大高博幸さんの 肌・心 塾
2019.3.5

『 グリーンブック 』『 ふたりの女王 メアリーとエリザベス 』『 サンセット 』『 シンプル・フェイバー 』試写室便り 【 大高博幸さんの肌・心塾 Vol.491 】

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行こうぜ、相棒。
あんたにしか できないことがある。

粗野で無教養なイタリア系用心棒と、孤高の天才黒人ピアニストによる米国南部のコンサートツアー。
差別が残る時代に起こった、とあるパーソナルな物語が、笑いと涙で 観る者 全てを幸せで包み、
まさかのオスカー大本命! 感動の実話!

グリーンブック
アメリカ/約 130 分
3.1 より公開中/配給:ギャガ
gaga.ne.jp/greenbook

【 STORY 】 1962 年、N.Y.のナイトクラブで用心棒を務める トニー・リップ ( ヴィゴ・モーテンセン ) は、ガサツで無学だが 腕っぷしはもちろん ハッタリも得意で 周囲から一目置かれていた。そんな彼が ある黒人ピアニストに コンサートツアーの運転手として雇われる。彼の名前は ドクター・シャーリー ( マハーシャラ・アリ ) 、ケネディ大統領のために ホワイトハウスでも演奏する天才。なぜか 危険な南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、< グリーンブック = 黒人用旅行ガイドブック >を頼りに、出発するのだが――。( 試写招待状より )

トロント国際映画祭で『 英国王のスピーチ 』『 ラ・ラ・ランド 』『 スリー・ビルボード 』に続いて観客賞を受賞、アカデミー賞®最有力との前評判 ( 2.14 現在 ) の高い感動作。前記の惹句は 100 % 真実で、本作は 面白いコトこの上なく、笑って泣けて、最後は全観客を幸福感で満たしてくれる 第一級作品です。
映画としての作りはオーソドックス。そのため ’60 年代のアメリカの雰囲気がリアルに伝わってくる上、話の展開も場面転換もキレが良く、次は何が起こるのだろうかと、全篇をワクワクしながら観賞しました。ユーモアは ダサい内容の場面であってもスマートに演出されているので、心から気持ちよく笑えます。監督は、コメディを得意としてきた ピーター・ファレリー。

黒人を蔑視していたトニーが、ドナルド = ドクター・シャーリーとの道中、徐々に 彼を大切に思うようになっていくプロセス、及び ドナルドが トニーのガラの悪さを嫌悪しながらも、徐々に 信頼と感謝の念を抱くようになっていくプロセスが 胸に沁みる上、ラストシーンでのトニーの妻 ドロレス ( リンダ・カーデリーニ ) の演出には、心地よく美しいパンチが込められています。

トニー役の V・モーテンセンは 体重を 14 キロも増やして、今までとは異質な役柄を意外なほど見事に好演。これは 僕の知る限り、彼のキャリアに於ける ベスト・オブ・ベスト。ドナルド役の M・アリは、貴族的な雰囲気のために気取って見えてしまいがちなキャラクターを淡々と好演。その細長い指の 常に繊細な動きにも御注目……。しかし、そんなコト以上に素晴らしいのは、この対象的なふたりの演技が、最良の化学的変化を生んでいる点でした。

印象的な台詞も数多く、特に重要だったのは、① 雨が降りしきる夜、車から降りて外へと出たドナルドが、人生への思いのたけを 独白のように つぶやく部分と、② ドナルドの演奏仲間のひとり ( 白人男性 ) が、なぜドナルドが 黒人にとって非常に危険な 人種差別の最も根強い南部でのツアーに出ようとしたのか、人の心を変えるには 才能だけでは 不十分だからだというコトを、トニーに語って聞かせる部分……。
But、こゝでは トニーがドナルドに、いつものラフな口調で発する台詞を御紹介します。
「 気にすんな。この世は複雑だ。俺は N Y のクラブで働いてたんだ、分かってるって 」( ドナルドが ジョージア州の Y M C A で起こした〝 事件 〟について、神妙な態度でトニーに詫びるシーン……。ドナルドの性格・育ちの良さと、トニーの大らかさ・優しさが 強烈に伝わってくる部分での台詞 ) 。
「 帰ったら、あんたも兄貴に手紙を書けば? 先に書くんだぜ。さみしい時は、自分から先に手を打たなきゃな 」( ドナルドから 手紙の書きかたのコツを教わり、それを身につけたと誉められたトニーが、ドナルドに返す台詞。トニーは あっけらかんと言い放ち、ドナルドは それを しみじみと聞く ) 。

ラストのシークエンスで、ふたりは 雪景色の N Y へと戻って来ます。そして ラストシーンは、フランク・シナトラの歌う L P レコード「 ハブ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス 」が流れている トニーのアパート……。それは 今、これを書きながら、また 胸が締めつけられ 肩が揺れてしまうほど、実に実に素晴らしいエンディングでした。

