健康・ヘルスケア
2018.5.30

女医に訊く#15|女性の抜け毛・薄毛はなぜ起こる?原因を医師が解説

極端なダイエットやストレスの影響で、美的世代でも髪のボリューム感に違和感が出てくることがあります。抜け毛なんてまだまだ先のこと、と思っている人も、その時になって慌てないよう、女性の髪について一緒に勉強してみましょう。今回は“抜け毛・薄毛”の悩みについて、抗加齢医学専門医の浜中聡子先生に伺いました。

ホルモンやストレス「女性の抜け毛の原因」は複雑

男性の抜け毛・薄毛に最も多い“男性型脱毛症(AGA)”には、男性ホルモンが関与しています。原因はある程度解明されているため、治療の方針も定まっているそうですが、一方女性の抜け毛や薄毛はというと……?

「女性の抜け毛の原因としては、男性と同じく“髪の成長に関与するホルモンバランスが変化すること”、そして“血流が低下して、毛根に酸素や栄養が届きにくくなること”が考えられます。ただしその背景には、女性ならではのホルモンの変化や、ライフステージの変化が複雑に関係していて、男性のように“これが原因”と特定するのが難しい状態です」(浜中先生)

生理が始まる思春期、妊娠・出産の経験、そして更年期と、女性は一生の間にホルモンがダイナミックに変化します。それにともない一生の間に何度か“髪が抜けやすいタイミング”が存在するそう。さらに、仕事と家庭の両立や家族のケアなど、女性特有の環境ストレスが複雑に絡み合って、抜け毛・薄毛に繋がっているそうです。

抜け毛が始まる「平均年齢」は?若い世代はダイエットに注意

一般的に、抜け毛や薄毛が気になり始めるのは、30代後半くらい。まずは髪の質感が変化して、ツヤ感低下やうねりが発生します。そして40代に入ると、“分け目が透ける”“髪を結んだ時に量が減った”“根元がふんわり立ち上がらない”など、目に見える変化を実感する女性が増えています。

「本来抜け毛・薄毛は、加齢とともに発生する自然な現象です。しかし、急激なダイエットをすると、若い世代でも髪がやせ細ってしまいます。また学業や仕事のストレスから薄毛に悩み、10~20代で来院される患者さんもいます」(浜中先生)

若い世代の場合、“ヘアスタイル”が抜け毛に関係しているケースも。
ポニーテールやシニヨンなど、同じ部位の髪に負荷をかけ続けた結果抜け毛に繋がることがあり、美的世代も油断は禁物です。

抜け毛が多い季節は?注意が必要な抜け毛の本数って?

シャンプー後に排水溝を見て「今日はこんなに抜け毛が!?」と、驚いた経験はありませんか?
「髪は成長期、退行期、休止期を経て(ヘアサイクル)、自然に根元から抜け落ちます。だいたい1日平均80~100本くらいは、許容範囲です」と、浜中先生。特に季節の変わり目は抜け毛が増える傾向があるそう。「なかでも夏の終わり~秋口は、夏の紫外線ダメージの影響で抜け毛が増える傾向にあります」(浜中先生)

自然な抜け毛にも個人差があるそうですが、“こんな感じで抜け落ちたら要注意”という、目安はあるのでしょうか?

「何もしなくてもハラハラ抜け落ちる、髪に指を通すと必ず複数の毛が引っかかってくる、朝起きた時に枕に尋常でない量の髪がついている、というのが目安になると思います。もし一時的な現象ではなく、そのような状態が続くようなら、専門医への相談をおすすめします」(浜中先生)

薄毛が目立ちやすいのは「頭頂部」「分け目」「側頭部」

最初に薄毛が目立ちやすいのは“生え際”です。鏡で見たときに真っ先に目に入るため、自分で気づきやすいそう。

「ご自身で気づきにくいのが、頭頂部の“つむじの周囲”です。ここも毛量が減りやすく、つむじから“分け目”にかけて、徐々に地肌が透けていきます。もともと地肌が露出する部分ですから、1本の髪が細くなったり、本数が減ると、薄くなった印象が際立ちます」(浜中先生)

