ホクロの色や大きさ、膨らみ方が変わってきたけど大丈夫?治療が必要なホクロとは?【教えてドクター!#1】
顔や体など、あらゆる部分にできるホクロ。一見、ただのホクロのように見えるようなものにも、悪性のものがあるってご存知でしたか? 今回は、ホクロと悪性黒色腫について、皮膚科専門医の慶田朋子先生に教えていただきました。
ホクロにはさまざまな色や形状がある?
あれ?額にあったこのホクロ、こんな薄い色だったかしら?
「一般的にホクロとよばれるものは、褐色から黒色までの大小の色素斑で、なかには青っぽいものもあります。大人になると、肌色に見えてきたりすることもあるんですよ」(慶田先生)
そうなんですね!でも、このホクロ、ちょっと盛り上がってきた感じ……。
「子どもの頃には平らだったホクロが、大人になってから隆起してくることはあります。特に、額の皮膚の下はすぐ骨ですから、ホクロの細胞が下に広がらず上に出っ張ってくることが多いですね」(慶田先生)
一般的にイメージするホクロは、医学的に「色素性母斑」や「母斑細胞母斑」とよばれる良性の母斑細胞の集まりのこと。これらのホクロは、基本的に生まれたときには存在せず、3〜4歳以降に出てきて、徐々に増えるといわれています。
「出生児に存在するホクロは、後ほど説明する悪性黒色腫を発生する頻度が高いため、産まれつき大きなホクロがある赤ちゃんの保護者は、できるだけ早く専門医に相談ください」(慶田先生)
色素性母斑にはさまざまなタイプがありますが、メラノサイト(色素を作る細胞)とシュワン(神経)細胞の中間的な性格を持った特殊な細胞を母斑細胞と称し、これらの細胞が一箇所に寄り集まった集団を母斑細胞性母斑とよんでいます。
母斑細胞性母斑は胎生期に神経櫛からメラノサイトやシュワン細胞が発生してくる過程で、正規のコースから外れて別の方向へ向かって発育を始めた「はずれ細胞」の集まりで、皮膚の過誤腫(特定の器官を形成することができなかった組織の限局性の形成異常)とも考えられます。
「これらの細胞の中にはメラニン色素が含まれています。そのためホクロはその色素量に応じて黒あるいは褐色調に見えるのです」(慶田先生)
わたしの身体には青いホクロがあるのですが……。
「青いホクロは青色母斑というもの。メラニンが皮膚の深いところにあると、青みがかって見えるのです。逆に、浅いところにあるホクロは茶色に見えるなど、同じメラニンの色素でも病理学的に存在している深さで見え方が違うんですよ」(慶田先生)
母斑細胞は存在する部位によって境界母斑、複合母斑、真皮内母斑に分類されます。生下時あるいは小児期から成人期に始まって徐々に拡大し、成人に達すると隆起し始め、老年に達すると大きくなり、色調はかえって淡くなり、淡い褐色から皮膚色へと変化していきます。組織学的にもメラニン色素の量は、下に行く(深くなる)につれて少なくなります。
ホクロには悪性のものもあるって本当?
ホクロのようなできもののひとつに、「悪性黒色腫(メラノーマ)」とよばれるメラノサイトが癌化した腫瘍があります。悪性黒色腫は中年以降の人に起こりやすい癌で、全身の至るところに発症します。また、「巨大先天性色素性母斑」とよばれる生まれつき皮膚のかなりの部分に広がっている色素性母斑は、将来的に悪性黒色腫になるリスクがあり、手術による除去が必要になります。
悪性腫瘍は際限なく育ち、それぞれのところで組織を壊し転移を繰り返し、最終的に生体を死に至らしめるものですが、なかでも悪性黒色種はその分裂能と転移能が高く、全癌の中で悪性度が高いといわれています。
「悪性黒色腫にもいろいろなものがありますが、明らかに悪いだろうというときは、もう大体転移しています。表皮の基底膜を超えていないところで止まっている初期のものは、本当にただのホクロやイボみたいですよ。そこで見つかれば化学療法もせずに切除して植皮して終わりですが、相当大きく切除します。悪性黒色腫というのは、それぐらい怖い病気なのです!」(慶田先生)
足の裏とか手のひらにあるホクロは癌というのは本当ですか?
「いや、ほとんどは普通のホクロですよ。ただ、日本人の場合、悪性黒色腫は足の裏や足の指などにできるパターンが多いので注意しましょうということです。気になる方は皮膚科専門医に診てもらいましょう」(慶田先生)
ホクロと悪性黒色腫の見分け方は?
悪性黒色種は、ごく初期の2〜3mmの状態のものではホクロと見分けることは困難ですが、大きくなってくると、濃いところと薄いところの色ムラができてきたり、形が左右非対称になってきたり、境目がギザギザやぼんやりしてきたりすることも。また、進行すると大きさが6mmを超え、隆起したり潰瘍化して出血したりしてくるのも、悪性黒色腫の特徴です。
わたしのホクロも、数年前に比べて微妙に大きくなっているような気がするのですが……。
「5年で1mm大きくなったか、ならないか程度のものは、ほぼ心配ないと思います。逆に、この2〜3か月で急に大きくなった気がするというのは、危ないですね」(慶田先生)
ただし、初期の悪性黒色腫とホクロを見分けるのは、皮膚科専門医でも至難の業。審美的にホクロを取る場合、万が一、悪性のものを削ってしまうと転移する可能性が高いため危険です。
え!?それは怖いですね!学生時代、コンパスの針でホクロを削ろうとしていた友人もいたけど……。
「それは絶対にダメ! ホクロはとにかくいじるな、触るな、です。気になるホクロがある場合は、経験を積み、自信を持って良性だと言って削ってくれる皮膚科専門医か形成外科専門医、いざというときに手術ができる基幹病院などに相談してみましょう」(慶田先生)
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ ※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。日本レーザー医学会認定レーザー専門医。東京女子医科大学医学部医学科卒業後、東京女子医科大学病院、聖母会聖母病院などを経て、2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、西武有楽町店閉店に伴い、銀座ケイスキンクリニックとしてリニューアルオープン。最新マシンと高い注射注入技術で叶える、切らないリバースエイジングに好評を博している。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)など。