健康・ヘルスケア
2021.11.3

リモートワークで腰痛が悪化!? ぎっくり腰や腰椎椎間板ヘルニアになる原因とは?【女医に訊く#172】

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物を持ち上げようとしたときや朝起きようとしたとき、洗顔後に顔を上げたとき、咳やくしゃみをした瞬間など、腰に激痛が走って動けなくなった経験はありませんか? ぎっくり腰や腰椎椎間板ヘルニアなどによる腰痛はどうして起こるのでしょう? 整形外科専門医の伊藤薫子先生にお話をうかがいました。

そもそも腰痛ってどんな状態?

「腰痛とは主に腰椎に負担がかかることで、腰や背中に痛みや張りなどを感じる症状のことです」と話すのは、整形外科専門医の伊藤薫子先生。

ひとくちに腰痛と言っても、関節が傷んだり、骨が痛んだり、椎間板が痛んだり、そのまわりの筋肉が痛んだり…と原因はさまざま。腰椎椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、胸・腰椎圧迫骨折、腰椎分離・すべり症、骨粗しょう症など、病気の可能性もあります。

「腰痛は、生活習慣や精神的ストレスなどが複雑に絡むことが多く、原因特定が難しい疾患でもあります。くり返し起こる腰の痛みに悩んでいる方は、整形外科を受診してみましょう」(伊藤先生)

どうして腰が痛くなるの?

「腰が痛くなるいちばんの原因は、人間が二足歩行を始めたことにあると思います」と伊藤先生。

多くの動物の脊柱(背骨)は真っ直ぐであるのに対して、わたしたち人間の脊柱はS字構造をしています。これは、人間が四足の状態から身体を直立させようとして後方に引き起こしたため。その進化の過程において、背骨のS字カーブと腰椎の前弯(ぜんわん)が生まれたのです。

「腰にかかる垂直方向の力を少なくするためには、背骨のS字ラインはとても大切です。ところが、座っている時間が長くなると、骨盤が後ろに倒れるなどして腰にものすごい負担がかかってしまうのです」(伊藤先生)

伊藤先生によると、座っているときは、立っているときよりも上半身の全体重が腰と骨盤に乗るため、腰痛のリスクが大きくなるとのこと。リモートワークが増えて長時間座り姿勢を続けている方は、こまめに立ったり歩いたりして、腰への負担を減らしましょう。

ぎっくり腰って?

腰痛の原因といわれると、真っ先に「ぎっくり腰」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか? 実は、ぎっくり腰は通称で正式名称は急性腰痛症。その名のとおり、急に起こった強い腰の痛みを指します。

「ぎっくり腰自体は筋膜の炎症つまり症状で、病名や診断名ではありません。重いもの持ったり中腰になったりしたときに、筋膜が急にピキッと炎症を起こしてしまうのです」(伊藤先生)

ぎっくり腰の強い痛みは、湿布で炎症を抑え、コルセットで腰を保護して過ごせば、2日〜1週間ほどで自然に治まりますが、下肢に痛みやしびれがあったり、力が入らないなどの症状があったりするときには、椎間板ヘルニアなど病気の可能性もあります。心配なときは整形外科を受診して正しい診断を受けましょう。

 

腰椎椎間板ヘルニアって?

腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にある椎間板の一部が後方へ飛び出し神経を圧迫することで、腰や足の痛み、しびれなどを生じる病気。ヘルニアになりやすいのは、20代〜40代前半くらいですが、腰に負担がかかるスポーツなどが原因で10代でなることも珍しくありません。

「椎間板はゼリー状になっているのですが、20代後半くらいから段々硬くなってきます。若い方は椎間板の水分量が多いため、背骨へ飛び出るような大きいヘルニアが出やすくなりますし、年齢を重ねた方は硬いヘルニアができるため、ちょっと飛び出るだけでも結構な痛みが出やすくなります」(伊藤先生)

腰椎椎間板ヘルニアの治療では、鎮痛剤などの薬物療法やコルセットなどの装具療法、温熱・電気治療、骨盤牽引などの理学療法のほか、神経ブロック療法を行うこともあります。腰椎椎間板ヘルニアは坐骨神経痛(おしりから下肢にかけて痛みやしびれが続く状態)を引き起こすこともありますから、しっかり対処しましょう。

 

整形外科専門医

伊藤 薫子先生

文/清瀧流美 撮影/黒石あみ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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