健康・ヘルスケア
2022.6.15

パニック障害はどんな人がなりやすい?不安から逃げてもいい?【女医に訊く#201】

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激しい苦痛、不安、恐怖など、予期しないパニック発作が何回もくり返されるパニック障害。近頃は、パニック障害であることを公表するアイドルやタレントも増えています。いったいどういう人がなりやすいのでしょう? 精神科専門医の松島幸恵先生に教えていただきました。

パニック障害はどんな人がなりやすい?

「ストレスを抱えた方や心配性の方は、パニック障害になりやすい傾向があります。不規則な生活、睡眠不足、過度のプレッシャーは大きなストレスになります。それで芸能人の方もなってしまうのかもしれません」と話すのは、精神科専門医の松島幸恵先生。

厚生労働省によると、パニック障害の国内の患者数は、1996年には約3000人でしたが、2017年には8万3000人にまで増加。その原因を松島先生は、満員電車やSNS、スマートフォンなど、現代特有のストレスが増えたせいではないと考えています。

「昔は遠方へ出張したら宿泊し、数日間は出張の仕事だけでいられたようですが、今は下手したら日帰りもあり得るし、機内でPCでドキュメントをつくることもありますよね? 仕事でもプライベートでも絶え間なく追い立てられるのは、相当ストレスだと思います」(松島先生)

カフェインの摂り過ぎに注意!

不安や恐怖に怯えている家族や友人、同僚に、「これ飲んで落ち着いて」とコーヒーを淹れてあげたり、「元気を出して」とエナジードリンクを手渡したりしたことはありませんか?

実はこれ、相手がカフェインに弱い場合は注意が必要。カフェインは刺激性のある物質であるため、不安が惹起されてパニック発作を誘発してしまうことがあるのです!

「そのため被疑者や証人にコーヒーを出さないよう、警察に指導する医師もいます。ほかにも、不安やパニック発作を抑えるには、生活習慣を見直す、睡眠をきちんと摂る、過労を防ぐことが必要です」(松島先生)

パニック発作を避けるためにも不安からは逃げるべき?

一度、パニック発作を起こすと、「また発作がきたらどうしよう?」とその場所に行くことが怖くなることがあります。このような場合、不安な場所をできるだけ避けた方がいいのでしょうか?

「例えば、プール教室を1日目から嫌だと思ってズル休みをしてしまうと、2日目やっぱり行かなきゃとなったとき、1日目より強く行きたくないと感じてしまうと思いますよね? 不安だからやらない、は症状を重くしてしまう可能性があります」と松島先生。

「不安は回避すると高まってしまいます。ですから医師の指導のもと、美容院に恐怖を感じる患者さんには、短い時間でもいいからまた美容院へ行くようにしてもらっています」(松島先生)

曝露療法ってどんなことをするの?

このように不安を感じる場面に少しずつチャレンジする治療法は、「曝露(ばくろ)療法」とよばれています。

まずは患者に不安を感じる場面(いつどこで誰と何をする)をリストアップしてもらい、それらを不安度の高いものから低いものへと並べ替えて一覧表(不安階層表)をつくってもらいます。次に、もっとも不安を感じる場面を100点、不安を感じない状態を0点として、すべての場面にすべての場面に点数をつけてもらいます。

「曝露療法では、30点〜40点ぐらいの場面から練習します。例えば、電車に乗れない方であれば、比較的空いている昼12時の山手線に1人で乗ってみるとか、井の頭線や都電荒川線など、駅の間隔が近い路線を練習台にするなど、段階的に曝露してもらうことで、ちょっとずつ電車に乗れるようにします」(松島先生)

患者の多くは、不安な場面に直面すると、一時的に強い不安を経験しますが、最終的には安全な状態に落ち着いていきます。これをくり返し経験することで、同じ場面に対して不安や恐怖感が低下し、少しずつ自信がついていくのです。

「パニック障害の患者のなかには、『電車に乗ったら死ぬ』という気持ちになっている方がたくさんいます。そうではなくて、電車に乗ったら遠くに行けるとか、楽しいとか、不愉快な記憶を断ち切って脳を書き換えていくのが、曝露療法なのです」(松島先生)

精神科専門医

松島幸恵先生

文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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