漢方薬にはどんな種類があるの? 長期間飲まないと効かない?【女医に訊く#169】
漢方薬には生薬を煮出した「煎じ薬」と、それを顆粒や錠剤にした「エキス剤」があります。煎じ薬とエキス剤はどう違うのでしょうか? また、漢方薬に即効性はあるのでしょうか? 慶應義塾大学漢方医学センター医局長の堀場裕子先生にお話をうかがいました。
漢方薬にはどんな種類があるの?
漢方薬は、植物、動物、鉱物などの生薬を組み合わせてつくられています。漢方薬には、調合した生薬を水で煮出した「煎じ薬」と、煎じた液の水分を飛ばして粉末にしてから顆粒や錠剤にした「エキス剤」があります。「エキス剤」は148種類が医薬品として保険の適応が認められています。「煎じ薬」と「エキス剤」は患者さんの生活スタイルなどを考慮して、使い分けができます。
「エキス剤は持ち運びがしやすく、簡易的に飲めるというメリットがあります」と話すのは、日本東洋医学会漢方専門医の堀場裕子先生。
「最初から煎じ薬を希望される方もいらっしゃいますが、仕事や家事などでお忙しい方が多いですから、まずはエキス剤を飲んでもらうことが一般的ですね」(堀場先生)
煎じ薬はどんな人におすすめ?
一方、煎じ薬は煮出す手間はかかりますが、患者さんの体質などを考慮して生薬を加減したり分量を調整できるのがポイント。煮出したものをポットなどに入れておけば、 持ち歩いて好きなときに飲めるので便利です。
「既存のエキス剤だけでは症状が取り切れないときや、エキス剤では細かな調整が難しいというときは、煎じ薬に切り替えて飲んでもらいます。煎じの中身を調整することで、その患者さんにより適した煎じ薬をオーダーメイドでつくることができます」(堀場先生)
煎じ薬は苦いというイメージがありますが、お茶のような感覚で飲めるものも多数ありますし、煎じるときの香りも治療効果があります。エキス剤が飲みにくい人や効果を感じにくいという人は、漢方医に相談してみましょう。
漢方薬は効き目が穏やかで長期服用が必要って本当?
漢方薬は副作用が少ない分、効き目が穏やかで長期に渡って服用しなくてはならないという印象をもってはいませんか?
「例えば、月経不順や月経困難症など体質改善が目的の場合、若い人は反応が早いこともあるのですが、飲んで1週間で生理痛が激減するようなことはあまりありません。以前に調べたデータでは、月経痛は3か月かけて右肩上がりでよくなっていく傾向があるので、3か月をひとつの目安にして服用してもらっています」(堀場先生)
ただし、漢方薬のなかには五苓散や葛根湯、小青竜湯など、即効性があるものもあるそうです。
「“お天気頭痛”の患者さんに処方する五苓散は、雨が降る、台風が近づくとわかった時点で飲み始めると頭重や頭痛の予防にもなります。葛根湯は風邪の引き始めや寒気を感じたときに飲むと風邪が悪化しません。アレルギー性鼻炎の方に処方する小青竜湯は、鼻水が出たときに飲むと30分から1時間ぐらいで効いてきます」(堀場先生)
漢方薬の効き目や服用期間の目安は、患者さんの年齢や体質、薬の種類によっても変わります。自己判断せずに、決められた用法用量を守って続けてみましょう。
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慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長。日本東洋医学会専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。日本漢方生薬ソムリエ。女性ヘルスケアアドバイザー。2003年、杏林大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部・産婦人科学教室入局。大学病院並びに関連病院勤務を経て、2011年より慶應義塾大学医学部漢方医学センターへ。現在は、同センター医局長として外来や、研修医の指導に携わりながら、慶應義塾大学病院の婦人科外来も担当している。