皆さん、この映画は 必見です。たとえ アカデミー賞®を逃したとしても、観ないと 人生、大損しますよ! ( 2.14 記 )

 

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女王は 私 ひとりだけ。

シアーシャ・ローナン × マーゴット・ロビー、
メアリー・スチュアート × エリザベスⅠ世。
女王という運命が ふたりを翻弄する。

ふたりの女王 メアリーとエリザベス
イギリス/ 124 分
3.15 公開/配給:ビターズ・エンド、パルコ
www.2queens.jp

【 STORY 】 生後 6 日でスコットランド女王、16 歳でフランス王妃となった メアリー・スチュアート ( シアーシャ・ローナン ) は、未亡人となった 18 歳にスコットランドへ帰国し 王位に戻る。しかし 当時のスコットランドは、隣国 イングランドの女王 エリザベスⅠ世 ( マーゴット・ロビー ) の強い影響下にあった。メアリーは イングランドの王位継承権を主張、エリザベスの権力を脅かす。恋愛、結婚、出産を経験し、若く美しく自信にあふれたメアリーに 複雑な想いを抱くエリザベス。従姉妹でありながら恐れ合い、同時に惹かれていたふたり。誰よりも理解し合えたはずの孤独な若き女王たちは、それぞれ陰謀渦巻く宮廷の中で 運命に翻弄され 戦うのだった……。( プレス資料より )

舞台は 16 世紀のスコットランドとイングランド。現在公開中の『 女王陛下のお気に入り 』( Vol.487 ) よりも ほゞ 2 世紀前 ( 日本では戦国時代の頃 ) の物語。ふたりの女王を演ずるのは、揃ってアカデミー賞®ノミネートの実績を持つ S・ローナン ( Vol.346451457 ) と M・ロビー ( Vol.445 ) 。監督は、英国演劇界でトップの座にあるという女性演出家 ジョージー・ルークで、これが 長編映画 第一作。コスチューム、メイクアップ、ヘアスタイリングは 誰の眼にも実に見事で、それぞれが アカデミー賞®の各部門にノミネートされています。

映画は、メアリーが フォザリンゲイ城内で処刑 ( 断首 ) される 1587 年の場面に始まり、1561 年のシーンに移って ラストの処刑場面へ向かうという構成。その間、エリザベスが 天然痘に罹って一命を取り止めたり、メアリーの再婚と出産、二件の暗殺事件、反乱等々の場面が 映し出されます。しかし 作品全体としては、宮廷内外の陰謀に起因するスペクタキュラーな展開よりも、ふたりの女王の心理的な葛藤と執着に重点を置いている印象で、最高の見せ場は ラスト近くに用意された、ふたりの女王の対面シーンでした。

S・ローナン ( ’94 年生まれ ) と M・ロビー ( ’90 年生まれ ) は、それぞれ 女王の人間的な内面を巧みに表現していますが、僕が思うに M・ロビーのエリザベスは 特に完璧な適役で、非の打ちどころがありません。その発声・台詞まわしの素晴らしさと共に、ひとつひとつのシーンに奥行きを感じさせる演技は、まだ 20 代という若さでありながら、大女優の風格さえ感じさせます。
脇を固めるのは、ダーンリー卿 ( メアリーの 2 番めの夫 ) 役の ジャック・ロウデン、レスター伯爵 ( エリザベスの寵臣 ) 役の ジョー・アルウィン ( 『 女王陛下のお気に入り 』や『 ベロニカとの記憶 』で人気上昇中ですが、本作での彼が 僕に言わせると最高 ) の他、ガイ・ピアース、イスマエル・C・コルドバら。さらに 小さな役ながら、ベス ( エリザベスの侍女 ) を演ずる東洋系の女優 ジェンマ・チャン ( ’82 年生まれ ) の知的でいて愛らしい容姿と演技も 非常に魅力的でした。

コスチュームは 時代考証を重視しながらも エッジィかつ繊細な作り、メイクアップは 特に天然痘を患ったエリザベスの肌と、その回復後の 痕跡の残った肌に至るまで、本物に見えるところが 本当に凄いほどでした。

映倫は〝 G 〟で通っていますが、多分 ギリギリ。小中学生のお子様を連れて観に行くと 困るコトになるかも知れませんので、念のため。( 2.21 記 )

 

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©2018 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

消えた女、
消せない秘密。

A・ケンドリック、B・ライブリー 競演。

シンプル・フェイバー
アメリカ、カナダ/117 分/ PG 12
3.8 公開/配給:ポニーキャニオン
http://simplefavor.jp/

【 STORY 】 ステファニー ( アナ・ケンドリック ) は 育児や料理についてのブログを運営しているシングルマザー。ある日、同じクラスに息子を通わせるエミリー ( ブレイク・ライブリー ) と出会う。ファッション業界で働く どこか気怠くミステリアスなエミリー。対照的なふたりだったが、互いの秘密を打ち明けあうほど 親密な仲になっていった。そんな中、ステファニーは、息子を学校に迎えに行ってほしいとエミリーから依頼される。しかし、エミリーは 息子を引き取りには現れず、そのまま失踪。親友を助けたいと思ったステファニーは、エミリーの息子と ( 夫の ) ショーンの身の回りの世話も買って出て、ブログでも情報を募る。やがて ミシガン州で エミリーを目撃したという情報が入る……。( チラシより。一部省略 )

