めまいの60%は耳からくる!?めまいの40〜50%を占める良性発作性頭位めまい症とは?【女医に訊く#204】
前回、めまいの症状には個人差があり、原因も人によって大きく異なることはご紹介しました。では、めまいの多くはどこからくるのでしょう? めまいの40〜50%を占めるといわれる「良性発作性頭位めまい症」について、耳鼻咽喉科専門医の岩崎朱見先生に教えていただきました。
めまいの60%は耳から生じるって本当?
「実は、めまいの60%は耳からきているといわれています。心臓や脳からくるめまいは、10〜15%ぐらい。心や自律神経など、その他のところからくるのが30%くらいです」と話すのは、耳鼻咽喉科専門医の岩崎朱見先生。
耳には音を聴くところ(聴覚機能)と、体のバランスを取るところ(平衡機能)があります。このバランスを取るところに故障が生じると、めまいが生じるのです。
耳のどの部分が故障するとめまいが起きるの?
耳は、軟骨でできた耳介と外耳道で構成される「外耳」、鼓膜・耳小骨・中耳腔などで構成される「中耳」、骨迷路とその中にある袋状の膜迷路で構成される「内耳」から成り立っています。
内耳の中には、聴覚をつかさどる「蝸牛」と平衡感覚をつかさどる「前庭」があります。前庭部分には、空間の回転運動による加速度を感じ取る「三半規管」と、垂直または水平方向の直線的な加速度を感じ取る「耳石器」があり、ここからの情報が前庭神経を介して脳に伝えられます。
三半規管は体が回転する動きなどを敏感に捉える器官のため、ここの具合が悪くなると、自分やまわりの風景がグルグル回転するようなめまいを感じます。一方、耳石器は上下・左右・前後方向の体の動きや重力を捉える器官のため、ここの具合が悪くなると、フワフワ浮遊するようなめまいを感じます。
良性発作性頭位めまい症とは?
耳から生じるめまいの病気の代表に、良性発作性頭位めまい症やメニエール病、めまいを伴う突発性難聴、前庭神経炎などがあります。
「なかでもいちばん多いのは、良性発作性頭位めまい症ですね」と岩崎先生。良性発作性頭位めまい症(BPPV)とはその名のとおり、
B:良性…脳の中、中枢性、脳梗塞などではないもの
P:発作性…突然
P:頭位…頭を動かすとなる
V:めまい症…グルグル回るめまいのこと。
寝返りを打つ、寝床から起き上がる、人に呼ばれて急に振り向く、物を取ろうとして上を見るなど、頭を動かした途端、自分もまわりもグルグル回るような激しい回転性のめまいを起こします。
「良性発作性頭位めまい症の多くは、運動不足や代謝の悪化、骨粗しょう症などにより、耳石がもろくなり、もろくなった耳石の欠片がポロンと剥がれ、三半規管に入り込むことで起こります。そのため良性発作性頭位めまい症は、三半規管内に浮遊する耳石を取り除くような理学療法で治療します」(岩崎先生)
良性発作性頭位めまい症は理学療法で解消できるだけでなく、体操をくり返すことによって予防効果も上がり、めまいの再発も抑えられるといわれています。気になる症状がある方は、一度、耳鼻科医に相談してみましょう。
文/清瀧流美 撮影/黒石あみ(本誌)
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人形町耳鼻咽喉科めまいクリニック院長。医学博士。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。めまい平衡学会認定めまい相談医。日本耳鼻咽喉科学会認定補聴器相談医。厚生労働省認定補聴器適合判定医。身体障害者福祉法第15条指定医。耳鼻咽喉科難病指定医。東京医科歯科大学医学部卒業後、同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科医院・助教の後、中野総合病院、JCHO東京高輪病院、都立駒込病院の医長などを経て現職に。地域の方の役に立てるようなクリニックであると同時に、めまいで悩む方の役に立てる診療を目指している。