完了したら、次に行うのがまつげの洗浄。まつげの根元をキレイに洗うことで、まつげダニやマイボーム腺の詰まりを防ぎます。
「まつげを洗ってくださいと言っても、目の中をいじるような感覚で怖いため、みなさんまぶたを洗ってしまうんですね。ですからクリニックでは、目専用のシャンプーを使い、プロの力でまつげを根元からマッサージして、汚れをきちんと落としてあげるようにしています」(井上先生)
もちろん、もっとも大事なのは、日々のセルフケア。アイメイクを落とすときは、ゴシゴシこすらずやさしく。専用のリムーバーで摩擦なくキレイに落としたあと、目専用のシャンプーでまつげの根元を洗ってほしいと井上先生は言います。
「目専用のシャンプーはネットでも買えますし、眼表面を専門としている眼科医のクリニックにも置いてあると思います。しみにくく設計されているので、『の』の字を書くように、まつげの根元をマッサージしながら洗ってみてください」
目元の血行を促して、まつげの毛根を活性化!
まぶたの炎症を抑え、汚れをしっかり落としたら、目のまわりを温めて血行を促進します。目元の血流が良くなると、まつげの発育に必要な栄養を効率的に運ぶことができるうえ、むくみやクマの解消にもつながり、健康的で若々しい印象に。また、まつげの根元にあるマイボーム腺も、温めることで目にとって必要な油分が分泌されやすくなります。
「クリニックでは近赤外線と呼ばれる2つの波長を連続照射できる医療機器を使って、目のまわりの血流をよくしていきます。ご家庭でケアする場合は、ホットタオルも安価でよいツールのひとつなのですが、長く乗せすぎたり、そのまま寝てしまったりすると、タオルが冷えて油を固化させてしまうため注意が必要です。使いやすいのは、蒸気で温めるタイプのアイマスク。なかでも、あずきを使った目もと用蒸気温熱ピローはおすすめですよ」(井上先生)
まつげ育毛剤・美容液という選択肢も
クリニックでは、希望者にはまつげパーマも施術するという井上先生。まつげ自体の長さや太さ、濃さを改善する方法もあるのでしょうか?
「まつげ用の育毛剤や美容液を塗布します。当院ではグラッシュビスタ(R)という薬剤を処方しています」と井上先生。
「グラッシュビスタ(R)外用液剤 0.03%5mL」は国内初・唯一のまつげ貧毛症治療薬として厚生労働省に製造販売承認を受けた製品(保険適用外のため患者の同意のもとに行われる自由診療となります)。まつげが不十分であったり、不足している患者のまつげの長さ・太さ・濃さを改善することが臨床試験で認められています。
「多くの国や業者がいろいろな育毛剤や美容液を出していますが、安全性が確立されていないものを使うと、目のまわりが赤くなるなどのトラブルが起こることもありますから、使う薬剤はよく選び、医師からつけ方の指導をきちんと受けたうえで処方してもらった方がよいでしょう。もちろんグラッシュビスタ(R)にも副作用は認められていて、目のまわりに赤みや色素沈着が起こったり、目のまわりの脂肪自体が減って痩せてしまう可能性はあります。そのため、目に直接点眼するのではなく、まつげに刷毛で塗るようになっているのです」(井上先生)
グラッシュビスタ(R)には重度の副作用はほとんどありませんが、多少なりとも副作用といわれるものはあります。リスクを理解した上でつけたいという人の方が多いと井上先生は言います。
「色素沈着はグラッシュビスタ(R)を塗って、その残存液がまぶたについてしまうことで発生すると考えられています。つまり、塗ってある程度したら落としてしまった方が、副作用の発生率は低くなりますから、患者さんにはお風呂に入る前に塗ることをおすすめしています」(井上先生)
※編集部注・薬品は医師の指導のもと、必要とされる症状に合わせて適切な処方にて使用してください。
■羽根木の森アイクリニック http://hanegi-eye.com/
文/清瀧流美 撮影/田中麻以(小学館)
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