健康・ヘルスケア
2021.11.17

骨粗しょう症が女性に多いのはなぜ? 妊活前に骨密度検査を受けるべき理由とは?【女医に訊く#174】

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骨粗しょう症とは骨がスカスカになってしまう病気。放っておくと、腰や背中が曲がってしまったり、些細なことで骨折しやすくなります。骨粗しょう症が女性に多いのはなぜでしょう? 骨密度検査は何歳から受けるべきでしょうか? 骨粗しょう症予防のための「骨活プログラム」を開発した整形外科専⾨医の伊藤薫⼦先生に教えていただきました。

骨粗しょう症ってどんな病気? どうして女性に多いの?

私たちの身体の中では、毎日新しい骨がつくられては古い骨が壊され続けています。骨粗しょう症は骨のカルシウム量が減少し、骨の密度が若年成人と⽐べて3割以上も少なくなる病気。新しくできる骨より壊される骨の量の方が多くなると、骨粗しょう症になってしまいます。

「骨粗しょう症は加齢や閉経に加え、食事からのカルシウム摂取不足や運動不足が原因で起こります」と話すのは、整形外科専⾨医の伊藤薫⼦先生。伊藤先生によると、骨粗しょう症患者の80%以上は女性。今や、50代以降の女性の4人に1人は骨粗しょう症といわれています。

「女性らしい身体づくりや女性の⾝体を守ることを役割とする女性ホルモン『エストロゲン』の分泌量は、20代後半から30代前半をピークに、40歳を過ぎた頃から減少していきます。このエストロゲンには、カルシウムを骨に沈着させたり、骨が溶け出さないようにする働きもあるため、閉経後は骨にカルシウムが沈着しにくくなり、骨がスカスカになってしまうのです」(伊藤先生

骨粗しょう症になるとどうなるの?

「実は、骨粗しょう症になっても初期の段階では、痛みや違和感などの自覚症状はまったくありません」と伊藤先生。

しかし、骨がスカスカになると、ちょっと尻もちをついたり重いものを持ったりしただけで徐々に背骨や腰骨が潰れて(圧迫骨折)、身長が縮んだり、背中や腰が丸くなったりすることも。さらに病気が進むと、些細なことで手首や腕のつけ根、太もものつけ根などの骨が折れやすくなります。

「高齢者が太もものつけ根の骨折を起こすと、寝たきりになる可能性が高くなります。実際、骨折・転倒は要介護になってしまう原因の第3位(厚生労働省 2019年国民生活基礎調査)になっています」(伊藤先生

妊活前に骨密度検査を!

美的世代の女性に骨粗しょう症は無関係だと思っていませんか?「確率は少ないですが、妊娠中や授乳期に骨粗しょう症になる女性もいます」と伊藤先生は言います。

「お腹が大きくなってくると腰に負担がかかりますし、産後も赤ちゃんのお世話で中腰になる機会が増えます。特に、授乳期は母乳にカルシウムを取られてしまうため、意識的に摂取していないと、圧迫骨折しやすくなります」(伊藤先生)

産前産後の圧迫骨折は、お年寄りの圧迫骨折と潰れ方が違うため、初期だとわかりにくいことも。発覚しても大学病院などでの治療にたどり着くまでの数週間の間に、さらに潰れてしまうこともあるようです。

「腰痛だからと我慢していると、本当に動けなくなってしまうくらい痛くなります。産後に腰痛が出たときは、まずはレントゲン検査を受け、さらに痛みが2〜3週間続くようならMRI検査を受けて、圧迫骨折がないか確認してもらいましょう」(伊藤先生)

とはいえ、妊娠の可能性がある期間はレントゲンも撮れませんし、産後は赤ちゃんのお世話で手一杯になります。できれば妊活前に骨密度検査を受けましょう

骨密度ってどうやって測るの?

密度検査は、骨の量を調べるための方法のひとつで、骨に含まれるカルシウムなどの量を測定します。骨密度検査には、手のレントゲン写真をアルミニウム板と同時に撮影して自動的に測定する「MD法」、かかとや脛の骨に超音波を当てて測定する「超音波法」、極めて微量な⾼低2種類のX線を用いて測定する「DXA(デキサ)法」などがあり、どの方法で調べるかは医療機関や自治体によって異なります。

「骨密度は全部の骨が同じ密度ではなく、部位によって異なります。そのため骨粗しょう症学会では、X線を腰椎(腰の骨)と⼤腿骨頸部(太もものつけ根部分の骨)に照射して骨量を調べるDXA法がいちばん精度が高いといわれています。DXA法は3〜4分の短時間で正確に骨密度が測定でき、結果を⽤いた診断を合わせてもトータル30分以内で済みます」(伊藤先生)

骨粗しょう症は早いうちから対策をすることで予防ができ、早期発⾒をすることで骨密度の低下を抑えることができます。まずは、どの方法でも構いませんから、妊活前または40歳になったら一度、骨密度検査を受けてみましょう。

整形外科専門医

伊藤 薫子先生

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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