尿漏れにも種類があるってホント?真相を専門家に直撃!【美容の常識ウソ?ホント?】
日常生活で生まれる美容の疑問を専門家に答えてもらうこのコーナー。今回は、“尿トラブル”について。尿漏れにも種類があるって…ウソ? ホント? 四谷メディカルキューブ女性泌尿器科の藤﨑章子医師にお答えいただきます。
Q:尿漏れにも種類があるってホント?
ふとした瞬間に、尿が漏れたような気がしてヒヤッとしてしまう。実は、尿漏れにも種類があるのだとか。本当なのでしょうか。さっそく、この疑問を藤﨑医師にぶつけてみました! 果たして答えは…?
A:ホント
「ひと言で尿漏れといっても、症状や原因はさまざまです。主に腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性(いつりゅうせいにょうしっきん)、機能性尿失禁の4種類に分かれます。いくつかが合併していることもあります」(藤﨑医師・以下「」内同)
尿漏れの種類
腹圧性尿失禁
「女性の尿失禁の中で最も多いです。咳やくしゃみ、運動、重いものを持ったときなど腹圧がかかる動作によって、尿が漏れてしまう。加齢も関係しますが、腹圧性尿失禁のいちばんの原因とされるのが出産です。分娩時に負荷がかかることで、骨盤底筋などが衰え緩むために引き起こります」
切迫性尿失禁
「急に尿意を感じ、我慢できずに漏れてしまう尿もれです。手を洗っているときや皿洗いなどの水仕事をしているとき、帰宅時の玄関やトイレのドアノブに手をかけたときに誘発されることも多いです」
溢流性尿失禁
「十分に排尿できず、その後、膀胱に尿が溜めきれなくなってきた時に少しずつ漏れてしまう尿漏れです。子宮癌や直腸癌の手術後などに膀胱周囲の神経がダメージを受けて、膀胱の尿を出す機能が低下することや、膀胱などが腟から出てしまう“骨盤臓器脱”などによって、膀胱から尿の流出がうまくいかずに尿が溜まりすぎることで起こることもあります」
機能性尿失禁
「排尿機能に問題はないものの、足を痛めたり運動機能の低下でトイレまで間に合わなかったり、認知症で正しく排尿できずに漏れてしまう尿漏れを指します」
- 腹圧性尿失禁…咳やくしゃみ、運動、重いものを持ったときなど腹圧がかかる動作による尿漏れ
- 切迫性尿失禁…急に尿意を感じ、我慢できずに漏れてしまう
- 溢流性尿失禁…十分に排尿できず、その後、膀胱に尿が溜めきれなくなり、少しずつ漏れてしまう
- 機能性尿失禁…排尿機能に問題はないものの、足を痛めたり、運動機能の低下、認知症などで正しく排尿できず漏れてしまう
尿漏れのセルフケア
「腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁の場合、衰えてしまった骨盤底筋を自分で鍛える“骨盤底筋トレーニング”が効果的です。続けることで多くの人に改善が見られますが、正しい動きでないと意味がありません。しばらくトレーニングを続けてみても症状が改善されない場合は、きちんと泌尿器科を受診しましょう。そのほか、太り気味の人は腹圧がかかりやすくなってしまうため、ダイエットも有効です。
切迫性尿失禁では、膀胱に負担のかかるカフェインの摂取量を確認し、摂りすぎている場合は摂取量を減らすのもひとつの方法です。
骨盤臓器脱や直腸がんや子宮がん術後などで、尿がすっきり出ない上に漏れてしまう“溢流性尿失禁”の可能性がある場合は、腎臓に悪影響を及ぼしたり、腎不全などの病気を引き起こす原因にもなるため、まず泌尿器科を受診してくだい」
Point
◆腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁の場合、衰えてしまった骨盤底筋を自分で鍛える“骨盤底筋トレーニング”が効果的◆しばらくトレーニングを続けてみても症状が改善されない場合は、きちんと泌尿器科を受診すること
◆切迫性尿失禁では、膀胱に負担のかかるカフェインの摂取量を確認し、摂りすぎている場合は摂取量を減らす
◆骨盤臓器脱や直腸がん、子宮がん術後などで尿がすっきり出ない上に漏れてしまう“溢流性尿失禁”の可能性がある場合は、腎臓に悪影響を及ぼしたり、腎不全などの病気を引き起こす原因にも。泌尿器科を受診する
クリニックでの治療法
腹圧性尿失禁
「骨盤底筋トレーニングの指導や減量、低周波の電気刺激装置“ウロマスター”を用いて、下腹部と臀部にパッドを貼り、電気刺激を促す治療法を勧めることもあります。尿道の括約筋を引き締めるための内服や、症状が強く、日常生活に影響が出ている場合には、尿道を支えるためのテープを挿入する手術を行います」
切迫性尿失禁
「腹圧性尿失禁と同様に、まず骨盤底筋トレーニング指導やカフェインを減らすような指導を行います。また、内服薬をお勧めすることもあります。内服薬では症状が落ち着かない人や、副作用で薬が飲めない人には、膀胱の筋肉の動きを緩めて、異常収縮を抑える“ボツリヌス毒素膀胱内注射”を提案することもあります。保険適用になっており、麻酔方法や入院の有無によって異なりますが、自己負担額は3割負担で7~8万円ほどです」
溢流性尿失禁
「骨盤臓器脱によって溢流性尿失禁が起こっている場合は、まずは骨盤臓器脱の治療が必要です。子宮癌や直腸癌の術後などで膀胱の尿を出す機能低下の場合は、内服薬や自分で尿道にカテーテルを挿入する自己導尿が必要なこともあります」
機能性尿失禁
「排尿機能には問題がない場合、泌尿器科的な治療は必要ありません。足が悪いのであれば、リハビリによる機能回復訓練のほか、手すりをつける、トイレを改造するといった住まいの整備を見直すことが大切です。認知症でトイレに行くタイミングが分かりにくくなっている場合は、家族など周りからのトイレへの声掛けで尿失禁が落ち着くこともあります」
文/木土さや
※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。
四谷メディカルキューブ 女性泌尿器科、オザキクリニックLUXE新宿院、きつかわクリニックにて女性泌尿器科、婦人科形成術を専門に勤務。日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医。日本排尿機能学会排尿機能専門医。日本性機能学会専門医。日本東洋医学会漢方専門医。医学博士。