『 アデライン、100 年目の恋 』( 通信 308 ) を観て以来、気になる女優のひとりになった B・ライブリーの主演作というコトで、観賞欲をそゝられた一編です。
簡単に言ってしまうと、昔々、ついつい 観入ってしまった T V の人気番組「 火曜サスペンス劇場 」を想い出させるような内容でした。ステファニーが ブログを運営しているという設定は今日的でいて、エミリーの失踪から先の展開は、失礼ながら、数々のサスペンスドラマのネタを集めて 新たに作り直したという印象……。

それでも、彼 or 友だちと一緒にポップコーンを食べながら楽しむには花マルでしょう。なにしろ、B・ライブリーが カッコいゝし美しい。しかも 今回は、ダークサイドを持つという役柄に初挑戦。A・ケンドリックは、テンション高めで ママ友連から少々浮いてしまうキャラクターを熱演。さらに エミリーの夫 ショーン役の新人 ヘンリー・ゴールディング ( ’87 年、マレーシア生まれ ) が、素朴さを持つ新型セックス・シンボル的魅力で、女性観客の眼を惹きつけ楽しませるコトは確実です。

ラストは たゝみかけるようなスピードで結末を迎えるため、少々 分かりにくい点もありますが、それは それで O K では?

B・ライブリーは、ミュージカル「 メイム 」の乗馬服のようなファッションや C・ディオールの A ラインを想い出させるワンピース姿が、とてもよく似合っていました ( たゞし 彼女には、そろそろ 代表作と言えるような映画に出演してほしい ) 。A・ケンドリックは、ライブリーよりもベースメイクが厚め。しかし、ライトを反射して艶感を演出するルミナイザー ( 輝きの粒子を たっぷり含んだメイクベース ) を、ソフトマットなファンデーションの前に、特に 頬のトップから目の下にかけて、しっかりと丁寧に入れているという感じがしました。( 1.24 記 )

 

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© Laokoon Filmgroup– Playtime Production 2018

緻密に張りめぐらされた謎と緊張。

『 サウルの息子 』の ネメシュ・ラースロー監督 最新作。

サンセット
ハンガリー、フランス/ 142 分
3.15 公開/配給:ファインフィルムズ
www.finefilms.co.jp/sunset

【 STORY 】 1913 年、ヨーロッパの中心 ブダペスト。イリスは 2 歳のとき 両親を亡くし、遺された高級帽子店で働くことを夢見て ハンガリーの首都に降り立つ。だが 新しい店には大きな秘密があるようで、今のオーナーに追い返されてしまう。街を去る直前、イリスには 兄 カルマンが いたことが分かると、必死に捜し始めるが 今一歩のところで辿り着けない。やがて 兄と仲間による貴族に対する暴動が起こり、イリスも混沌とした時代の渦に巻き込まれていく…。( 試写招待状より )

カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『 サウルの息子 』( 通信 323 ) の、N・ラースロー監督の長編第 2 作。
舞台は アウシュヴィッツから一転して、華やかなりし頃のブダペスト。しかし、イリス役の ユリ・ヤカブは、前作でサウル役を演じた ルーリグ・ゲーザに似た顔立ちで、終始一貫、思いつめたような固い表情。ソンダーコマンドとして扱われていたサウルの顔が 固く無表情なのは当然ですが、希望を胸にブダペストへやって来たという若い娘が サウルばりの表情で通している点、僕には まず不可解。それは 監督の好みの顔なのだと想うコトにしましたが、カメラは 今回も焦点が浅く、街の情景を捉えたロングショットにもピンボケを多用。さらに イリスの後を追って歩くシーンが、繰り返し延々と映し出される……。

ラースロー監督は、本作の意図に関する言葉の中で「 観た人 それぞれで感じ、考えたあと、別々の反応をみせる、というのが 私の究極の目的 」と語っていますが、それを堪能できる観客が どれだけいるのか、僕には想像しがたいところです。

物語の時代背景 ―― ココ・シャネルが パリのカンボン通りに帽子店を開いたのが 1910 年、ドーヴィルで本格的に服を作り始めたのが 1912 年。サラエボ事件 ( 本作にも登場するフェルディナント皇太子とゾフィー妃殿下が、サラエボで暗殺された事件。これを発端として第一次世界大戦が始まる ) が起きたのが 1914 年 6 月 ―― に興味を抱いている僕としては、それを垣間観るコトが出来て、一応は満足したという感じ。
それにしても、ラースロー監督の第 3 作は どんな内容になるのか、それが 今から 気がゝりです。( 1.12 記 )

 

 

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biteki-m@shogakukan.co.jp
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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

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