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2015.10.6

大高博幸の美的.com通信(308) 『アデライン、100年目の恋』『ヴェルサイユの宮廷庭師』『ドローン・オブ・ウォー』 試写室便り Vol.101

© 2015 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC, KIMMEL DISTRIBUTION, LLC AND LIONS GATE FILMS INC. All Rights Reserved
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永遠の秘密が、彼女には あった。

100年の時を超えて見つけた真実の愛とは?
これは、数奇な運命をたどった女性の、
現代の おとぎ話。

アデライン、100年目の恋』 (アメリカ/113分)
10.17 公開。www.adaline100.jp

【STORY】 奇跡的な出来事が きっかけで、年を取らなくなってしまった アデライン・ボウマン。100歳を越えているのに 29歳にしか見えない彼女は、怪しまれないように 10年ごとに 名前も住所も外見も変え、新しい人生をスタートさせなくてはならない。親しい友人も作れない彼女の心の支えは、愛犬と 一人娘のフレミングだけ。しかし 愛犬たちの最期を次々と見届け、娘も すっかり老いてしまった今、アデラインは さらなる孤独が ひたひたと足音を立てて やってくるのを待っている。そんな彼女の前に、カリスマ的な魅力を持つ 青年 エリスが現れる。エリスに惹かれていくアデラインだが、二人の間に 秘密が立ちふさがり……。(プレスブックより。一部省略)

〝永遠の若さ〟を 物語の鍵とした、少々ミステリアスな 現代版 ラヴ・ファンタジー。この映画は いろいろな意味で、美的.com読者 必見です。
29歳の時、異常気象がもたらした奇跡的な出来事により、一度は停止した心臓が再び動き出すと共に、時間の経過による細胞の破壊作用を 一切 受けない体となった = 一切 老化しない体となった アデラインの物語 ――。なんとも羨ましい話なのですが、永遠の若さと美を手に入れゝば、それだけで本当に幸福なのか どうかと、深く考えさせられもする内容…。

映画は 2014年12月31日、アデラインが 偽のパスポートを受け取りに、あるアパートメントに立ち寄る場面から始まります。「なぜ 29歳にするの? 27歳っていう感じなのに」とツブやく偽造業の若者に、御礼と 彼女ならではの忠告を述べて立ち去るアデライン。
今は「ジェニー・ラーソン」と名乗り、サンフランシスコの中央資料館で働いているアデラインは、古いニュースフィルムをデジタル化する作業を任された時、1908年のフィルムに目が釘付けになります。それは「新年 初ベビー。1月1日 0時01分に誕生した アデライン・マリア・ボウマン。場所は シスコの小児病院」という字幕付きの映像でした。
そこから 彼女の今日までの人生が、彼女の回想となって映し出された後、年越しパーティに出掛けたアデラインが、エリスという青年の積極的なアプローチを受ける場面へと続きます。
「これは アデラインの物語の、序章にして 最終章だ」という冒頭のナレーションが意味深長…。ドキドキせずにはいられない場面が 最後まで ほゞ一貫して続くのですが、皆さんは そのドキドキ感を 十分 味わうために、予備知識を余り持たずに観るべきでしょう。

アデライン役の ブレイク・ライヴリーが 最高の はまり役。ファッションアイコンとしても有名な彼女にとって、コレは 長女出産後の復帰第一作。子供を産んだとは思えない ほっそりとした体形、手や脚・全身の洗練された動き、聡明さが滲み出る表情と台詞(特に上品かつ自然なユーモアのセンス)等々、誰もが憧れ、見習いたくなるコトは確実です。
助演陣は、アデラインを追い求めるエリス役に オランダ人俳優 ミキール・ハースマン(彼の抑えられない気持ちの表現が 実にセクシー)、アデラインの娘でありながら「私は祖母です」とエリスに自己紹介するフレミング(83歳)役の エレン・バースティン(母親思いでユーモラスでもある演技の魅力)、そして エリスの父親役として登場する ハリソン・フォード(ロマンティストで愛情深い性格描写が素晴らしい)。
また 端役ながら、ミリアム役(アデラインと同年令。1953年の場面で 45歳)の ジェーン・クレイヴン、警官役の ノエル・ジョナセン(1953年のベツの場面)が 実に うまく、物語の展開に真実味と説得力を与えていました。

監督は『セレステ∞ジェシー』(通信(155))で注目された リー・トランド・クリーガー。彼は 前作を含めて、恋愛を成就するために絶対不可欠なポイントを、キメ細かいストーリーテリングを通じて 観客に伝えようとしているかのようです。

