耳鳴りはどうして起こるの?めまいや耳鳴りを防ぐには?【女医に訊く#206】
疲れがたまっているときやパソコン作業を長時間続けていたときなど、キーンという耳鳴りやポポポポという耳鳴りが聴こえてきたことはありませんか? 今回は、耳鳴りが起こる原因と予防について、耳鼻咽喉科専門医の岩崎朱見先生にお話をうかがいました。
耳鳴りとは?
「耳鳴りには、自分にしか聴こえない耳鳴り(自覚的耳鳴り)と、自分以外の人でも聴こえる耳鳴り(他覚的耳鳴り)の2種類があります」と話すのは、耳鼻咽喉科専門医の岩崎朱見先生。岩崎先生によると、耳鳴りを訴える人の多くは、自覚的耳鳴りだそう。
「自分にしか聴こえない耳鳴りは異常信号のようなもの。外耳から中耳、内耳、脳まで、音を伝える経路のどこかに異常があるというサインであり、キーンという高い音やシャーという水の流れるような音、ジーというセミのような音がするといわれています」(岩崎先生)
一方、他覚的耳鳴りの音源は、自分のからだの中。その多くは、血液が血管を流れる音や心臓の音、筋肉の音、呼吸音など、生命活動に関わる音です。
「例えば、ごっくんってするとき、耳やその周囲の筋肉が痙攣してポポポポポという音がするのは『筋性耳鳴』という筋肉の耳鳴り。トクトクトクという心臓の音が聞こえる耳鳴りは、『拍動性耳鳴』といいます」(岩崎先生)
耳鳴りはどうして起こる?
「耳鳴りの原因のひとつに、突発性難聴など聴こえが悪くなっていることがあります。聴こえの具合が悪くなっているときに、誤った信号が脳に送られることで、耳鳴りしていることが多いのです」と岩崎先生。
耳鳴りは疲れたときなどに、一時的に聴こえることもあります。耳鳴りが5秒以内で治まるようなら、『生理的な耳鳴り』といって問題ありませんが、続くようなら聴力に問題があるかもしれません。発症から2週間以内に耳鼻科を受診するようにしましょう。
めまいや耳鳴りを防ぐには?
「めまいや耳鳴りを防ぐには、血流と緊張とストレスと寝不足にも注意が必要です」と岩崎先生。
わたしたちは、何かに集中しているときなど、気づかないうちに歯を食い縛って顔を緊張させていることがあります。緊張やストレスが高まると、自律神経が乱れやすくなるうえ、内耳や脳への血流が妨げられて、耳の機能が低下する恐れがあるのです。
「特に気をつけてほしいのは、VDT (Visual Display Terminals)機器を使った作業を長時間することによって起こるVDT 症候群です。実は、コロナが一時的に開けたとき、筋性耳鳴の患者さんが急増したのですが、ストレスとデスクワークの最中に歯を食いしばっているのが原因のひとつではないかと考えています」(岩崎先生)
VDT症候群とは、パソコン、スマホ、タブレットなど、情報端末を使った長時間の作業により、目や体や心に影響のでる病気のこと。次のような症状がよくみられます。
【眼の症状】痛み、疲れ、ドライアイ、視力低下など
【腕・肩・首の症状】肩こり、痛み、しびれなど
【精神的な症状】イライラする、不眠、憂鬱な気分など
VDT症候群を防ぐには、1日の作業時間を短くすること、1時間作業したら10〜15分の休憩を取ること、照明や採光、姿勢など作業環境を見直すことが大切です。以下のような正しい姿勢をキープして、心身への負担を減らしましょう。
・歯を食いしばらない
・目線はやや下向き
・画面からメを40cm以上離す
・画面・キーボード・書類の視距離はだいたい同じに
・肘は直角に
・手とキーボードは水平に
・深く腰掛け背筋を伸ばす
・下肢は直角になるように
・靴全体が床につくように
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ(本誌)
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人形町耳鼻咽喉科めまいクリニック院長。医学博士。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。めまい平衡学会認定めまい相談医。日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医。厚生労働省認定補聴器適合判定医。身体障害者福祉法第15条指定医。耳鼻咽喉科難病指定医。東京医科歯科大学医学部卒業後、同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科医院・助教の後、中野総合病院、JCHO東京高輪病院、都立駒込病院の医長などを経て現職に。地域の方の役に立てるようなクリニックであると同時に、めまいで悩む方の役に立てる診療を目指している。