健康・ヘルスケア
2023.4.17

不妊や子宮頸がん、更年期障害…「女性ホルモン」が引き金となる病気を学ぼう|女性ホルモンの働きや分泌の仕組みも

スプーン1杯の量で女性の一生の肌、心、体を大きくつかさどるといわれる女性ホルモン。女性特有の病気、妊活、メンタルの不調など…将来のライフプランを立てる際に欠かせないのが女性ホルモンの知識です。その働きをお届けします!

女性の一生をコントロールする女性ホルモンってどんなもの?

しっかりおさらい!女性ホルモンの働きとは?

\妊娠と出産をつかさどるプロゲステロン/

  • 子宮内膜を柔らかくする
  • 水分を体にため込む
  • 体温を上げる
  • 乳腺の発達を促す
  • 食欲を増進させる
  • 気分を不安定にする …etc.

\美と健康をつかさどるエストロゲン/

  • 子宮内膜を厚くする
  • 女性らしい体を作る
  • 肌・髪をツヤツヤにする
  • コレステロールのバランスを整える
  • 自律神経を整える
  • 骨を強くする …etc.


【小児期】未成熟のためエストロゲンも分泌なし
脳下垂体から卵巣に黄体化ホルモンや卵胞刺激ホルモンは分泌されているが、卵巣はまだ働いていない時期。男女ほぼ同じ発育をし、女性ホルモンの分泌もなし。


【思春期】初潮を迎えエストロゲンの分泌が増加
10~18歳の思春期は、ゆらぎながらエストロゲンの分泌が増加。乳房や子宮などが発達し、初潮を迎えるといった体の変化が起こる。情緒も不安定になりやすい時期。


【性成熟期】エストロゲンの分泌や生理が安定
18~45歳頃はエストロゲンの分泌や生理周期が安定し、肌や髪もツヤツヤに。妊娠に適した時期だが、女性特有の病気も出現。性成熟期後半になると卵巣機能は徐々に衰え始める。



【更年期】エストロゲンが低下し体調の変化が起こりやすい
閉経の前後5年が更年期。個人差はあるがおおよそ45~55歳。エストロゲンの低下と共に、体調の変化や病気が起こりやすい。ホットフラッシュやうつ症状などに悩む人も。


【老年期】エストロゲンの分泌はほぼゼロ。生活習慣病も増加
エストロゲンの分泌はほぼゼロになり、血管や骨、皮膚などのトラブルが起きやすく、生活習慣病が増える時期。身体機能は低下していくものの、情緒は比較的安定。

\Check!/
卵の数と質は年齢と共に低下!
卵子は女性が胎児のときに既に作られ、胎児期が最も多く約700万個。「数は年々減少し、新しく作られることはなく閉経時にはゼロに近づきます。さらに年齢と共に卵子も老化すると覚えておきましょう」(竹元先生)

 

女性ホルモンの分泌は量よりもバランスが大切

「たくさん分泌する程いい」というイメージをもつ人が多い女性ホルモンですが、そもそもどんな働きをするのでしょうか。

「卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があって、エストロゲンは卵胞の成熟を促すほか、女性の健康や美を保ちます。排卵後に主に妊娠に備えて働くプロゲステロンは子宮内膜を柔らかくしたり、体に栄養や水分をため込もうとします。だからこの時期はむくみやすいのですが、女性ホルモンは量より、ふたつのホルモンがバランス良く分泌されることが大切です」と竹元先生。

女性の心身に大きく関わり、健康のバロメーターともいえる女性ホルモンですが、加齢やストレスなどちょっとした影響で乱れやすくなるもの。

「女性ホルモンの分泌は脳と卵巣が連携をとりながらバランスを調整しています(上図参照)。司令塔である脳はとてもデリケートで、ストレスなどの影響も受けやすいのです」(竹元先生)

 

年代によるホルモンの変化に併せ健康管理を


女性ホルモンの分泌量の変化は生理を起こす毎月の波だけではなく、一生においても大きな波があります(上図参照)。

「エストロゲンは卵巣や子宮だけでなく骨や皮膚、内臓、血管などの働きもサポートするため、分泌量の変化によって各年代で起こりやすい病気が変わります。例えば美的世代は子宮内膜症や子宮筋腫に罹患する人が多い時期ですが、女性ホルモンの恩恵を受けにくくなる更年期以降は生活習慣病や各種がんの好発年代です。知識があれば予防に役立ちます」(竹元先生)

さて、女性ホルモンが正しく分泌されているか気になるところですが、採血による検査で調べられます。主な項目はエストロゲン、プロゲステロン、LH、FSH、プロラクチンの5項目。

「検査は生理不順の人や排卵の有無が気になる人におすすめです。脳と卵巣から分泌されるホルモン値を調べることで、どこにトラブルがあるかわかります。数値は生理周期によって変動しますが、基礎的な分泌量を知るには生理中に検査するのがベスト。検査項目数にもよりますが、保険適用になる場合は2000円前後で受けられます」(竹元先生)

 

脳と卵巣の連携プレーでバランスを整える女性ホルモン分泌の仕組み

 

採血でわかる!女性特有の不調の原因を探る女性ホルモン検査

プロゲステロン
妊娠を維持するために欠かせないプロゲステロン。この数値が低いと黄体機能不全が疑われ不妊の原因に。数値が高い場合は、卵巣や副腎の機能に障害があるケースも。

エストロゲン
血中のエストロゲン値から、卵巣機能の状態や更年期・閉経の可能性などがわかる。基準値よりも低い場合は卵巣機能の低下が推測され、無排卵や無月経、更年期などの可能性も。

プロラクチン
妊娠・出産・授乳期に高くなり、乳汁分泌ホルモンともいわれる。妊娠していないのに高値になると排卵が抑制されて、無月経や生理不順、不妊などの症状が出る。

FSH
脳下垂体から分泌され、卵胞の成熟を促す働きをするホルモン。卵巣年齢を知る目安となり、低値だと視床下部や脳下垂体機能の低下による無月経や無排卵などが疑われる。

LH
脳下垂体から分泌され、成熟した卵胞から排卵を起こすホルモン。排卵後には卵胞を黄体に変化させる。排卵前に高値になるので、排卵時期の予測にも役立つ。

 

淀川キリスト教病院 産婦人科医長

柴田 綾子先生

sowaka women’s health clinic 院長

竹元 葉先生

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科診療部長

荒田 尚子先生

 

『美的』2023年5月号掲載
イラスト/本田佳代、きくちりえ 構成/青山貴子、 大瀧亜由美、有田智子

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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