以下、印象に残った諺や台詞――。
「歳と恋人とワインの杯数は、決して数えちゃいけない」(イタリアの諺)
「人には 伴侶の星があり、正しく生きれば、死後、そこへ戻る」(プラトンの格言)
「私は あなたの人質なの?」(アデラインがエリスに言う台詞)
「今は忘れて」(エリスがアデラインに言う台詞)
「二人で 共に老いていく将来…。それが なければ、愛は つらいだけ」(アデラインがフレミングに苦悩を打ち明ける場面での台詞)
「時は 誰をも 待ってはくれない。だから もう一度、新しく やりなおそう」(エンドロールに流れるヴォーカルの歌詞)

コレは 若さに対する こだわりに、今までには なかった 何かを 植えつけてくれる映画。
この映画を観る時、皆さんは 自分が アデラインになったつもりで いてほしい。
そして ラストシーン。あるモノを 鏡の中に発見した瞬間、アデラインの瞳に 微かな微かな喜びのいろが浮かぶ…。皆さん、その意味を、ぜひとも理解してください。
P.S. 見逃すべからず! (記、9.17)

 

© BRITISH BROADCASTING CORPORATION, LITTLE CHAOS LIMITED, 2014
© BRITISH BROADCASTING CORPORATION, LITTLE CHAOS LIMITED, 2014

17世紀 フランス。
太陽王 ルイ14世の栄華のシンボル、
ヴェルサイユ宮殿。
世界一有名な宮殿誕生の裏側で咲き誇る、
ひとりの女性庭師の愛と勇気の物語――。

ヴェルサイユの宮廷庭師』 (イギリス/117分/PG-12)
10.10 公開。versailles-niwashi.jp

【STORY】 1682年 フランス。田園地方の庭園で ひとりで生きるサビーヌ(ケイト・ウィンスレット)の元に、予想もしない仕事のオファーが舞い込んだ。フランス国王 ルイ14世(アラン・リックマン)が計画する 新たな王宮の庭園建設に 白羽の矢が立ったのだ。国王の庭園建築家 アンドレ・ル・ノートル(マティアス・スーナールツ)の面接を受けるが、伝統と秩序を重んじる彼と対立してしまうサビーヌ。しかし、自由な精神で庭と向き合う彼女に 大きな可能性を見出した ル・ノートルは、庭園造りをサビーヌに任せることに…。(プレスシートより。一部省略)

史実とフィクションの綾織りによる新鮮な面白さ。コレは かつてなかった宮廷モノ。主人公 サビーヌが 熱意と信念の強さで多くの困難を乗り越え、ヴェルサイユの庭園に「舞踏の間」を完成させるまでをドラマティックに描いています。物語の核を成すのは、サビーヌを支援するうちに 恋愛関係に進展していくアンドレ(彼は最初、彼女を冷たく あしらおうとしていた)とのロマンス。
作品全体として観ると、サビーヌとアンドレ、庭職人たち、貴族らの感情の高まりや衝突が、エモーショナルなパワーを発するまでに至らなかった点が惜しまれます。しかし、平民であるサビーヌとの絡みを通して、国王や貴婦人たちが人間的な心情を吐露するに至る幾つかの場面は、たとえスケッチ風であったとしても 非常に興味深いモノでした。
また、最初の結婚で 単に子供を産む道具同然に扱われていた(はずの)サビーヌが、アンドレと愛し合うコトで 初めて女としての歓びを知る場面は、かなり強い印象を放っています。

サビーヌ役の ケイト・ウィンスレットは 顔の美しさはモチロンですが、微妙な感情表現が素晴らしい。特に感心させられたのは アンドレとのセックスシーンで、生まれて初めてオルガスムスを得た瞬間(と僕は勝手に解釈)の表情が、驚くほど リアル かつ上品だったコト。しかし、激しい肉体労働に従事している役としては、太りすぎて見える体形が気になりました。
アンドレ役の マティアス・スーナールツ(『君と歩く世界』(通信(145))で マリオン・コティヤールの相手役を務めた)も役になり切っていて、ほゞ正面から撮られた顔に風格が感じられます。
脇役ながら 実に実に素晴らしかったのは、モンテスパン公爵夫人(愛称 アテナイス。演ずるのは ジェニファー・イーリーで、特に台詞まわしが絶妙)と オルレアン公夫人(愛称 パラティーヌ。女優名は残念ながら不明)。アンドレの悪妻を演ずる ヘレン・マックロリーも好演はしていますが、今回は 少々アクの強さが出過ぎた感じ…。
監督は、ルイ14世役で出演もしている アラン・リックマン。
最高に充実していた場面は、〝秘密の部屋〟の部分に続いて、ルイ14世に正式に謁見したサビーヌが 〝バラの運命〟について臆せずに語り、貴婦人たちを深く感動させるに至る 一連のシークエンス。