もしフロントが気になり始めたら、実は頭頂部もボリュームダウンしている可能性が! さらに“サイド(側頭部)”も薄くなっている可能性があります。

「後頭部や頭頂部に比べて、サイドはもともと毛穴の数が少ないと言えます。髪をかきあげたりアップにした時に“あれっ”と気づく方が多いようです。毛穴の数は生まれつき決まっていて一生変わりません。ボリューム感をキープするには、髪を生み出す毛母細胞の働きをいかに保つか、そして1本1本の髪を太く健やかにすることが大切です」(浜中先生)

女性に多い抜け毛・薄毛のタイプ

女性の薄毛は、原因や症状によって、いくつかに分類されます。最も多いのは“びまん性脱毛症”と呼ばれるものです。

「びまん性脱毛症は、頭頂部から分け目にかけて少しずつ毛量が減り、やがて全体的に薄くなっていきます。その他には、男性のように特に頭頂部が薄くやりやすいFAGA(女性男性型脱毛症)、出産後に髪が抜けやすくなる分娩後脱毛症などが知られています」(浜中先生)。以下は、主な女性の脱毛の種類です。

【主な女性の脱毛の種類と原因】

びまん性脱毛症
血流の低下や、女性ホルモンの低下など、様々な原因が関係して発生する脱毛。加齢とともに発生することが多く、髪が全体的に薄くなっていきます。

FAGA (女性男性型脱毛症)
加齢によるホルモン低下によって生じる脱毛です。男性と違って生え際のラインは変わらず、髪全体が薄くなり、特に頭頂部が透けやすい傾向があります。

分娩後脱毛症
出産前後に女性ホルモンの分泌量が変化することで生じる脱毛です。1年~1年半程度で自然に元に戻りますが、高齢出産や多胎出産などのハイリスク出産で体力の回復が遅い場合、戻りにくいケースも。

円形脱毛症
本来は体を守るリンパ球が毛根にダメージを与え、円形に脱毛する自己免疫疾患の一種です。年齢に関係なく発生し、ストレスが関与すると言われていますが、科学的根拠は今のところありません。

牽引性脱毛症
ポニーテールなど、同じ髪型を長く続けることで発生する脱毛です。髪を引っ張ることで毛包が萎縮したり、毛根の血流が阻害されることが原因と言われています。

頭皮のトラブル
皮脂に汚れや雑菌が繁殖したり、過剰な洗浄から乾燥を引き起こすなど、頭皮のトラブルから発生する脱毛です。

円形脱毛症は「アレルギー」の一種

年代に関係なく発生する抜け毛の一つに“円形脱毛症”があります。頭部を含め色々な場所に発生し、円形に毛が抜け落ちる症状で“10円ハゲ”と呼ばれることも。

「円形脱毛症は、加齢にともなう抜け毛とは異なり“アレルギーの一種”です。免疫細胞のリンパ球が、本来は自分の仲間である毛根の細胞を敵とみなして、攻撃してしまうことで起こります。毛根にダメージを受けた結果脱毛が起こりますが、その原因や、なぜ円形に脱毛するかなどは、まだよくわかっていません」(浜中先生)

ストレスがあると円形脱毛症になると言われていますが、これはストレスが免疫を低下させるため。「ただしストレスだけが原因ではなく、円形脱毛症は自己免疫疾患の一つです。アトピーやぜんそくを持っている人は、かかりやすい傾向があります」(浜中先生)

このように、女性の抜け毛・薄毛の原因はさまざまで、それぞれ対応策も違います。次回はそんな抜け毛・薄毛のケア法と、病院でできる治療についてお届けします。

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抗加齢医学専門医
浜中聡子先生
ウィメンズヘルスクリニック東京 院長。脇坂ウィメンズヘルスクリニック大阪 顧問医師、国際アンチエイジング医学会専門医。米国抗加齢医学会専門医。女性頭髪専門外来において、多くの女性の髪悩みに向き合う。ていねいな診察ののち、内服薬、外用薬、サプリメントによる治療、点滴等、その方に最適な治療法を提案している。
■ウィメンズヘルスクリニック東京 https://www.womenshealth-tokyo.com

文/宇野ナミコ 撮影/横田紋子(小学館)

 

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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