ラストに映し出される「舞踏の間」の 類まれな愛らしい美しさは必見です。できれば もう少し長く、ゆっくりと観せてほしいと思ったほどでした。
この「舞踏の間」は、今も存在している野外舞踏会用の円形劇場で、積み重ねられた硅石と貝殻の間を水が流れ(当時、この水を引き込む作業は 最大の難問でした)、カラカラと美しい音を奏でる特別な技術が施されています。中央に設置された大理石製の小さな島では、バレエが披露されていたとのコトです。 (記、8.21)

 

©2014 CLEAR SKIES NEVADA,LLC ALL RIGHTS RESERVED.
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アメリカ国内の〝戦地〟と〝家庭〟を
行き来する毎日――。

米軍無人戦闘機 ドローンの恐るべき実態と、
対テロ戦争の 知られざる真実を暴く問題作!

ドローン・オブ・ウォー』 (アメリカ/104分/R15+)
10.1より公開中。www.drone-of-wor.com

【STORY】 アメリカ空軍の トミー・イーガン少佐の赴任地は アジアでも中東でもない。ラスベガスの基地に設置されたコンテナ内で 無人機ドローンを遠隔操作し、1万キロ余りも離れた異国でのミッションを遂行している。クリックひとつでミサイルを発射する爆撃は、まるでゲームのように現実感が欠落しているのだ。一日の任務を終えると、車でラスベガスの きらびやかな歓楽街を通り抜けて、整然と区画された住宅街のマイホームへ帰り、美しい妻 モリーと ふたりの幼い子供との生活に舞い戻る。繰り返される この毎日が トミーの日常であり、異常な現代の戦争の姿だった。(試写招待状より)

2001年の 9.11以降、アメリカ政府は テロリスト一掃を もくろみ、敵に何の気配も察知されるコトなく、一瞬にして爆撃を遂行する無人遠隔戦闘機 ドローンを 全面的に採用するようになった…。この映画は〝標的殺人〟が最も激化した 2010年の事実に基づく物語。ドローン操縦士のひとりであるトミーの日常に焦点を絞り、現代の戦争の知られざる真実を暴き出した問題作です。

地球の裏側、エアコン付きのコンテナ内からの爆撃。トミーは「非戦闘員や子供たちを巻き添えにする〝付随的な殺生〟は、無視して かまわない」という軍の意向に納得できず、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱え込む…。
監督・脚本・製作の アンドリュー・ニコルは、その悲劇を クールにストレートに、リアリズムに徹したスタイルで描写していきます。しかし、指示・命令に対する不服従を犯した トミーが 職場を追われる前後から 穏やかさを湛えたラストへの繋がりには、しみじみとした余韻とシンパシーが感じられました。
シチュエーションは全く異なるものの、この映画は、全てが機械化されていく時代に翻弄されて 正気を失う男を描いた チャップリンの名作『モダン・タイムズ』(1936)を、ふと想い出させもします。

トミー役の イーサン・ホークは、まともな人間としての魂の彷徨を生々しく体現し、主演男優賞に価します。トミーの上司役の ブルース・グリーンウッドの抑えた演技も印象的でした。
「不幸だなぁ」と感じさせた登場人物のひとりは、トミーの妻 モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)。彼女は 想像力と思いやりの希薄さのために、夫の苦悩を理解できずにいる女性。子育てが もう少し落ち着いたら、ラスベガスのショウダンサーに復帰しようとも考えています。復帰はいいとして、想像力不足のために 彼女が失うモノの大きさは 計りしれません。しかし 似たような女性を、僕は昔から 数多く目にしてきました。コレは、事情を説明しない夫が悪いとは 決して言えない問題です。読者の皆さんは、その点についても 考えてみる必要がありそうです。

この映画は、どちらかと言うと男性観客の興味を惹きそう。But、もしも彼氏が観たいと言ったら、ぜひ付き合って観てください。きっと得るところが いろいろとあるはずです。
また、なんとしても観せたいのは、安保関連法案・集団的自衛権に関して、無理のある理屈や 逃げ道を用意したような答弁を繰り返している国会与党の人々。この映画を観たくらいでは、どうにもならないのでしょうか? (記、9.5)

 

次回の試写室便りは、10月20日頃に配信の予定です。では!

 

 

アトランダム Q&A企画にて、 大高さんへの質問も受け付けています。
質問がある方は、ペンネーム、年齢、スキンタイプ、職業を記載のうえ、こちらのメールアドレスへお願いいたします。
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info@biteki.com
(個別回答はできかねますのでご了承ください。)  

ビューティ エキスパート 大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。
『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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